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『よちよち文藝部』感想

『よちよち文藝部』久世番子 文春文庫

『よちよち文藝部』久世番子/文春文庫(表紙画像は版元ドットコム様より)

私は書評本や本を紹介する本が好きで、これまでにも何冊か読んでいます。たぶん遡れば、中学か高校の頃の国語便覧や文学史の授業に行きつくのかな。大学のときにも教養で文学史を取りました。アメリカ現代文学でしたが、私は理系なんであくまでさらっと流した程度でしたが。
たぶん突き詰めれば小学校のときの国語の授業に行きつくんじゃないかと思います。

私は国語の授業が好きで、教科書に載っている小説部分ははたいてい一学期が終わる頃までに、遅くても二学期には読んでいました。
だんだんと一年の早い時期に読むのがもったいなくなってきて、小学校の後半にはわざと授業でとりあげるまで読まなかったりもしたんですが、授業でそのお話に入ったらすぐに、授業そっちのけで教科書を読んでいました。
家に本があるのが当たり前の環境だったんですよね。とはいえ、親はそこまで読書はしなかったな。ただ本があるのが当たり前の環境だったし、親は本なら割と次から次に買ってくれました。
教科書を読むのもたぶんその延長なんでしょうね。そして、文学史の授業で古今東西のいろんな名作のあらすじや一節を読むのも好きでした。

たぶん、いま書評本や本を紹介する本が好きなのもその延長だと思うのです。

『よちよち文藝部』はまさに、古今東西の名作ってこんなお話だよ面白いよ、ということを言っている本です。

もともとはハードカバーで、日本文學篇と世界文學篇に別れていたのですが、私は世界文學篇は買っていたけれどその前に出ていた日本文學篇には、本の存在自体に気づいていなかったのです。
慌てて探しても見つからず、でも見つけたら絶対買うんだ、と思っていたら、その前に両方をまとめた文庫本が出たのでこれ幸いと買いました。

取り上げられているのは以下のとおり。

「日本文學篇」
太宰治/夏目漱石/中原中也/志賀直哉/芥川龍之介/中島敦/樋口一葉/梶井基次郎/森鴎外/宮沢賢治/三島由紀夫/川端康成/石川啄木/谷崎潤一郎/菊池寛
そして合間合間に、他の作家をまとめて紹介するようなコーナーがあったりします。

「世界文學篇」
アレクサンドル・デュマ/ヘルマン・ヘッセ/フランツ・カフカ/ウィリアム・シェイクスピア/フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー/オノレ・ド・バルザック/アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ/ミゲル・デ・セルバンテス/ジェイン・オースティン/魯迅/ダンテ・アリギエーリ/ジョン・スタインベック/亀山郁夫/マーガレット・ミッチェル/ガブリエル・ガルシア=マルケス
亀山郁夫さんはロシア語の翻訳社さんですね。

日本文學篇は主に作者自身を、世界文學篇は人となりにも触れますが主に代表作を取り上げている感じです。

こうやって並べられると、私は本を読んでいないんだなぁ……とちょっと遠い目になりますね。本が好きとか言ってていいんだろうか、と本気で考えさせられるレベルで、これら古今東西の名作を読んでいない。
読んでいないのですが、この本で興味をそそられた本はたくさんあるので、徐々に読んでいきたいところ。

だがしかし、私がこの中で一番テンションが上がったのは、世界文學篇の翻訳者・亀山郁夫さんを取り上げた回です。

外国語が壊滅的な私にとっては、翻訳者さんってすごく大事です。
まだ学生の頃、初めてアガサ・クリスティに手を伸ばしたとき、読みづらくて読みづらくてしかたがなかった。いま考えたら、それは訳者さんが合わなかったんだなとわかりますが、当時は、私は翻訳本自体が合わないんだなとしばらくは翻訳本を敬遠していました。

転機はそれから少し経ってから。その頃読んでいたマンガの作者さんが好きなミステリを紹介するときに、本のタイトル・作者と並べて〇〇さんの翻訳がいいんですよね、ということを書いていらっしゃったんです。
私自身は、そんなに翻訳者さんで変わるものなのか?と少し懐疑的に考えていたんですけども。
けれど、ある日、たまたま本屋で見つけた別の出版社の別の翻訳者さんのアガサ・クリスティはするすると読めてびっくりしたのを、今もはっきり覚えています。

今では、本の翻訳者さんにしろ映画の字幕にしろ、好きな方が大体固まってきました。特に本を買うときには「この訳者さんが手掛けた本なら間違いない」という感じで買うことも増えています。

そんなふうに私にとっては、本を読むうえで翻訳というものはとても大きなウエイトを占めているので、実際に翻訳をされている方について取り上げた回は読んでいてとても面白かったし、うんうん、と頷くこともとても多かった。
こういうふうに本を紹介するような本はたくさんありますが、翻訳者さんを取り上げた本はあまりないですし。

閑話休題。
『よちよち文藝部』は作者の久世番子さんの番子節とでもいうんでしょうか。固っくるしいお話についても番子節で描かれているので、それまでとっつきにくくて苦手意識を持っていたようなお話も、肩肘張らずにするっと読めるような感じがします。
もしかしたらガルシア=マルケスの「百年と孤独」も読めてしまうのでは……?と思ってしまうくらい。
出もさすがにそれはまだまだハードルが高いので、まずは「嵐が丘」とか「高慢と偏見」を読んでみようと思っています。
そうして「高慢と偏見とゾンビ」を見るんだ。

……と思ったのですが、『よちよち文藝部 世界文學篇』は2019年12月に出版されているんですね。そうしてふと自分の記事を遡ってみたら、ありましたよ二年前に『よちよち文藝部 世界文學篇』の感想が。
見てみたら今と同じこと書いてるやないですか。
つまりこの二年、私はまったく成長していないし読みたいと言いつつその辺の本は読んでいないと。
なんかもう自分が残念で仕方がないですね。
でも今度こそ取り上げられている本を読むんだから!

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