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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想

『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上・下』アンディ・ウィアー 訳:小野田和子 早川書房 2022/11/25読了

『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上・下』
アンディ・ウィアー/訳:小野田和子/早川書房
(表紙画像は版元ドットコム様より)

アンディ・ウィアーは映画『オデッセイ』の原作『火星の人』の著者。
『火星の人』は絶望的な状況でもへこたれずにじゃがいもを育てていて、むしろ美味しそうじゃがいも食べたい!てなる楽しいお話でした。
あのどんな状況でもポジティブな世界が大好きで、他のお話も読みたいと思っていましたが、第二作の『アルテミス』にはなかなかたどり着けず。
結局『アルテミス』を読む前に第三作である『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が出てしまったのですが、これがびっくりするほどたくさんの感想が流れてきました。そしてそのほとんどすべてが「面白いけど絶対にネタバレはかけらも見ずに読んでほしい、だからここでもネタバレはしないけどとにかく面白かった」というもの。

そんなことを言われたら気になっちゃうじゃないですか。
そうして読んだ『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ですが、めちゃくちゃ面白かった!!!
あの数々の感想とお勧めの意味が分かりました。
できればまだ読んでいない方はこの感想すらも読まずに読んでほしい。めちゃくちゃ面白いのは保証します!

ということで、ここから先には少しだけネタバレもあります。

いろいろとすごいことはありますが、やっぱり何が一番すごいって、このお話も『火星の人』もそうですが荒唐無稽なお話というわけではないんですよね。
出てくる理論やいろんなものが既知のものばかりで、だから私の住んでいるこの世界と地続きという感じ。SFなのに地続き。

実際にはこのお話には、いまここには存在していないキセノナイトという物質は出てきますが、その成分はおそらくは既知のもの。既知でない部分はあったとしてもほんのわずか。
登場人物の一部もアンディ・ウィアーの想像にすぎない存在がいますが、それにしても、いてもおかしくないなと納得し得る理論がきちんと用意されている。
なのでたとえばグレース博士の周りのあれこれもごく容易に想像できてしまうんです。

『火星の人』のときには私だったらどうするか、ということをとても考えました。
もちろん主人公のような科学的知識を私は持っていません。でも、もし持っていたらどうするかということを知識のない私が考えられるくらいに、私のいる世界と地続きだった。
今回の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も同じように、私がグレース博士と同じような知識を持っていたら、つまり私がその立場だったらどうするかと考えられるくらいにこの世界と地続きのお話です。

だからこそ、どんな状況に陥ってもポジティブな考え方で、時には歌など歌いながら立ち向かっていく彼らに共感できるし、彼らの決断を指示できる。

このお話の最後は、私はそんなふうになるなんて最後のパートに入るまでまったく考えていなかった。
途中でそうなることが言葉の端々から示されているのに、それでもそうは思っていなかった。
きっと想像したとおりの大団円なんだろうと思っていました。
もちろんこれも大団円のひとつではあるけれど。
でも、その道を選んだグレース博士の考え方はとてもよくわかる。私だったらそうはできなかったかもしれない。でも、よくわかる。そして彼らを心の底から応援したいし、彼らの未来はとても明るいんだと信じられるのです。

アンディ・ウィアーの作品の魅力は、とてもポジティブだということ。だけどそれは無理にポジティブにしているのではなく、理論に裏打ちされているポジティブさ。
そしてどんな状況でも現状を楽しむタフさ。
読んでいるこちらまで彼らのポジティブさとタフさに自然と感化されるというのかな。
読み終わったときには、私も前を向いて頑張ろうって気持ちになっているんですよね。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は映画化も決まっているそうですね。そちらも楽しみ。
そしてまだ読み損ねている『アルテミス』も早く読みたいと思います。

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