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”エシカルパターン”から考えるあらたな購買行動モデル「AISCECAS」

 WEBマーケティングにおいて、2010年代前半から「ダークパターン」と「フェアパターン」という二項対立の枠組みとしてユーザー体験が議論されるようになりました。ダークパターンとは、2010年にUXデザイナーのハリー・ブリヌル氏によって提唱された概念で、企業利益を優先し、ユーザーに不利益を与える設計手法を指します。一方、フェアパターンは別名ブライトパターンともいわれ、ユーザーの利益を尊重するデザインで、透明性や誠実さを重視しています。この対極的な考え方は、「企業利益かユーザー利益か」というトレードオフの中で議論されてきました。

 ここで私たちは「エシカルパターン」という新しい概念を打ち出すことにしました。エシカルパターンは、このトレードオフを乗り越え、企業利益とユーザー利益を同時に満たす視点を提示します。つまり、企業とユーザーが共に利益を享受できる設計を指します。具体的な例としては、利用規約の透明性を高め、ユーザーが理解しやすい形で提供することでトラブルを防ぎ、信頼を構築する取り組みが挙げられます。このプロセスは、企業にとっても顧客満足度やブランド価値の向上につながり、双方にとってメリットがあります。

 このエシカルパターンを基に、新たな購買行動モデル「AISCECAS(アイセキャス)」を提案したいと考えています。このモデルは、従来のAISCEAS(アイセアス)モデルに「C(Confirm)」のステップを加えたものです。
AISCEASとは、2005年頃にアンヴィコミュニケーションズの望野氏が提唱した、顧客の購買プロセスを説明するモデルです。消費者が製品やサービスを知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、調査し(Search)、比較し(Comparison)、納得して購入し(Action)、その後もフォローアップが行われる(Share)のプロセスを表しています。

2005年頃にアンヴィコミュニケーションズの望野氏が提唱した、顧客の購買プロセスを説明するモデル

AISCECASモデルは、消費者が購入という行動「A(Action)」を起こす前に、サービス利用において必要な情報を確認する「C(Confirm)」を加えています。ユーザーがサービスの利用規約やプライバシーポリシー、関連情報をきちんと確認し、サービスの利用における理解と納得を得ることで、健全な取引が成立します。このステップにより、ユーザーは安心して行動に移れるようになり、企業もトラブルを未然に防ぎ、信頼性を高めることができます。

 Social Pentagonは、「同意」の前にユーザーが利用規約などを素早く確認し、理解を深めることでWeb取引におけるトラブルを減少させることを目的としています。このプロセスモデルは、マーケティングにおいても重要な役割を果たしています。私たちWEBマーケティングやデザインの現場では、このAISCECASモデルを設計思想として取り入れ、エシカルなWEBマーケティングを推進していくことが求められています。
 しかし、ユーザーはこれまで利用規約などの「同意」に対して約9割のユーザーが読んでいなかったのが実態であり、このモデルをユーザーが求めていないように見えるかもしれません。
 ところが、実際にAction手前で規約のポイントを解説をしてみたところ、アンケート結果では、約9割のユーザーが要約がある方がよいと答えています。

ユーザーは購買行動(Action)手前で規約などを実は確認(Confirm)したかった

 エシカルパターンに基づく設計は、単なる倫理的な配慮に留まらず、企業がユーザーからの信頼を得て持続的な成長を実現するための戦略的なアプローチです。こうした取り組みを行うことで、社会全体におけるWeb取引の健全性が向上し、長期的な関係性と信頼が築かれていくでしょう。倫理的かつ健全なWeb環境を実現するために、私たちマーケター・デザイナーが果たす役割は今後ますます重要になっていくのです。

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