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タロットⅦ“戦車”の絵が重なる時

川口緋呂という作家の本体は、手である。
左手と右手。
それぞれに役割がある。
属性も違う。
そして、人間としての本体を担う「頭=意識」の指示をはねつけ、時には無視するのは、主に左手だ。

私は右利きのため、道具は右手で持つ。
だから、主導権は右手にあると思いがち。
私自身もそう思っていた。

ところが、主体は左手にあった。

なぜなら、「見えない受信装置」としての機能の要は、左が担っているからだ。
右は、そこからカタチを導き出しアウトプットする役割。

例えば、色選び。
目で見て「これだな」と思っても、その色を手に取ると(もちろん左)ものすごい違和感があり、却下となる場合がある。
逆も、当然ある。
頭が「この色を塗りたいな」と思っていても、左手に取ったら却下されるのだ。

絵具を右手で取ることは、ほとんどない。
私自身、気付くまでは無意識にやっていた。


顔彩のように、固形の絵具を筆で溶かして使うタイプだとどうなるか。
目で見て選ぶか、筆が向いたところにある色をそのまま取ることになる。
左手で絵具に触れることがないから。

しかし、そんな時でも、それがOKかNGかの判断は、左手がするのだ。

そういう時、左手はだいたいにおいて、描いている紙の端を押さえている。
というか、昔は私自身、左手の役目は紙を押さえたりパレットを持つことくらいだと思っていたのだ。

色判定の主導が左だと気がついた頃、固形絵具を筆に取る時は両手の反応に注意した。
右が筆先を下ろそうとする先にある色。
目も、その色を選んでいる。
そのまますんなり筆を下ろして色を取る時と、ぐっと何かに抑えられたような感じになって筆が止まる時と。

頻繁にそれを体感してみて、ようやくこの頭も、
「この抑えられる感じは、左のNG判定サインだな」
と、納得した。

どういう線を引くか。
塗り方をどうするか。
そうした、具現化工程において中心的な働きは、右手の領域。
色彩や雰囲気を決めるのは、左手の領域。

では、頭=意識の役回りは何か...となる。

以前は、頭は要らないのではないかと真面目に思っていた。
むしろ邪魔ではないかとさえ。

頭=意識は、記録と記憶を担当する。
色(モノクロも色のうち)では担えない部分。
作品の、もう一つの大事な側面である
「自分以外とのつなぎ目」
は、頭=意識...言い換えれば「言語野」の担当だ。

作品にタイトルをつける。
コンセプトを明文化する。
紹介文を書く。
口頭でお話する。
それらのための「下地を作る」「記憶とアクセスする」「言語アウトプットの方向性を決める」などが、頭=意識の領域。

キーボードという入力装置が出てきてから、この感覚が顕著になった。
なにしろ私は昭和に生まれて成人式を迎えた年代。
キー入力は、とっくに大人になってから登場したインターフェースだ。
そして、キー入力とは、右手と左手の共同作業としては非常にバランスがよい。
どちらか一方に比重が傾くことは少ない。
今も、この文章を打ち込んでいる時、右手と左手は常にバランス良くキーボード上を行き来している。
左が右にNGを出すこともなく、右が左を伺うこともない。

左右の手は。
頭=意識の引き出す記憶の貯蔵庫から、今ココに打ち込むべき単語を引き出し、文章を組み立てさせる。

時に。
本意でない言葉がのってくると。

左右の手は、頭に対してNO!を、突きつけてくる。

それは、今書きたいこととは違う。
それは、欺瞞にすぎない。
それは、単なる装飾でしかない。

そんなNOを。


タロットには、「戦車」というカードがある。
少々の心得はあるが専門家ではないので、カードの解説はWikipediaに任せるとして。
このカードに描かれている図柄は、私という人間の記号化のようだな、と感じることがある。
(単純に、「絵」から思うことで、タロットの意匠どうこうは切り離してのことだ)

頭=意識がハコの上で進行方向を見る/会う人や行く場所を決める/言語化すべき時に働く。
だが、そのハコは、白黒の二頭が協働してくれなければ、動けない。

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そんな風に思ってカードの絵を見ると、この人物は困惑しているようにも見えてくる。
頼もしい一対の戦友との道行きに、希望ある未来を思い描いているようにも見えてくる。

そう、どちらも。
私自身の、思うことだ。

前者は、数年前までの私。
後者は、今の私。

今の私は、自分が自分の手にNOと言われることも楽しんでいる。
そして、今では、私(頭=意識)が、手に対して「いや、それは今はやめておこうか」「今はこうしようか」と、対話を試みもする。
折り合いがつくことが多くなった。


これもまた、統合ステップの一つなのかもしれない。

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