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『どこまでも食いついて』ワニ町シリーズ5 感想

『どこまでも食いついて』ワニ町シリーズ5 ジャナ・デリオン 東京創元社 2022/11/26読了

『どこまでも食いついて』ジャナ・デリオン/東京創元社
(表紙画像は版元ドットコム様より)

楽しみにしていたワニ町シリーズ最新刊の第5弾。

フォーチュンは保安官助手のカーターとついにデートに出かけたが、その翌日、カーターから保安官事務所へSOSが入った。しかも銃声まで聞こえたような気がすると知らされる。フォーチュンはカーターを間一髪で救出するが、彼はそのまま入院することに。しかもカーターはさらに狙われて……。

現役CIAのスパイ・フォーチュンはとあるミッションで「ちょっとばかり」やりすぎたことから、敵対する犯罪者から賞金を懸けられ、身の安全のために身元を偽り退屈なだけでワニ以外には何もない町シンフルで暮らすことに。
しかし何もないはずのその町で、コナン君の住む米花町もかくやという勢いで事件が起こり始めます。
フォーチュンはシンフルの有名人である老婦人アイダ・ベルと彼女の親友ガーティとともに事件を解決しますが、アイダ・ベルとガーティはフォーチュン以上に場を掻き回す才能に満ち溢れていて、静かなはずの町は大騒ぎ。
というシリーズの第5弾。

冷酷なスパイであったはずのフォーチュンは、シンフルで初めての親友ができ、初めてのボーイフレンド候補とも出会い、少しずつ変わっていきます。まるで普通の女の子みたいに。アイダ・ベルとガーティは、フォーチュンをいろいろと焚きつけつつも微笑ましく見守り、ようやくカーターとデートにこぎつけたのに、さっそくまたも事件が起きたわけですね。

今回もまた、アイダ・ベルとガーティが大活躍。というか、要はびっくりするほどいろんなことを引っ掻き回します。フォーチュンはというとカーターの事件のためにいつも以上に頭に血がのぼっているし、三人をことあるごとに止めに入っていたカーターは入院しているしでさぞかしものすごいことになるだろうと思っていましたが予想の範囲内だった。
というか、最初の本からしっちゃかめっちゃかに掻き回し続けているので、予想の範囲内というのがたぶん相当広がってて基準がおかしくなってるんだと思う。
よくよく考えたら、今回のガーティはいつもよりすごいんだもの。
そんなふうにしっちゃかめっちゃかでいながら、ミステリとして押さえるべきポイントはしっかりと押さえているお話。
お話にスピード感がありすぎていろいろと見逃してしまっていますが。
そして今回はそればかりではなく、ロマンスもしっかり散りばめられているんですよね。フォーチュンとカーターの遣り取りににやにやしちゃった。

今回のお話は、もうちょっと話が大きく広がって行くかと思いましたが、意外にもそうではなかったな。
でもフォーチュンは、本当はひと夏ほどで片がつく、と言われてシンフルに来たわけだし、シンフルに来た経緯からするとそんなに長いこといられるわけではないし、この先どうなるのかな。
と、そろそろ心配になってきました。
たぶんフォーチュンがシンフルに来てから一か月くらいかな? ゆっくりとはいえ時間は進んでいるわけで、フォーチュンだっていつまでも他人の名前を借りているわけにもいかないわけで、この先このシリーズはどう進むのか。親友たちと彼氏のできたフォーチュンは、果たしてこの先どうなるのか、どうしても気になってしまいます。
どうやって決着をつけるつもりなのかと心配する気持ちと、でもこの疾走感のあるシリーズが長くつづいてほしいという気持ちとのせめぎ合い。

でもとりあえずは、次の巻が早く出てくれないかな、そしてこのシリーズによく顔を出すバナナプディングのレシピもどこかに出してくれないかな、と心待ちにしています。

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