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孤独に花束

 この曲を作り始めたのは2021年の春頃。前作の「ドリンク」ほどではないですが、この曲もトータルとしての制作期間は長いものでした。
 着想は歌詞からではなく、Ⅳ→Ⅳm(曲冒頭のような雰囲気)のコード進行を多用したゆったりとした曲を作りたいなというところからになります。最初はテーマを決めず、感覚的に組み立て始めましたが、早い段階でメロディーと共に、冒頭の「浅瀬の舟」、そしてサビの「孤独に花束」辺りのフレーズが浮かんだので、すぐに諸々をしっかりと固めていくことになりました。
 作り始めた当時はコロナ禍真っ只中、そして引っ越して間もない頃だったので、「孤独」という言葉は、いつもより近しい存在でした。純粋に書きたいと思ったので、そのままテーマは「孤独」に決定します。今回のように、テーマに対して明確な感情がある場合は、まずはそのときのストレートな気持ちを書き出していくことがよくあります。メロディー、音節数などを意識して最初から書き出す言葉もありますし、何も考えずに書き出すものもあります。そうやって今回も書き出していくと、これを歌詞として整理していくだけでは、この曲のイメージにそぐわないほどに重たくなると感じ、何か生々しさを和らげるような、非現実を感じられるような要素を足していけないかと考え始めます。
 その要素を形作るきっかけになったのが、既に歌詞の候補にあった「舟」でした。ここから短絡的にジブリ映画の「崖の上のポニョ」のポンポン船のシーンが、頭の中に浮かぶようになります。この「舟」という漢字の正しいイメージとはおそらく異なるので、最初は「崖の上のポニョ」を曲に結びつけるつもりはなかったのですが、考えは変わっていきます。端的にいうと映画に描かれている童心を憧れの対象として曲に結び付けていこうと考え始めます。映画の話に触れてしまいますが、自分には町をあのような惨状にしてまで、誰かに会いにいく度胸がないのです。悪く言えば盲目的ですし、そもそも内容がどえらいものですが、悪い方向に気を遣いすぎたり、推しはかりすぎたりしていることがよくある自分にとっては、あの行動をとれることが羨ましいとすら感じます。つまるところ、ポニョは自分にとっては膨れ上がった憧れ(大冒険)のようなもので、その位置づけなら歌詞に織り交ぜていくことが出来る、そうすれば自分の求めているニュアンスを表現していけるのではという考えに至ります。歌詞の長さ的にも少しのテイストではありますが、結果的に自分の中で整理がついたので、ポニョご協力のもとで、この曲を完成させていくことに決定しました。
 アレンジの面でもポニョに力を借りました。2番へと向かう場面は、一度海に沈む感覚が欲しく、その海のイメージは、ポニョのサウンドトラックの一曲である「深海牧場」を聴きながら作っていきました。「孤独に花束」にはどこまでの壮大さ、神秘さが合うのか悩みはしましたが、最終的には頭の中で鳴っていたものを表現できたのではないかなと思っています。
 自分としては今回のアレンジの肉付けのハードルは高く、曲の一部に関しては、作っては壊してを何度も繰り返しました。作り始めた頃は明らかにこの曲を作り上げる実力がなかったので、完成させられるのか少し不安になった時期もありました。でも、こうやってハードモードを進んでいるのは、大抵自分の意思です。いつになっても自分にとって音楽は、ただの遊びの延長線上のようなもので、きっとただの冒険です。この曲に限った話ではないですが、聴き手には曲作りに対しての純真な気持ちが、伝わっていればいいなと思っています。

[歌詞]
浅瀬の舟
心許して小さな旅誘いたいや
いつまでも虚弱な信頼
解毒されすぎた回答が
楽しさに纏う不安となるんだ
伝えられないや
あなたの時間無駄にしていいかって

気を遣うことに
疲れるたびに
孤独に花束を買ってあげて
幸せ呟いてる
だけどまた拗らせていく
蝋燭に花束
音を立てあなたのもとへ

忘れた頃
町が海になっても会いにいきたいと
言葉はテトリスのように
重いものは童話にするんだ

楽しさに纏う不安を隠して
置いていかないでと笑おうか
つづくを目指して
ゆらゆら長い旅

気を遣うことに
疲れるたびに
孤独に花束を買ってあげて
幸せ呟いてる
だけどまた拗らせていく
蝋燭に花束

気を遣うことに
疲れるたびに
孤独に花束を買ってあげて
幸せ呟いてる
だけどまた拗らせていく
姑息に花束で埋め合わせているだけだから


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