ユーミン無しでは語れない我が人生
尊敬してやまない人物は誰かと聞かれたら、迷わずユーミンと答える。
もちろんシンガーソングライターの『荒井由実(松任谷由実)』のことだ。
ユーミンとの出会いは、中学3年生の卒業間近な季節。
従姉妹がアルバムを貸してくれたのだ。
邦楽はほとんど聴かず、洋楽にかぶれていた私には、正直、興味の対象ではなかった。ところが、曲を聴いてとんでもない衝撃を受けたのだ。
美しいパイプオルガンの音。
ステンドグラスや足音が遠ざかる背景が、ドラマを見ているように思い浮かぶ。
そして、歌詞に「死」と言う言葉が入っていたのだ。
これはもう電撃的で、「ええっ、いいんですか? 死とか歌詞に入れてもいいんですか?」と目が飛び出そうになったのだ。他にも、死を匂わせる曲が。『ひこうき雲』『12階のこいびと』
15歳といえば、様々な事柄を真剣に捉えて、自分哲学し、生死感にも敏感になる年頃だ。そんな多感な時期に、真正面から直球を投げられ、ミットにバシッと球がハマったようなドストライクの爽快感。
誰も答えてくれない質問に、ためらい無く回答を示してくれた先生。
ユーミン信者(?)に至るには、それほど時間はかからなかった。
衝撃波は「死」だけではない。
音楽は聴くもの、から、想像するものへと変化する。ユーミンの凄いところは、あの短い歌詞の中で、必ずドラマが見られること。一曲一曲が、全てドラマなのだ。
言葉と音を別々に聴くのでは無く、音楽と言葉がマリアージュ。ダンスを踊って、想像の世界で2次元から3次元へと変化して行く感覚。曲を聴くたびに、臨場感あふれるドラマに、自分もエキストラとして参加している感覚。
イコライザー付きのコンポにヘッドフォンをさして、膝を抱えて座りながら揺れる光を見てユーミンワールドに浸る。
自分と音楽だけの世界。ドラマの中で泣く。泣く。泣く。
ゆっくり癒されて、元気になって立ち上がる。
こうして、友達と喧嘩した時も、失恋した時も、仕事で落ち込んだ時も、友達や恋人に会えなかった時も、親しい人を亡くした時も、海外ひとり旅でホームシックになった時も、彼女の曲が守護天使のようにずっと寄り添ってくれたのだ。
そして今でも、私の人生に存在し続けている。
社会人の息子と大学生の娘の友人には、ユーミンを知っている人が多いと聞いた。親がその世代だから、カラオケやドライブで聴いていたらしい。世代を超えて、さらには今聞いても全く古さを感じないのは、流行りではなく芸術だからとも思う。
人生の悲しみを喜びに変えてくれたユーミン。受け取ったたくさんの恩恵を、次の世代に何かしら残していきたい。いつか自分もユーミンのように、言葉を使って自分流の表現をしたいと思いつつ、そのいつかはまだ来ていない。
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