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『お金の流れでわかる世界の歴史』感想

『お金の流れでわかる世界の歴史』大村大次郎/角川書店

著者は元国税調査官。現在は元国税調査官の経歴を活かした税金のことや、お金や経済の歴史についての本を書いたり、ときにはテレビなどの映像のお仕事もされている方のようですね。

この本が出版されたのは2015年。つまり最後の章は10年近く前のこと。
今の世界情勢からすると少し前のことなので、当然今の感覚とは少し違う。というか10年足らずで変わりすぎじゃないかな。いまを生きているからこそそう思うのかもしれませんが。
ただ、それくらい少し時間が経っているので、いま読むと最終章の現在の部分もすこしは客観的に見えるようになっていると思います。

この本は世界史の流れをお金で読み解く、というのがテーマです。
古代エジプトと古代ローマ、金融に強いと古くより言われるユダヤ民族、通貨を統一した始皇帝、チンギス・ハーンによるモンゴル帝国、オスマン・トルコの台頭、スペインやポルトガルによる海への進出、ヨーロッパ各国による植民地支配、エリザベス女王の海の政策、フランス革命、大英帝国、ロスチャイルド家とはなにか、明治日本の急成長、二度の大戦、そして現代へ。
そういった世界史で勉強する歴史の流れを、経済の面から書き出したのがこの本。

エジプトやローマが滅んだのは税金の政策が上手くいっていなかったからだとか、フランス革命が起こった時のフランス国王であるルイ16世は即位したとき既にフランス国家の抱える負債は膨大なもの過ぎてさすがに手の打ちようがほとんどなかったとか、そう言った観点で見たことはなかったな。

私が特に興味を惹かれたのは、ロスチャイルド家とは何か。そして第二次世界大戦前、ドイツがなぜああいう道をたどったか。

ロスチャイルド家は陰謀論が語られるときに高確率で出て来る名前ですが、そういえばそもそもどんなものか知らなかった。ロスチャイルド家が発展した経緯や往時と較べての現在の様子がどんなものかなんてまるきり知らなかった。見る限り、確かに往時のロスチャイルド家は陰謀論を囁かれるだけのことはあったでしょうが、いまもまだロスチャイルド家が陰謀論に出て来るのは正直意味が分からない。
情報がアップデートされてないままお題目のように唱え続けるからこそ「陰謀論」なんでしょうが。

ドイツがなぜああいう道をたどったか、というのは、その内容自体よりもこんなふうに論ずることができることに価値があると思いました。まぁ言いたいことはいろいろあるけれど、ここでは割愛。
ただ支持が広がった原因の一つとして、当時のドイツの経済的な問題があったというのは理解しました。そしてそれが第一次世界大戦後の賠償金などにあるということも。
勝ったからと言って相手を徹底的につぶそうとすると、窮鼠猫を噛むという状況を引き起こすのかなと思いました。何事もやりすぎは禁物……なんて簡単な言葉にまとめちゃっていいのかはわからないけれども。

他に面白かった部分と言えば。
かつてのイングランドが海賊行為を国を挙げて支援していたとか、モンゴル帝国の征服地での施策とか、東方見聞録の書かれた時代の流通のこととか、これまで点でしか知らなかったことが一つにつながったような感覚はとても面白かったです。

私は歴史を勉強したのは高校生の頃の日本史・世界史レベルで、しかもその縦糸(時の流れ)、横糸(同時代における横断的な各国の状況)がまったくぴんと来ていなかったんですよね。
大人になってからもいろいろな小説や映画、たまに読む新書などでうっすら入ってきたものはありますが、頭のなかでほとんど繋がっていなかった。
それが、お金や経済という視点からみると、全てとは言えないけれどもいくらかは繋がって見えたのがとても楽しかったです。

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