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『スピリット・リング』

原題:THE SPIRIT RING
ロイス・マクマスター・ビジョルド・著 
梶元靖子・訳
創元推理文庫(小説)

2023年12月15日読了。
物語終盤の展開に触れています。

15世紀末、北イタリアの小国が舞台のファンタジー。
魔術の才を持つ少女フィアメッタの恋と冒険の物語。


女であるがゆえに魔術師の父に跡継ぎとして認めてもらえなかったり、憧れる結婚も自分の意思だけではままならない。そんなフィアメッタが悩んだり、負けずに奮闘する「がんばる女の子」の話かと思いきや、青年鉱夫トゥールが思いの外がんばる話だった。

物語の中盤はほぼほーぼほーぼぼトゥールが主人公となり、タンバリン(魔法の盗聴器)を持って敵陣に潜入したり、捕まったり、フィアメッタにキスしとけば良かったなと思ったりする。
トゥールには同著者の『魔術師ペンリック』の主人公ペンリックにも通ずる愛すべき間抜けさがあり、ビジョルドさんが描く男子いいなぁと思った。
聞いてたほど不憫でもないような。
なんだかんだ上手くいってるよな?
服も褒められたし。


終盤はブロンズ製のゴーレムをフィアメッタが魔術で動かしたりと、フィアメッタが主人公の座を取り返し、ビチっと締める。
ゴーレムを動かす魔術が〝いちど呪文を唱えて起動させたらあとは勝手に動く〟という感じではなく、結構不便なのが良かった。

悪い奴はとことん悪く残虐で、良い人たちは賢く冷静で悪を挫いて幸せになる。
さっぱりとした気持ちのいい物語だった。
やっぱりファンタジーはいいなぁ。

フィアメッタ
黒髪、赤いドレス、ムーア人の血を引く


ところでこの本、古本で入手したら、発売当時のこのチラシみたいなものが挟まっていた。

こういうのを隅々まで熟読するタイプです

以前持ってた『クリムゾン・リバー』にも同じものが挟まっていたので懐かしさを覚えるとともに、中にある『スピリット・リング』の紹介も、読んでいるはずなのに印象に残っていなくて驚く。
そんなこんなで、実はすれ違ってた『スピリット・リング』と、仲良かったのに離れ離れになってしまったすてたチラシとの嬉しい再会でした。
紹介してくれた虹花さんに感謝いたします。
今じゃ『スピリン』なんてつづめて呼ぶぐらい仲良しですよ。

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