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【税務】通勤手当って非課税なの?

 今回は通勤手当は非課税なのかについてお伝えします。

 どこかの企業に雇われている場合、通勤するために自宅から勤務場所まで移動することになると思います。

 この移動するために要する交通費を支給する企業は今や当たり前のようにも思われますが、これって支給しなければならないものではないので、企業が従業員のために配慮して支給しているものと言えます。

 労働者が労働した場合には賃金を請求することができ、使用者は賃金を支払われなければなりません。

 何も契約していなくても、少なくても最低賃金を請求することができ、使用者は支払わなければならないのです(労働基準法13条、28条)。

 最低賃金さえ支払わない場合は最低賃金法違反で刑事罰が課されます。たまに最低賃金法違反の報道を見かけます。

 しかし、通勤手当を支給しなければならないものではないのです。
 
 最低賃金法のような例えば最低通勤手当法というような法律はないので、支払うか否かは使用者と労働者の合意、つまり労働契約の内容となっているか否かで決まるのです。

 こうした労働契約の内容として、通勤手当が定められている場合を前提にお話しします。

 この通勤手当ですが、勤務先から支給されているものなので給与所得に含まれて、以前にお伝えしたように給与所得控除をして給与所得を算出してこれに税率をかけて税額を算出するかのようにも思えます。

 しかし、給与所得には含まれないようにできるのです。

 それは、脱税とかそういった話ではなく、法律上許される場合があるわけです。

 それは非課税所得とすることです。

 通勤手当を非課税所得とすることができるのです。

 一定の通勤手当は法律で非課税所得として所得税を課さないことになっています。

 この通勤手当の一定の場合というのはどんな場合でしょうか。

 誤解を恐れずごく簡単に伝えると、1か月最大15万円までなら非課税所得です(詳しくは後述の条文です。)。

 これを超えたら超えた部分は給与所得にあたります。

 なので、おそらくどの企業も給与所得に当たることがないように非課税所得となるような範囲内で支給しているものと考えられます。

 通常の1か月の給与に加えて、15万円も支給するわけですから、実際にこの限度額まで支給している企業があるとすると、その企業はよほど人材を確保したいという思いがあるのでしょう。

 新幹線通勤している人も一定数いますが、一定の距離なら15万円に通勤用定期乗車券の金額がおさまるでしょう。

 実際に交通費としてこれくらいはかかるだろうということで、これは労働者が交通費を立て替えているのを実費で補填する程度の金銭を勤務先からもらうだけなので、これに税金を課すのはやめますという国家の意思表示と思います。

 支給している企業の側も、せっかく国が非課税所得としているわけですから、誤解のもと所得税が課せられる通常の給与と同様の扱いをして、通勤手当と給与の合計額から源泉徴収するということがないようにしていただければと思います。

 これ、企業側が知らなければ実際にやっているところがあってもおかしくないと思います。

 仮にしていたら年末調整の時に源泉徴収しすぎたものを返金するようにして精算いただければと思います。

 今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。

五 給与所得を有する者で通勤するもの(以下この号において「通勤者」という。)が
その通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして
通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、
一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として
政令で定めるもの
所得税法9条


(非課税とされる通勤手当)
第二十条の二 法第九条第一項第五号(非課税所得)に規定する政令で定めるものは、次の各号に掲げる通勤手当(これに類するものを含む。)の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する部分とする。

一 通勤のため交通機関又は有料の道路を利用し、
かつ、
その運賃又は料金(以下この条において「運賃等」という。)を負担することを常例とする者(第四号に規定する者を除く。)が
受ける通勤手当(これに類する手当を含む。以下この条において同じ。) 

その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし
最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額
(一月当たりの金額が十五万円を超えるときは、一月当たり十五万円)

二 通勤のため自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者(その通勤の距離が片道二キロメートル未満である者及び第四号に規定する者を除く。)が
受ける通勤手当 
次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額

イ その通勤の距離が片道十キロメートル未満である場合 一月当たり四千二百円

ロ その通勤の距離が片道十キロメートル以上十五キロメートル未満である場合 一月当たり七千百円

ハ その通勤の距離が片道十五キロメートル以上二十五キロメートル未満である場合 一月当たり一万二千九百円

ニ その通勤の距離が片道二十五キロメートル以上三十五キロメートル未満である場合 一月当たり一万八千七百円

ホ その通勤の距離が片道三十五キロメートル以上四十五キロメートル未満である場合 一月当たり二万四千四百円

ヘ その通勤の距離が片道四十五キロメートル以上五十五キロメートル未満である場合 一月当たり二万八千円

ト その通勤の距離が片道五十五キロメートル以上である場合 一月当たり三万千六百円

三 通勤のため交通機関を利用することを常例とする者(第一号に掲げる通勤手当の支給を受ける者及び次号に規定する者を除く。)が
受ける通勤用定期乗車券(これに類する乗車券を含む。以下この条において同じ。) 
その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による定期乗車券の価額
(一月当たりの金額が十五万円を超えるときは、一月当たり十五万円)

四 通勤のため交通機関又は有料の道路を利用するほか、併せて自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者(当該交通用具を使用する距離が片道二キロメートル未満である者を除く。)が
受ける通勤手当又は通勤用定期乗車券 
その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額又は定期乗車券の価額と当該交通用具を使用する距離につき第二号イからトまでに定める金額との合計額
(一月当たりの金額が十五万円を超えるときは、一月当たり十五万円)
所得税法施行令20条の2

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