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『世界のVIPが指名する 執事の手帳・ノート術』感想

『世界のVIPが指名する 執事の手帳・ノート術』新井直之/文響社

数か月前……いや、見栄を張りました、たぶん一年くらい前にノート術の本にいろいろ手を出しかけてやめて出しかけてやめてを繰り返していたときからの積読本をようやく。
ノート術というのもありますが、執事のノート術ってだけでものすごくテンションが上がりました。執事いいよね執事。

著者の新井直之さんは日本バトラー&コンシェルジュ株式会社の代表取締役社長。バトラーサーヴィス、コンシェルジュサーヴィス、ハウスメイドサーヴィスが主な事業のようです。
新井さん自身も執事としてさまざまなご主人様にお仕えした経験がおありのようですが、この本を読む限り、雇用形態は長期間一人の方に、もしくは一家族にというわけではなくスポット契約が基本のようですね。

私は執事が身近にいるような環境ではないので、執事と言われて思い浮かぶのはこれまで読んだ本や観た映画などで見るような方々です。
そんな私から見た執事とは、ご主人様が仕事をしやすい環境を整え、陰になり日向になりご主人様を支える方。単なる部下ではなく、ご主人様と二人三脚をすることもあり、ときにご主人様に助言もする方。
どれだけ有能な方でも執事に恵まれなければその力を十二分に発揮することは難しいだろうし、逆に有能な執事に支えられたご主人様であれば自らの持つ力以上のものを発揮することすらあるような、そんなイメージ。
あくまでフィクションの執事のキャラクターを見て、読んで思ったイメージなのでこれが正しいかどうかはわかりませんが、私の中ではそういうイメージです。

執事に対して偏っているかもしれないそんなイメージを持っている私がこの本を読んで思ったのは、やはり執事ってすごいということ。
少なくともこの本を読む限り、私の中にあった執事のイメージは少しも損なわれることなく、そのすごさを垣間見ることができた気がしました。

日本バトラー&コンシェルジュ株式会社の業務内容を見る限り、新井さんの提供する執事の業務は一時的なもの。
専属契約を結び、何年にもわたってひとりのご主人様にお仕えするというものではなく、短期間(短いものだと数日間、長いものでもおそらくは一年以内くらいかとお見受けします)の契約のよう。
もちろん満足なさったら何度も契約することになるのでしょうが、社員であるバトラーの方がお一人の方にずっとお仕えするような感じではないようです。
でも考えてみればそれは当然。
専属契約を結ぶのであれば、会社に属するのではなく直接ご主人様と雇用契約を結ぶことになるでしょうから、そう言った場合は社員ではなくなってしまうだろうし。

ともかく、新井さんの会社ではそういうバトラーサービスを行っているので、仕事の内容はとてもシビア。
専属契約でずっとお仕えすることとなれば、ご主人様も執事の方も、互いの気質を飲み込んでいるでしょうから、仕事についての互いの認識に少々齟齬があったとしても擦り合わせていくことは可能です。
ですが短期間のサービスであれば、ほんの少しの齟齬が致命的なものになりかねない。
つまり、ほんの少し意思疎通がうまくいかなかったら。そして契約期間が短いゆえにその齟齬をちゃんと擦り合わせることができなかったら、ご主人様の仕事が失敗するかもしれない、失敗までは行かなくても不快な思いをされるかもしれない、そしてもう次の契約はしてもらえないかもしれない。

なので最初の打合せの時点から、どんなふうに先方の希望を聞き出すか、どのような人を手配するか、他にどんな準備が必要か、他にもいろいろと気を配らないといけないことがたくさんあります。
そしてそれらをどのようにメモを取るか、どのようにメモをまとめるか、そういったノウハウをまとめたのがこのノート術の本なのです。

正直、これまで読んだノート術の本の中でこの本が一番腹落ちしました。
ノートを取るときには最初から、つまり打合せを行う前から目的意識をもち、打合せの際にその意識を先方と共有し、また打合せ後にはなるべく早くそのメモを簡潔にまとめ、今後の起こすべきアクションを洗い出し、スケジューリングをする。
それらを一連の動作として行っていれば、時間が足りなくなるとかギリギリになってから取り掛かるということもなくなり、いいことずくめ。

もちろん、いきなり何もかもそんなふうに上手く回り始めることはないでしょう。
ですが、漫然とノートを取ったり、メモしたこと綺麗に清書することに腐心するよりも、新井さんの言うように打合せの前から具体的な目的意識をもって臨んだほうがスムーズに進むし、先方にも安心感を与えることができるのは確かだと思います。

特に私はまさに「漫然とメモを取る」タイプ。
だからノートを駆使する技術より、まず打合せにおいて具体的な目的意識をもって臨むということをきちんと言語化して説明してくれているのがとてもありがたかったです。
なぜそうするのか、具体的にどのようにしたらいいのか、という新井さんのノウハウを新井さんの言葉で説明してくれていて、とてもわかりやすかった。

この本を読んで新井さんご自身のことのみならず、日本バトラー&コンシェルジュサービス自体にも興味が湧いてきました。
他の著作もあるとのことなので、今後はそれらも読めるだけ読んでしまおうと思っています。

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