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世界初・フランスの洋服の廃棄禁止の法律に考える、わたしの仕事でできること

2022年1月、フランスでついに洋服の廃棄処分を禁止する法律が施行された。
生産者が販売だけでなく、廃棄やリサイクルまで責任を持つ「拡大生産者責任(EPR)法」という法律だ。

プロパーで購入され幸せに旅立った洋服たちは良いが、売れ残った子たちは今まで焼却など廃棄処分をされていたという事実を人間や動物に置き換えて考えると、じつに恐ろしい。

ここ数年、SDGsの思想が根付き廃棄処分に意義を唱える声が多く聞こえてくるが、生産枚数を減らすだけではなんの解決にもならない。

物を作るにはヒトや工場を確保し生産ラインを押さえる必要がある。
1枚つくるにも1000枚つくるにもこの工程は同じだ。
そのため原料確保にも生産にも販売にも仕入れにも〝ロット〟が存在する。

このロットを埋めるのが難しい。ロットを無くせば1枚あたりの洋服の単価はオートクチュールなみに上がり、価格のと品質のバランスはたちまち崩壊する。

「必要枚数だけ生産を」と言うのは簡単だか…

「いつ様枚数だけ生産を」は、ものづくりに関わるヒトなら誰でも共感する。だが、どこを変えられるかが問題だ。
世界ではじめて拡大責任者責任(EPR)が具体化されたのは1991年のドイツ。

生産者が製品のリサイクルにまで責任を持つべきだという定義は、1990 年代初めにス ウェーデン・ランド大学 トーマス リンドクビスト教授(環境経 済学)によって初めて提唱された。
リンドクビスト氏はEPRを製品ライフサイクルのすべてにわたる環境負荷、特に製品の引 取及びリサイクルと処分に対して焦点を当てた生産者責任の拡大であると定義した。
(中略)
ドイツでは、廃棄物を管理する責任が生産者にあるとし、包装廃棄物の収集・処理・処分費用に公的資金を適用しないことを明らかにし、行政(市 町村)から民間の産業へ移すことにおいて、この革命的な政策は今日に至るまで世界中に 大きな論争の波紋を広げている。

「拡大生産者責任(EPR)をめぐる議論と現状ー経済産業省」より

ドイツでは家庭系廃棄物で構成比的に最も大きいのが容器・包装であったからだと説明している。
当時から30年以上たっている今の日本ですら、この政策はかなりの物議を醸すだろう。

だが、冷静に考えれば包装資材や売れ残り在庫に生産者が責任を持つのは当たり前ではないか。


「在庫を焼いちゃいたい。」

むかし勤めていたアパレルブランドでは、顧客を飽きさせないため、次から次に新しい洋服が生産され、在庫がみるみる膨れ上がっていた。

そのときの営業担当がぽつりと「もう、在庫を焼いちゃいたい。早く処分したい。」とこぼした。
当時の私の仕事は企画デザイン。デザイナーが心をこめて作った洋服たちは過剰在庫になった途端、こんな言われようをするのか…。
心が痛んだ。焼きたいを言われたことはもちろん悲しかったが、企画側と営業とでは、これほど感覚が違うのかと絶望のような驚きがあった。


どう変わっていくべき?

フランスの拡大責任者責任(EPR)法の罰金は日本円で最大約190万円らしい。
日本のファッション業界でも、間もなく生産者が廃棄やリサイクルまで責任を負うことが当たり前になる波がくるはずだ。
フランスの拡大責任者責任(EPR)法では、廃棄物対策のため「生分解可能」「環境配慮」などのコピーを入れることが禁止され、レストランではイートインの客に対し使い捨てのコップや皿が使えなくなる。

洋服や雑貨を扱う私たちは、どう変わっていけばいいのかを考えてみると、商売の原理原則に立ち返った。

デザイナーとしてできることは、長く使いたい商品をつくること。

マーケターとしてできることは、SDGsをマーケティング材料に使いすぎないこと。

営業としてできることは、ロット売りしない販売形態を確立すること。

広報としてできることは、環境配慮だけではなく売り切りをブランドのポジティブポイントにすること。

これが、本来のSDGsだと感じている。

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