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『馴染み知らずの物語』感想

『馴染み知らずの物語』滝沢カレン/ハヤカワ新書

「世界の名作のタイトルと少しのヒントを元に、滝沢カレンさんが独自の物語をつづっています。」(本書8Pより)

滝沢カレンという方を知ったのはいつか見たテレビ番組です。不思議ちゃんだなぁ、とたぶん多くの方が思うようなことを思いましたが、何度か見ていくうちに彼女の独特の言葉の使い方についつい引き込まれていきました。
そしてある日出会ったのが、彼女が書いたから揚げのレシピ。いろんなところで取り上げられたのでご存じの方もいらっしゃると思います。

以下、彼女のから揚げのレシピからの引用です。

まず、透明度まではいかないがスーパーでよく見かけるしもらうビニール袋を二重にします(豪快な方はジップロックなど)。
そこに冷たいなにも知らない鶏肉を入れてあげます。
やれやれとボッタリくつろぐ鶏肉に、上からいくつかかけ流していきます。
まずリーダーとして先に流れるのは、おしょうゆを全員に気づかれるくらいの量、お酒も同じく全員気づく量、乾燥しきった粒に見える鶏ガラスープの素を、こんな量で味するか?との程度にふります。

レシピとしてだけでなくもう読み物として面白い!

そんな彼女の書いた馴染み知らずの物語。
目次を見ると、そこには確かに見知ったタイトルがずらりと並んでいます。

九月が永遠に続けば
妻が椎茸だったころ
変身
うろんな客
ザリガニの鳴くところ
あしながおじさん
若きウェルテルの悩み
号泣する準備はできていた
バナナフィッシュにうってつけの陽
みだれ髪
蟹工船
屋根裏の散歩者
薬指の標本
わたしを離さないで
生きてるだけで、愛。

この中で読んだことがあるのは二、三冊しかないのが残念。だがしかし、滝沢カレンさんがどんな文章を紡いでいるのか、どんなお話が描かれているのか、楽しみにページをめくりましたが、本っ当にもうすごかった!
滝沢カレン天才か!?
いわゆる上手い文章というのとは少し違うのですが、独特の言語センスや発想力に目が点です。
このタイトルからこんな話がよく出てくるな!とびっくりするようなお話、正直引くわー……と思うような背筋のぞっとするお話、もらい泣きしてしまいそうなほっこりとするお話など、本当に種々様々なお話たち。

実はこの本は、病院の長い待ち時間のために積ん読の山から引っ張り出してきた本なのですが、何でこれまで読んでなかったんだ?と自分を問い詰めたいくらい。
あのとき彼女に引き込まれたのは必然だったな、とつくづく思うのです。
滝沢カレンさんにはまた本を出してほしいな。
ブログやWEBでの連載も良いけれど、紙の本で読みたいなあと強く思った本でした。

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