武藤弘樹

WATER KIN

武藤弘樹

WATER KIN

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楽園たち

 例えば、人生をかけて目指している山頂があるとするのなら、それは私にとってはおおよそ偽物です。登っているその動作こそが生き甲斐であり、てっぺんなどそもそもあってもなくても良いのです。しかし、なぜかよくそのことを忘れて、代わりに「生きる意味」「夢」などと書かれていそうな幻のゴールテープを生み出してしまいます。信用もしてしまうのです。すると幸せは、目の前をいとも簡単に通り過ぎていってしまいます。  分かりやすいのが曲作りです。曲作りは基本的に完成をさせることが一つの目標になりま

    •  この曲の主人公が死を迎えるときには、悲しむ人がきっといます。たとえどんなに彼の性格が大勢には好かれないものだとしても、別れを惜しむ人はいるはずです。そして、そこにあるのは沈み切った感情だけではありません。伝えきれなかった膨大な感謝もあるはずです。要するに、誰かひとりにでも優しくなれたのなら、感謝されることが喜ばしいことであるのなら、人生は部分的だとしてもハッピーエンドみたいなものだということです。でも、そんなんじゃ満足できない!と思いたい自分は、ハッピーエンドの質を、もしく

      • 孤独に花束

         この曲を作り始めたのは2021年の春頃。前作の「ドリンク」ほどではないですが、この曲もトータルとしての制作期間は長いものでした。  着想は歌詞からではなく、Ⅳ→Ⅳm(曲冒頭のような雰囲気)のコード進行を多用したゆったりとした曲を作りたいなというところからになります。最初はテーマを決めず、感覚的に組み立て始めましたが、早い段階でメロディーと共に、冒頭の「浅瀬の舟」、そしてサビの「孤独に花束」辺りのフレーズが浮かんだので、すぐに諸々をしっかりと固めていくことになりました。  作

        • ドリンク

           この曲は、「過去」をテーマに作りました。過去に囚われず、歌い踊るように今を生きたいだけなのに、それが出来ない一人の人間。まるで忘れられない過去の中にいて、今を生きることができていないかのような、そんな有様を描きました。  過去の中で生きること自体が悪いことだとは思いません。けれども、例えば、目の前に輝いているものがあるとき、今の自分を真っ直ぐ見てくれている人がいるときに、過去が邪魔をして言動が歪んでしまうのなら、それは寂しいことだなと感じます。  WATER KINの最初の