~東京都特別区職員採用試験 導入編~
第1章 イントロダクション
・ごあいさつ
皆さん、あけましておめでとうございます!
今年からお世話になります。坂竹 央(ひろむ)です。よろしくお願いします。
さて武漢市を中心に発生したパンデミックが世界を覆ってもう丸2年経ってしまいました。
幸いなことに、あちこちで失業者や炊き出し待ちの人が溢れかえっている、というほど我が国の経済は悲観的な状況ではありません。
しかし、多くの企業、特に飲食店や娯楽施設はまだまだ先行き不安な状態が続いており、大学生の方はなかなかアルバイト先の工面にも苦労していらっしゃるのではないでしょうか。
そんな折に社会人の方であれば「転職」、大学生の方であれば「就職」のことが頭をよぎるのではないかと思います。
今勤めている会社は大丈夫だろうか。ボーナスはちゃんと出るのか。
せっかく就職活動頑張ったのに、ものの数年で倒産したら元も子もない。
このように考えた上で「公務員」という職業に魅力を感じる方も多いと思います。
事実、こんな不安定な時代には公務員は魅力的な職業です。
経済動向に左右されない公共財というインフラを担っているわけですから、悪さをしない限りは食いっぱぐれはありません。また給与・賞与が決まっていますので、5年・10年先を見据えた人生設計が可能です。
私自身子をもうけ、慣れない育児生活に追われる中、このコロナ禍でも安心して子育てができていたことを考えると、公務員という身分にずいぶん助けられたなとしみじみ感謝しています。
・なぜ役所を離れるのか
役所勤めに限ったことではありませんが、メリットに対して目につくデメリットが30歳を過ぎて色々気になり始めたというのがあります。
一つは給与の面。いわゆる市役所や町役場とは違って、23区の職員は所属している区役所で給与を決めることはできません。
特別区全体の給与は「特別区人事・厚生事務組合」が決めており、これからお話しする「特別区職員採用試験」の試験内容等もこの組織内にある「特別区人事委員会」が決めています。
ですので、区ごとの懐事情や地域格差の事情などはほとんど加味されず一律に給与が支給されることになるのです。
しかし、ご自身のお住いの自治体を見てもわかる通り、人気のエリア・便利のいいエリアでは当然に家賃も高く、そうでないエリアはそれなりの家賃となっていますよね?
23区でも同じでオハイソなエリアでは家賃がべらぼーに高く、逆に交通の便がまだ悪かったり地盤が安定していない地域では家賃が安かったりします。
子供の育児環境を考えて自然災害などに強い人気のエリアに住もうと、軽犯罪率が高く夜道は女性一人では歩けないようなエリアに住もうと給与は変わらないのです。
これに加えて公務員は兼業・副業が原則禁止されています。
一部の先進的な取り組みをしている地方の自治体を除いて、23区の多くの役場は極めて保守的で、新しい取り組み、特に自分の区が「最初の事例」になって色々と厄介な目に遭うことから逃げに逃げます。
そして不思議と、汗水たらして得た収入は「悪い収入」として懲戒免職にされたり、兼業申請が不許可になるのに対し、不動産賃貸や株の運用による収入など「寝てても入ってくる収入」は「良い収入」として兼業申請にも寛容です。
人事の言い分としては「兼業による疲れなどで職務に支障が生じ、職務専念義務に抵触する恐れがあるから」などとのたまってますが、世間一般の常識から照らせば馬鹿げた話です。職業に貴賤はないのですから、むしろ世に出て汗水たらして勤務時間外に働く公務員の方がかえって世間の評判を上げるのではないかと思うのです。
そしてこれが決定打だと思いますが、公務員の地位に安心してしまえば公務員以外の何者にもなれずになってしまいます。
つまり、一生公僕として勤め続けない限り、他の職業に就いても役に立たない人間になってしまうということです。
むろん趣味の範囲で音楽活動をしたり、プログラミングをしたり、プロ顔負けの技術を持った職員が区役所内にはたくさんいることも事実です。しかしそれはどこまでもアマチュアであって、プロではないのです。
公務員の多くは役所という特別な環境の中でサラリーを貰っており、特別なスキルは必要とされず、間違っても腕一本で食べていくような環境ではありません。
もちろん公務員を20年勤めれば行政書士に登録できる資格が与えられるため、その資格をもって行政書士事務所を開業して一線を張るなら立派なプロです。しかし、残念ながら私が勤めている区役所でそのように頑張っている先輩職員の話を聴くことはありませんでした。
私はもう人生の三合目に達し、役所にも10年以上勤めていますが、このまま他の職員のように役人しかできない人生を送ることに絶望と危機感を覚えました。
まだ心身ともに戦う気力が残されている今が自分の人生を決める最後のチャンスだと感じたのです。
そして先ほど述べた通り、公務員のままでは自分が望む収入は決して得ることができません。いろんな職業を掛け持ちしてでも自分がやりたい仕事を自分で選び、自分の望む収入を得るべくプロとして生きる人生を送りたいと考えたのです。
誤解しないで頂きたいのですが、区役所の職員の全員が怠惰で無能というわけでは決してありません。
むしろとても真面目で誠実で優秀な職員がほとんどで、たま~に首をかしげるような職員がちらほら見られる程度です。
針の穴を通すような正確さで予算編成の数字や法改正の条文とにらめっこし、議員や他部署の細かい調整などその忍耐力も並々ならぬものがあります。
また、こういった国難と言ってもいい時代では、税関の職員といった国家公務員の皆様はもちろんのこと、中小企業向けの融資相談や昨今話題の給付金業務、そして感染症の対応にずっと追われている保健所業務などに携わる職員は、安全安心な社会の維持・運営にとって不可欠な、貴重な、素晴らしい人材です。
ですので、私には向かなかっただけかも知れないけれど、この記事を読んでもらっている方の中には「やっぱり公務員って素晴らしい」「やっぱり公務員になりたい」と思う方が少なからず存在しているんだと考えています。
私が一線から退くことでその席が最低でも一つは空くことになるわけですから、後進に道を譲り、そのチャンスに賭けて公務員試験に挑戦する皆さんをこういった形で応援し続けることが公僕を務めた人間としての役目だと思っております。
最後に。あまたある公務員試験にかかる記事やブログの中から私の記事を選んでいただいて大変光栄で嬉しく思います。
これから私が伝える内容は文字数も少なくなく、多少の読み応えのある記事となっておりますが、それでも私が独学で公務員試験を突破した実績をもとに書いておりますので、決して損はさせない内容であると自負しております。
どうか最後までお付き合いいただき、皆様の中から一人でも多くの公務員試験合格者が出ることを祈っております。
もうあなたは一人じゃない。一緒に合格目指しましょう!
第2章 なぜ東京都特別区なのか
・そもそも何が“特別”か
本記事「独学阿世の徒」で推している東京都特別区ですが、意外にも多くの人が「何が特別な区なのか」というのを分かっていません。
かくいう私も入庁当初の研修時に同じ質問をされて即答ができなかった記憶があります。
特別区を一言で表すと「首都の天領」ということです。
ご存じの通り、天領は江戸時代の幕府の直轄地を一般的に指します。有り体に言ってしまえば、「首都機能を支える税収の高い地域」ということです。
実は特別区ではほかの市町村では当たり前に徴収している税の多くが東京都に吸い取られています。
たとえば固定資産税。
ふつうは、例えば調布市に戸建て住宅を所有していたら、調布市に固定資産税を納税します。
しかし、特別区では固定資産税は不動産のある区ではなく、直接東京都に納税されます。どんなに区が企業誘致をしたり、マンションが建って持ち家人口が増えても肥えるのは東京都だけになります。
企業誘致に関して言えば、法人住民税も東京都に納税します。
経営者であれサラリーマンであれ、どんなに大企業でも月に1,000万円も2,000万円も報酬を貰ったりする人は多くありません。逆に特別区内に本社がある法人で月に1,000万円未満の収益を上げていない会社もまた多くはありません。
つまり、一人ひとりの個人住民税よりも法人に課す住民税の方が圧倒的に高い傾向があります。また、法人住民税には非課税層が存在せず、どんなに赤字だろうと均等割という住民税額が発生するのでその税収も無視できません。
この自治体にとっての2大税収減は特別区ではなく東京都が占めているのです。そうして大きな税収源をせしめた東京都が首都機能の均衡を保つという名目で、23区に「特別区財政調整交付金」を分配します。
なかなかヤクザな世界です。
しかしそれだとあまりにも特別区が不憫だということで「特別」に区長は選挙で選ばれます。この点がほかの政令指定都市の行政区とは違うところです。
まとめると「アガリは東京都が持っていくが、区長は選挙で選んでいいよ」というのが特別区になります。
とはいえ特別区も悪いことばっかりではありません。
公務員試験を受けるにおいてはこの制度をうまく利用することができます。
・狙うは特別区!
第一章でも少し触れましたが、特別区職員は特別区人事委員会によって採用され、そこから各区への割り当てに応じて配分されます。
この「各区への配分」の時間が必要なことから、特別区職員採用試験は他の自治体と比べても早い段階の5月に1次試験が行われます。
多くの自治体は8月ごろに1次試験を行い、しかも受験時期が重複していることもあります。しかし、特別区の試験は他の公務員試験とバッティングすることがほとんどありません。
“数打ちゃ当たる”というわけではありませんがなるべく多くの公務員試験を受験して合格の可能性を高めたいという方や、本命の自治体の試験の肩慣らしをしたいと考えている方にとっては特別区試験を受験しないという選択肢はありません。
そして、23区それぞれの特色を加味しない統一性を持たせることが、試験問題の難易度の低下をもたらしてくれます。
特別区試験の内容はいたってオーソドックスです。順当に高校・大学と進学してきた方であれば一通り学んだことのある内容ですし、地域の事情に特化した問題も出てきません。
また、特別区全体でいったん採用するわけですので、特定の区の事情にだけ詳しい人材を求めておらず、ぶっちゃけ名前も初めて知ったような区に配属が決まることだってザラです。
逆に「渋谷区LOVE!」「練馬区以外イヤ!」というような特定の区にだけ配属されることを望んでいる人は特別区としては「ちょっと困ったちゃん」になってしまうのです。
公務員としてオーソドックスな知識を有し、どこの区に配属されてもそれなりに対応できる、そんな「常識的」で「普通」な人を特別区は望んでいます。
漠然と公務員になりたいな、と考えている人であればむしろ特別区は狙い目です。
さらに、最近はだいぶ減りましたが、地方の町役場にみられるような「コネ人事」という懸念がほとんどないというのも安心材料です。
閉鎖的な環境であれば、地元の有力者の親戚などが一次試験を無事突破したなら、なんらかの忖度が働くことだってありえますが、こと特別区においてはまずありえません。
先ほど申し上げたとおり、いったん区ではなく特別区人事委員会に採用されて各区に配分されるというワンクッションがあるため恣意的な人事が働きにくい環境があります。
公正な試験が受けられるという安心感が特別区にはあります。
そして特別区は他の政令指定都市と比べても人口・財政基盤の規模も大きいため、同期で採用される仲間の数が100人単位に及ぶこともあり、いい意味で同期全員の顔を知らずに仕事ができるという気楽さがあります。
なぜ気楽なのかというと、役所は閉鎖的な環境なので「誰それが結婚した」だの、「誰それが付き合ってる」だの、「離婚した」だのが顔が割れているとすぐに噂が広まってしまいプライバシーもあったものではありません。特に同期同士で恋愛に発展することは日常茶飯事です。同期の数が少ないとこういう事情が筒抜けになってしまいます。気楽と申し上げたのはこういう事情があるからです。
また各区合同の研修会を行ったり、希望する区への交換転入もできることから他の自治体と比べても人材の交流が活発なのも魅力です。
第3章 あなたは公務員に向いていますか?
~適職診断~
第1章、第2章を読んで「いや~やっぱり俺は公務員に向いてると思うわ~。」とか「特別区試験受けるしかないじゃん、アゼルバイジャン。」と前向きになっていただいていると嬉しいのですが、その反面、いざ公務員という仕事に就いてみて「こんなんじゃなかった」「なんか違うんだよね」となってしまうと、筆者のような人間をまた生み出してしまうことになります。
私としても「公務員になれてうれしい」「一生の天職」だと一人でも多くの方に思っていただきたいため、ここまでの説明を受けて改めてあなたが公務員に向いているかどうかを見つめていただきたいと思います。
・区役所ってどんな場所?
まず大前提としてですが、区役所なり地方役場なり国家公務員なり、場所や専門職の違いはあれど公務員がやることは「法律や条例等で公務員がやると定められた職務を遂行する」ということです。
逆を返せば、「法律や条例等で認められていること以外はやってはいけない」ということになりますし、たとえその法律が現在の情勢に合致していなくても法律が変わらない以上は旧態依然の状態で職務を遂行しなければなりません。
また新しい取り組みを行うためには、まず初めに法律や条例、予算の案を作成し、それが議会で承認されてはじめて効力を発揮し、公務員として職務が遂行できるようになります。
このことから公務員には法律等で定められた仕事をこなす能力さえあればいいので、いわゆる特殊な技能や経験は問われません。
特に区市町村の場合、都道府県庁と違って5・6年で部署の異動があり、しかも自分のスキルや前の職場・経歴などはほとんど加味されず、4月になってまったくの初心者の状態で新しい仕事を迎えることも多々あります。
また係長より上の立場になってくると2・3年で異動など当たり前で、部課長クラスになればほぼ毎年配属先が変わります。
来年度は誰が上司になるのか、自分は来年どこの部署に配属されるのかを3月になってワクワクそわそわしながら多くの職員が待つ光景は、さながら学級会で席替えに臨む小学生のようです。
なお、公務員は営利活動はできないため当然ながら営業活動などは行わず、基本的には自席に座って事務作業をすることがメインとなります。
これにより営利活動の一環とみなされる兼業・副業は原則禁止されていますが、逆に言えば身分が保証され、法令違反などがなければ世間の平均的な給与を安定して定年まで受け取ることができます。
区役所が都庁や中央官庁と違うのは、区民との距離感が近いということです。運悪く悪質なクレーマーに当たってしまうことなどもありますが、ほとんどのお客様はいい人たちで、こちらが不遜な態度や杓子定規な応え方をしなければ喜んだ顔をして帰路についてくれます。
また、区民の日常にかかわる仕事が多いことから現場を見に行ったり、様々な施設と連携したり、意見交換のために遠方まで出張したりと刺激のある仕事が多く、デスクワークだけで息が詰まるという方にはうってつけの業務です。
具体的な業務をあげれば、「住民票・戸籍謄本の発行業務」「区立公園の整備」「生活保護業務」「町会との調整」「介護保険・医療保険業務」といったところでしょうか。
なお、都市整備やパスポート発行業務、その他区市町村をまたいだ調整などは都道府県庁の管轄です。
以上のことから下記のチェック項目に該当するものが多ければ多いほど公務員、特に区役所や市役所等の職員に向いていると考えられます。
□①読書・作文が嫌いではなく文書に矛盾がないかある程度添削できる。
□②数字合わせがそこまで苦じゃない。
□③マニュアルなどで決められている仕事を与えられると安心する。
□④イレギュラー対応が苦手。
□⑤営業まわりやノルマを課されるのが苦手。
□⑥家庭をもって自分の家を構えたいと考えている。
□⑦地域社会に広く貢献したい。
□⑧専門分野で狭く深くよりも、色々な職場を広く浅く経験したい。
□⑨人と争うことが苦手。
□⑩安定した給与を貰いたい。
逆に、以下の項目に該当するものが一つでもあれば公務員を目指さない方が精神衛生上よろしいかと思います。
□①自分にしかできないことで収入を得たい。
□②規則通り・時間通りといった枠にはめられたくない。
□③世間の人よりもお金を稼ぎたい。
□④トラブル対応やイレギュラー対応が好き。
□⑤一円単位の数字合わせ、一文字単位の誤字脱字チェックなどが嫌い。
□⑥県、国、歴史を動かすような仕事がしたい。
□⑦世間があっと驚くような財やサービスを提供したい。
□⑧うだつが上がらない人の尻拭いを絶対したくない。
□⑨自分のやりたい仕事は自分で決めたい。
□⑩「遊撃」という言葉の響きに憧れる。
どうでしたか。
もしかして「向いていない人」の項目にチェックがついてしまいましたか?
だとしても、具体的に「これで食べていこう」というものがまだ見つかっていないならば公務員試験をいったん受けてみるのも悪くはありません。
かくいう私も「こうなりたい」という夢が大学生の間に固めることができず、今まで勉強してきたことがそのまま試験勉強に活かせる公務員試験を選んで今日に至っています。
目の前の生活のためにひとまず公務員になって、その後ゆっくり夢を探すとうのも一つの人生です。
第4章 特別区職員採用試験を知ろう
・敵を知り己を知らば
さて、ここまでお読みいただいた皆さんは孫氏の兵法で言う「己を知った」状態になったと言っていいでしょう。第4章からは敵情を知る番になります。
特別区職員採用試験のスケジュールはほとんど毎年変わりません。多少の感染症拡大対策はしているものの試験日程は一定です。
従ってスケジュール調整には直近の試験日程を知ることがベストです。
令和3年度の試験日程は以下の通りでした。
5月2日 特別区職員(Ⅰ類)一次試験(教養・専門・論文)
※同日に東京都庁職員採用試験一次試験
5月9日 東京都庁 事務(Ⅰ類A)一次試験(※院卒クラス)
6月20日 都以外の府県庁および政令指定都市 一次試験
6月25日 特別区試験 一次試験合格発表
7月6日~16日 特別区試験 二次試験(集団面接)
8月4日 特別区試験 二次試験合格発表
9月ごろ 二次試験合格者あてに推薦を受けた区から面接日程調整の連絡
10月ごろ 各区にて面接試験
12月末まで 各区から内定通知を受理
上記のスケジュールを見て特筆すべき点は6月の県・政令指定都市の一次試験日の重複です。
他の市町村の試験であれば様々な日程や試験方針があるため文字通り千差万別です。しかし皆さんがチラっとでも聞いたことがある有名な都市は重複受験ができないように試験日が同一になっています。
また、5月の特別区試験と都庁の一般事務の試験日も重複しています。
これらが意味することは「県庁と大きい都市は併願できない」ということです。県庁への受験も視野に入れている方はこの点に十分ご注意ください。
なお、各区からの面接日の調整ですがこれは私の10年ほど前の記憶を辿って記載しており、実際のスケジュールは多少前後すると思います。
私が今まで勤めた区からお声のかかったのは大学4年生の9月のことで、自動車免許の教習所の待ち時間に『20世紀少年』を読んでいる時に電話がかかってきたことを覚えています。ぶっちゃけ友達が運転する車で夜間ドライブの時に通りかかっただけの区からのお声がけだったので少し反応に困った記憶があります。
それでも何とかなるのが特別区の良いところです。
・特別区試験のボリューム
特別区職員採用試験Ⅰ類事務(以下「本試験」)の一次試験の内容は令和3年度時点で以下のような出題範囲となっています。
①専門試験の問題数は全55問のうち「任意の40問」を選択。
解答時間は1時間30分。
・憲法 5問
・行政法 5問
・民法 10問
・経済学 10問(5問ミクロ経済学、5問マクロ経済学)
・財政学 5問(1問マクロ経済学として扱ってもいい問題あり。)
・経営学 5問
・政治学 5問
・行政学 5問
・社会学 5問
②教養試験は最初の28問目までは必須問題であり、残りの20問の内、任意
の12問を選択した合計40問を解答。
解答時間は2時間。
<必須問題内訳>
・知能分野
文章理解、判断推理、数的処理、資料解釈・空間把握 各7問程度
・知識分野(12問選択)
人文科学 4問(行政学、現代世界史、政治学2問)(※高校政経レベル)
社会科学 4問(世界の宗教、世界史2問、地理)
自然科学 8問(物理、化学、生物、地学 各2問ずつ)
社会事情 4問(ここ1,2年の時事)
③論文試験は2題の内、任意の1問を選択し1,000字以上1,500字程度にまとめる。解答時間は1時間20分。
これだけのものを列挙されるとどこから手を付けるべきかわからなくなって当然かと思います。
しかし何事にも「選択と集中」というやり方で解決を図ります。
まずは「専門試験」です。
9種類の科目がありますが「捨て問」といったものが当然存在します。
「捨て問」とは、「頑張れば点が取れるかも知れないけれど、費用対効果が悪く他の受験生も同様に点が取れないと思われる問題」を「捨てる」ことをこの記事では指します。
『三国志』でいうならば、さしずめ「鶏肋」と言ったところです。『三国志演義』にて、曹操の意を鋭く読み取ってしまった楊修は勝手な撤兵命令を出したことで処刑されてしまいましたが、本試験ではさにあらず。安心して鶏肋をゴミ箱に捨ててください。
・専門試験の「鶏肋」
捨てるには惜しいけれどうま味が少ない問題。本記事では「社会学」「経営学」「政治学」を鶏肋、捨て問と考えるべきと提案します。
社会学と経営学は高校までの政治経済の授業ではほとんど聞いたことのない知識ですし、その取り扱う歴史や出題範囲も広大かつ専門的であるため、大学で専攻して学んでいる場合を除いては捨てるべきです。
多くの方にとって新規に取り掛かる内容が多く、費用対効果が悪いです。
政治学も一見すれば高校政経レベルで何とか行けそうな気がしますが、細かい政党の歴史や理論が並び、政治家の家柄などでない限り馴染みの薄い分野です。
よってこの3科目は取らない方が無難でしょう。
次に「半分は捨ててもいい」科目です。
それは「行政学」と「民法」です。
ご存じのとおり、公務員は三権分立の内「行政」に属します。よってその行政を執行する公務員が行政学を改めて学ぶことは無駄ではありません。
過去問を見ても、主任試験に出てくるような問題が散見されますし将来公務員として出世することにためらいがない方なら今のうちに学んでも損はしません。
しかし、5問のうち2,3問正解できれば御の字な問題のレベルですし、おそらく問題を作っている側もこの科目で高得点を取ることを期待はしていないでしょう。
併せて民法においてもそれは同じです。
民法は本邦における様々な人間の活動におけるトラブルの最終的な解決方法の基準となる大事な法律です。
当然に民法を無視した法律や条例は作成できませんし、区民との不要なトラブルを避けるためにも民法を学ぶことは今回の受験に関わらずとても重要です。
しかし!
法曹の世界で生きていこうという方や法学部出身な方を除いて、民法は非常に抽象的でイメージがし辛く、また個々の事情を民法の条文に当てはめて是々非々を導く必要があるため「ただ解き方を暗記していればいい」という安易なやり方では解けないという問題があります。
筆者自身、経済学部出身ですし法曹には全く興味がなかったため民法の問題を見ると睡魔が襲い、遅々として勉強が進まなかった記憶があります。
とはいえ、40問中10問のウェイトを占める民法ですのでその全てを捨てるとなると他の科目でかなり頑張らないといけなくなります。
せめて5割以上は取れていると安心できると思います。
経済学は経済学部出身でなければ身構えてしまう方も多いと思いますが、解き方さえ知ってしまえば高校1年生レベルの数学知識で解ける簡単な問題ばかりです。しかも財政学に1問経済学分野の問題が入っていることからも、実質11問も落としてしまうのは余りにももったいないです。
経済学の攻略方法も後述しますので是非ともトライしましょう!
・教養試験の鶏肋
正直なところ、教養試験は必須問題が大きなウェイト占め選択問題の内、答えない問題の方が少ないので捨て問がなかなかありません。
強いて言うなら「自然科学」の分野は上述のとおり「物理」「化学」「生物」「地学」から2問ずつ出題されており、高校の時に選択した科目があればそれ以外は「捨てる」方がいいと思います。
巷の参考書ではやたらと「生物」を推しているものが多い気がしますが、だからといってまったく学校の授業で触れたことがないのに生物を選ぶのは得策ではありません。たった2点分しかないのに覚える範囲が広すぎるからです。
ちなみ筆者は地学を高校のときに選択していました。同学年でたった8人の男子生徒しか地学を選択しておらず男女共学なのに全く華のない風景でしたが却って先生と他の生徒との結束が高まり、センター試験では地学の点数がほぼ全員9割を超えるという快挙を成し遂げました。
今となってはいい思い出です。
・論文試験は…?
論文試験はたった2問の内、1問を選んで原稿用紙4枚程度にまとめる試験ですので「捨て問」はなく、むしろ「ヤマ勘」の能力が必要となります。
本記事ではヤマの張り方をお伝えします。
・攻めるべき砦
以上の分析から本試験攻略を目指す皆さんが改めて勉強すべき(と筆者が考える)範囲は以下のように絞られます。
専門試験
憲法 行政法 民法 経済学 財政学 行政学 … 計6科目
教養試験
文章理解 判断推理 数的処理 資料解釈・空間把握
世界史 得意な自然科学 行政学(専門試験と重複) 時事問題
…計8科目(実質7科目)
論文試験 1題
合計14科目(実質)
第5章 独学か予備校か
・最初のポケモンを間違えるな
公務員試験を予備校に通うか独学でやるか。これは住居の持ち家・賃貸論争に次ぐ「答えの出ない」論争だと思います。
私の身の回りにいた職員の中では、8割くらいが予備校出身であとの1.5割は経験者枠または高校生卒業程度のⅢ類合格者、あとの0.5割が不明という内訳だったと肌感覚で感じています。
はっきりと「独学で合格した」と言っていた職員は私を除いて同期にはいなかったような気がします。
「じゃあ独学なんて無理じゃないか」と思う方も当然いるでしょう。
しかし本記事のタイトルは『独学阿世の徒』でございます。この記事を見つけてお読みいただいているということは、予備校以外の選択肢を見つけたいからだと思います。
私は断言しますが、予備校に高い費用を払って公務員試験の勉強する必要は全くないと考えます。むしろ独学こそこれからの時代で最も効率的で効果的な勉強方法だと確信しています。
多くの方は予備校に行くという選択肢しか見つけることができず首を傾げながらも将来の安定のために仕方なく勉強をしたのではないかと私は思っています。
とはいえ、人それぞれ得意不得意があります。
多いか少ないかはその人の主観になるとはいえ、最低でも14科目学ぶ必要がありますしその勉強方法のアプローチを間違えるとその遅れを取り返すのに一苦労します。
話が少しそれますが、先日子どもが買ったお菓子に見たことのないポケモンのカードが入っていました。私はまさしくポケモンの第一世代に育ったので最近の増殖したポケモンの種類についていけませんが、最近の子どもたちは文字通り何百というポケモンを覚えているのだと思うと日本の未来も明るいなとしみじみ考えます。
さてそんなポケモン第一世代の我々では、今のようにネットも発達しておらず手探りで攻略方法を見つけていました。
当時リザードンをゲットすることに燃えていた私は迂闊にもヒトカゲを選んでしまい、最初の方のジム戦で大いに苦戦を強いられました。
私と同じ道を歩んだ少年少女が日本のあちこちにいっぱいいたのではないかと思います。選ぶポケモン、選ぶパートナー、選ぶ勉強法を間違えるとその後の行程に苦労するのです。
・予備校が合っている人 独学が合っている人
では予備校に通う方が向いている人はどんな特徴があるか、以下のようにまとめましたので、勉強を始める前に改めてご確認ください。
□①予備校代を捻出できる人(親の援助が期待できる人)
□②一人で勉強しているとだらける癖がある。
□③疑問点があったらすぐに誰かに聞きたい。
□④自宅や通学先の近くに予備校が存在する。
□⑤普通科高校出身ではない。
□⑥法学部または経済学部出身(在学)ではない。
そして本記事でお勧めしている独学に合う方は以下の通りです。
□①予備校代を用意できない(または払う必要性を感じていない)。
□②他の生徒と肩を並べての授業が嫌い。(授業より先に進みたい。)
□③疑問点があっても自分で調べて解決ができる(またはそうしたい)。
□④近くに予備校が存在しない。
□⑤普通科高校出身である。
□⑥法学部または経済学部出身(在学)である。
予備校の数も多種多様であり、その学校が用意しているコースに応じて値段も違うため一概には言えませんが、平均して30万円の予備校代がかかるようです。この30万円が「ポンっ」と出せる環境であればいいのですが大抵のご家庭は教育ローンを組んで大学進学等を応援していると思いますので中々追加費用を捻出するのは難しいと思います。
また予備校も生徒の囲い込みに必死です。あの手この手で容易に予備校代がわからないように一々「資料請求」を求め、その後に金額がわかるような手口にしています。
金額を知るのに時間がかかるし、予備校を決めるのに貴重な数日を要します。
また予備校に高いお金を出して通ったところで、最近は通信教育も発展してきましたが、やはり黒板の前に先生が立ち、机を並べて受験生がノートをとるという「あの」光景が広がります。
変な話、公務員試験は一定の点数を取ればそれより上の人がもれなく合格する宅建士試験のようなものではありません。つまり「仲間よりも点を取らないと落ちる」試験なのに横並びの授業を受けていては頭一つ抜けて合格をつかみ取ることは難しいと思います。
公務員試験は教養試験を除いた内容が、高校の普通科で学んだ内容の復習であることがほとんどです。もし出身高校が工業高校や商業高校なら公務員試験に当たって予備校に行く方がコストは少ないと思いますが、そもそも前者2校を卒業する生徒はそのまま就職することになるので敢えて公務員試験を受ける方は少ないでしょう。
併せて、専門試験では憲法・民法をはじめ経済学のウェイトが多くを占めます。法学部または経済学部で修学した方なら本試験の勉強もその復習で済むためスムーズに進むと思います。一方で前2学部以外の学部出身の方はなかなか公務員試験を独学で受けるのは難しいと思います。
さて、あなたは独学と予備校どちらが向いていると思いましたか?
次の章からはもう具体的に勉強の仕方に入っていきます。公務員試験を予備校で受けるべきと考えた方は残念ながらここまでのお付き合いになります。
逆に独学が肌に合うと考えている方は是非とも次にお進みください。
横並びの授業を受けている予備校組をこっそりごぼう抜きしましょう!
第6章 攻略!特別区職員採用試験
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