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【Day19(22/1/22)】採用を科学する

今日は昨日に続き、採用について書き進めていきます。社外の立場からではありますが、長らく採用に携わってきた中で、いい事例も悪い事例も見てきたので、多少なりとも採用への理解はあると自負しています。

ちょうど友人と採用について話し合う機会もあり、思考の整理ができたタイミングだったのと、新しい会社では自分自身も自社採用に携わる機会もでてきたので、自分のためにもまとめておこうと思い立ち記事にしてみました。

ちなみにこの本はこのテーマを考える上で、とても学びの多い本でした。採用関連の本では一番科学的だと思いますのでおすすめです。

●感覚採用からの脱却

採用というのは属人的になりがちで、感覚的になりがちだと思うのですが、組織を大きくし会社の将来にとって「良い採用」を行うためには、感覚採用を脱却していく必要があると考えています。

昨日「採用は仲間集め」という書き方をしたのですが、初期フェーズのスタートアップでは「なぜその人を採用したいのか」という問いへの答えは「一緒に働きたいと思ったから」「仲間にしたいと思ったから」であることが多いと思います。

人数が少ない分、「仲間として迎えたいかどうか」という個々人の判断を集計して組織としての判断を下すことが可能ですし、社長が最初から最後まで採用プロセスに入って見極めを行って判断を行うことも可能です。つまり初期フェーズでは採用が属人化し、感覚による判断が先行してしまってもあまり問題にはなりません

しかし、組織が徐々に大きくなり、人数が増え階層化されていくと「仲間にしたいと思ったから」という感覚的な判断に基づいて意思決定を行うことによって問題が生じてきます。より正確な表現をするならば、どんな人を仲間にしたいのか、仲間とはどういう存在なのか、ということを組織としてしっかり言語化し分解できていない状態で、仲間にしたいと思ったか否かという主観に基づいて各々が意思決定をしだすと、組織として望ましくない状況に陥っていくことが見込まれます。

あるポジションの採用を行う際に、募集ボジションマネジメントするマネージャーが欲しいと思えばGOサインを出してしまえば良いような気もします。しかしそれではその判断は組織のものではなく、個人の恣意的なものになりかねないので、あくまで組織としての判断を行うために、人事による面接があったり、別部門による選考が当たりするのが一般的です。

●個人は組織の人格を持てるのか

しかしでは、なぜ個人の恣意的な判断にをしてはいけないのでしょうか。おそらくそれは非常にシンプルで、組織は個人のものではないからということに尽きるはずです。つまり、個人として判断を行うのではなく、組織にとって望ましいからという視点に立って意思決定し、判断することができるのであればそれで良いのです。

けれども、「組織にとって望ましいから」という人格を持ち、検討し判断を行うことは言うは易し行うは難しな行為ではないでしょうか。個人は本当に組織になりきれるのでしょうか。人間はそこまで想像力を働かせることができるのでしょうか。組織が大きくなればなるほど、それは困難になっていくと思われます。

組織としての判断をしているようで、実際は自分にとって心地よいかどうかで判断をしてしまっているというのが赤裸々な実態なのではないでしょうか。「自分よりも優秀な人を採用できるかどうか」が採用の質を測る上では重要とよく聞きますが、これもまさしくこの文脈に位置付けることができる話だと思います。自分より優秀な人間は自分の立場を脅かす可能性があるので、ついついバイアスをかけて判断をしがちになるというのが人間の本質ではないでしょうか。

●採用人事の役割

つまり、一個人は組織にとって望ましいから採用するなんて合理的な判断を行うことはできないと私は考えています。それはあくまで、一個人の人格に基づいた判断を、組織的判断であると正当化しているだけに過ぎない。

このようにして、各々が勝手な判断をして仲間集めをしてしまうと組織としての方向性がバラバラになってしまう。だから誰かがその舵取りをしなければならない。組織が大きくなっていくと社長がすべての採用に関わることは難しくなってくるので、そういう時に舵取りの役割を担うことになるのが人事(採用担当)ということになります。

どこまでの権限を持たせるのか会社によってかなり差があり、採用担当は応募者集めや日程調整だけやっておけばよいという考えの会社もあるようです。それが悪いとは思わないのですが、採用がうまくいっていて、強固な組織を作ることができている会社は、人事(採用担当)が採用活動における番人として機能し、「その判断が組織のためになっているのかどうか」を冷静に判断できていることが多いように思われます。

このような冷静な判断をこなうために、組織としてどのような人を採用したいのかを明文化してチェックリストを作成したり、個人の面接のスキルの差によって面接品質にばらつきが出ないように面接トレーニングを行ったりと、人事主導で(もしくは理解ある経営陣主導で)進めることができている会社は強固な組織が作れているように思います。

●採用を科学する終わりなき旅

感覚採用から脱却するという方針に基づき、できる限り面接のブラックボックス化を避けたり、属人化を避けていくために、採用ペルソナを可能な限り細分化し言語化したりと、こうやって組織としての最良な判断を行っていくべく試行錯誤し、採用プロセスを再構築していくことが採用を科学するということになるのではないでしょうか。

AIを活用して、スコアリングするということもできるようですが、そのような技術を導入しなくとも、できることはいくらでもあるように思います。感覚採用から脱却することは必ずしも人間味のない採用を行うこととは同義ではありません。温かみのある科学された採用というものもあるはずです。

答えのない旅にはなるので組織内のコンフリクトに悩まされることも多々あると思うのですが、諦めずに追求し続けていきたいと思います。

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