イギリスの大学に就職しました

はい,タイトルにもある通り9月1日から,Royal Holloway, University of London (以下RH)でLecturerとして働いています.イギリスのアカデミアで働くことに興味がある人いるかもしれないので,生活の事とか大学の事を書き残しておきます.

見出しの(私)・(仕)は私生活・仕事の話を意味します.


(私)入国に失敗しました.拘留.

Skilled Worker VISAとかいうたいそうな名前のVISAを70万ぐらいで買って入国しようとしたんですが,完全に失敗しました.

というのも,大学から"VISAの人を正式に雇用するには時間がかかるからできるだけ早く来てくれ!できれば8月15日までに!"と言われていまして,8月18日に現地に着く飛行機でイギリス入国を試みたんですよ.

ちゃんと確認しなかった自分が悪いっちゃ悪いんですが,入国審査の時に自分のビザが有効になるのが8月20日以降だということが判明しました.パスポートと航空券を取り上げられ,テレビとかで見たことある拘留エリアに連れていかれました.拘留エリアは絵にかいたようなpeople of colourの巣窟でしたね.マジで白人いなかった.

小一時間そこでまたされ,結局旅行者としての入国を許されました.もし自分が日本人ではなくて旅行者としてイギリスに入国するのにもVISAが必要だった場合,国に送り返されていたそうです.ただ,Workerとして入国しないと大学で働くことができないらしく,20日以降にイギリスに再入国しろと言われました.入国管理の人は陽気に,”明後日電車乗ってパリにでもいって,Workerとして再入国しやがれ!Nice weekend tripだ!”とか言ってたんですけど,15時間のフライトのあとに小一時間勾留された人にそんな陽気なテンションで話しかけられてもね...

で結局8月20日に日帰りでブリュッセルに行きました.
友達と公園でだべったり,家でゲームしてましたね.
ギリギリ観光地の写真一枚とってたので貼っときます.

多分有名なとこ.一番有名な広場とかは行ってもいない.


(仕)Lecturerの仕事・給料・職場環境


仕事概要
タイトル: Lecturer (Resaerch & Teaching)
雇用形態: Permanent (かなり努力しないとクビを切られない)
年俸: £49,108 (月の手取り大体£2800-2900)

大学の規模感
総学生数: 11,000人(学部9,500人,大学院1,500人)
心理学部: 約1,000人(1学年300人ぐらい)

学部生の卒論の面倒を見る教員の数だけで60人ぐらいるので,おそらく教員の数はもっと多いですね.自分の契約はResearch & Teachingなんですが,教育しかやらない,teaching-focused lecturerだったり,teaching fellowと呼ばれる人の数がかなりおおく,学部の30%以上が研究を一切やらない人たちらしいです(教育メインの仕事も当然permanentの契約がある).

仕事内容について
イギリスにはprobation (試用期間のようなもの)があって,いくつかの条件を満たさないと試用期間が終わりません.ただ,使用期間が終わるまでは通常教育業務が減らされます.今年の自分の教育の仕事は

1) 100分の授業を5回
2) 卒論生5人(10月から3月の半年で終わる)
3) personal tutoring (10-15人と年数回面談して元気にやってるか確認)
4) 採点業務(だいたい丸一週間つぶれるぐらいの仕事量)
5)授業を1つconveneする

です.試用期間を終えると,授業の回数が最大9か10まで増えるらしいです.ただ,グラントをとった金額に応じて授業や採点業務は減らせるので,使用期間後の教育業務の量は運次第ってとこもありますね.数千万~億をとれば,研究100%生活にすることも可能です.夢があっていいですよね.

修士の学生は今のところとる予定はないですが,修士の面倒も乗っかってくるとちょっと大変かも.博士に関しては,奨学金をとってきた学生or自分のグラントで雇う学生しか受け入れをしないポリシーがあるので,しばらくとることはないかなーという感じです.

初年度はまあスライド作ったり,新しいシステムに慣れなきゃだったりいろいろ大変そうですが,慣れたらそこまで大変じゃなさそうですね.契約は,大学業務:教育:研究 = 2:4:4 なんですが,ちゃんと守られているような気がします(裁量労働制だけど一応一日7時間労働がスタンダード).授業は自分の好きなことを教えられるのでスライドも簡単にできますし,普通に楽しいです.

5)に関してですが,イギリスは基本的に輪講スタイルです.
Module convenerと言われる人が,100分 x 10回のmodule (単元)をとりまとめて,授業の内容の調整したり,評価基準作ったりします.Convenerが10回分授業するということは基本的にはなく,大体3-5人で10回を分担することが多いです.今年は自分が担当している単元の授業3つと,人が担当している単元の授業2つをやる予定です.

大学の仕事(いわゆるアドミン)に関しては,自分はウェブサイト担当なのでそんなに忙しくないですね.ただちょっとうちの学部のウェブサイト結構アレなので自分が担当のうちに少しいじろうとは思っています.


労働環境

控えめに言ってとてもいいです.

グラントに関してのサポート体制がすごいのはもちろん,本当にすべてがマニュアル化されていて,新しい人を受け入れる準備がすごい.
結構いろんなオンライントレーニングみたいなのをやらなきゃいけないのはだるかったんですが,新人教育のマニュアル化のレベルに関して結構関心しました.学部のサマーパーティー(同僚の家/庭で開催)にいったんですが,普通に楽しかったですね.みんないい人っぽいし,ちゃんと品のない話する人もいるし(いい意味でね).それに将来一緒に研究できそうな人もたくさんいて,今後がとても楽しみです.

給料
手取りが大体£2800ちょいなんですが,これ一応日本円換算すると50万ちょいですね.ただイギリスって物価高いし生活費結構かさむんですよね.

家賃: £1200
電気/ガス: £100(冬は150ぐらいいくらしい)
水道: £30
住民税: £160(年収ではなく,住んでいる家の価値によって変わる)
Wifi: £30
SIM(20GB): £10

…固定費で大体£1500-1600.給料のほぼ半分が家賃って,バカなんじゃないのって思いますよね.普通です.ただイギリスの北に方に住めば家賃はもっと安いです.今住んでいる場所はクッソ小さい町ですが,ヒースロー空港から車で15分,ロンドン中心部まで電車で30分という好立地なのでしゃあないですね.

週6で貧乏飯を作って,外食週1回,みたいな生活をすれば食費・生活費は結構切り詰められるので月の支出は£2000で抑えられるかなーという感じです.ただこっから自分が日本に行くお金・日本にいる妻をイギリスに連れてくるお金のための貯金だったり,あとは妻の生活費の支援につかったりするんで,まぁ貯金はしばらくできなさそうですね.貧乏生活って金はかからないけど時間はかかるので,学期が始まってからどこまで節約できるかやや不安です.妻がまだ学生なのでいい暮らしはできませんが,共働きだったら別にこの給料に何の文句もないですね.まあもっともらえるに越したことはないですけど,仕事たのしそうですし,まあいいかなって思います.(+毎年少しずつ給料上がるし,1つ昇進すれば月の手取りが£500ぐらい上がる.)

プレッシャー
控えめに言ってめちゃくちゃありますね.
同じResaerch & TeachingのLecturerたちの業績みるとやっぱり自分の業績は寂しいですし,質のいい論文の出版と外部資金獲得のプレッシャーが半端ない.

イギリスにはREFという7年に1回行われる大学評価の祭典()があるんですが,そこでのランキングが大学生のリクルートメントだったり,国からの資金の割り振りに結構重要です.大学で研究しているすべての人が論文をREFに提出するんですが,そのうち何人が最高評価を受けるか,みたいな指標があるせいで,とにかく質のいい論文をだすことへのプレッシャーが強いです.ちなみにうちの学部は前回は全員最高評価で,心理学のランキングだと全英3位だったそうです.そりゃプレッシャーすごいわ.

テニュア獲得は1つのゴールと捉えることもできますが,自分的には新しい戦いの始まりって感じです.テニュア獲得自体に特に何の喜びも感じてないです.いい学部に就職できたこと,教育も含めて仕事が楽しそうだということ,これからも研究が続けられることは嬉しいですが.

労働環境は学校や契約によって全く違う
どこの国もそうだと思いますが,マジで全然違うので,言ってたことと違うじゃん!みたいなのは勘弁してくださいネ.(LSEは異次元の給料だったり,他の大学だとlecturerはもっと安い給料から始まることがあったり.場所によって教育業務の重さも全然違います.)

まとめ

ここまで結構ポジティブなこと書きましたが,正直言うと,イギリスに住みたいなんてこれっぽちも思ってないし,妻がこれから日本で修士をやるので距離が遠いの寂しいし,日本遠いし,生活費高いし,外食バカみたいに高い割には味微妙なこと多いし,仕事楽しいけどけっこう大変だし,グラントとれるか不安だし,いい論文出せるか不安だし,自分の今の状況に文句言おうと思えば永遠に言えます.まだ若いから何とかなってるところが多いです.頃合いを見計らって日本に帰ります.

イギリス留学だったり,イギリスアカデミア就職に興味がある人の助けになれればなと思っているので,質問等あればTwitterのDMとかで気軽に連絡ください.

ポスドクや海外学振でうちに来たい,というような話も大歓迎です.



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