祝

　この曲の主人公が死を迎えるときには、悲しむ人がきっといます。たとえどんなに彼の性格が大勢には好かれないものだとしても、別れを惜しむ人はいるはずです。そして、そこにあるのは沈み切った感情だけではありません。伝えきれなかった膨大な感謝もあるはずです。要するに、誰かひとりにでも優しくなれたのなら、感謝されることが喜ばしいことであるのなら、人生は部分的だとしてもハッピーエンドみたいなものだということです。でも、そんなんじゃ満足できない！と思いたい自分は、ハッピーエンドの質を、もしくはそこへと向かう道の質を、曖昧なまま日々探し求めている気がします。

　この曲は、WATER KINの5枚目に出したシングル「感情なんか独学」を別目線から描こうというところから始まります。主人公の人物像が、頭のねじが数本なさそうな、ダークヒーローのようなものだったので、曲調としてはマイナーベースで破茶滅茶なものを目指します。加えて、なんやかんや救出劇みたいな曲の予定だったので、部分的にドラマチックにしたいとも考えます。他にも、展開がありつつも基本的にはずっとギアをあげていくようなイメージや、情景というより映像作品が見えてくるようなイメージなど、この曲には多くのイメージが最初からありました。そのため制作の前半はスムーズに進み、2番サビ終わりまでの骨組みとおおまかなアレンジは、数時間でまとまりました。ただ、それ以降に関してはそれなりに時間を要することになります。
　2番サビあとの間奏は勢い任せではなく、秩序を立てて練り上げました。特にギターソロは、あのコードチェンジの速さに合わせて良いものをアドリブで弾ける気がしなかったため、ちまちまと事前にメロディーラインを考え、練習したのちにレコーディングをしました。いつかはこんな目まぐるしい展開の中でも、厳ついソロを即興で弾けるようになりたいものです。
　最後のサビは、ポップスで聴き馴染みの強いコード進行に近づけ、感情の昂りを伝えられるドラマチックな展開を目指しました。アクション映画の終盤のような雰囲気を作り出すことがひとつの理想だったので、破茶滅茶具合が残るようにも調整していきます。そしてエンディング、結末は、映画らしさを出すためにしっかりと描くか一瞬迷ったのですが、この曲において大事なのは結末ではなかったため、明確には示さず、不時着のような形で終わらせることにしました。

　自分はこの主人公と同じ、どこまでも人間であって動物で、日々、感情や本能に揺さぶられています。どこまでも夢を見て、幸せを求めてしまいます。
　幸せになりたいと思うことは、何一つとして間違っていないと思いますが、人生に「幸せにならなきゃいけない」というルールは別にありません。今目指していることが、進むべき道が、まるで絶対的で逆らえないものだと思い込んでしまうが故に、苦しくなったり、にっちもさっちもいかなくなったりするわけです。自分で勝手に作ったルール、人様に関係のないルールなら、たまには縛られず破ってみるのもいいのかもしれません。良い意味で結末はたいして変わりません。楽観的になれなくても、楽観的になろうとする日々です。

[歌詞]
煤だらけのパンケーキ持って
待ち望んだ日に向かう道中
大遅刻は風の吹く方
はぁ目が眩んでいる
数日に一度くらい
運命の出逢いがあれば良いのにな
大事なものは大切に
はぁ目が眩んでいる

化けてあんたを救ってやる
「何で？」とかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
フィナーレの笑顔も寄越せ今に
あんたを救ってやる
ランデブーとかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
光れ　うまくいけ　膨らむくらい

ショートケーキロングバー
祀られるボンクラ
心からコングラッチュレーションズ
あのどうぞソングフォーミー
褒めてくれて嬉しい
眩しい愛しいたらればに喰われて
真っ暗だぜ　お揃いだ　いいね
生きてきた分燃え上がるぜファイヤー
目論見を立てただけの人生
甘くて酔っちゃうや

化けてあんたを救ってやる
「何で？」とかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
引っ張って緊張感ヨボヨボだけど
あんたを救ってやる
ランデブーとかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
光れ　うまくいけ　泣き出すくらい

Give me iron
To surpass Iron Man and The Lion King
夢追い人はふりで
数年後はバブリー
空腹に朝食に　朝食に
開かないエレベーター
教えてターミネーター

化けてあんたを救ってやる
「何で？」とかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
フィナーレの笑顔も寄越せ今に
あんたを救ってやる
ランデブーとかねじ伏せて
欲はシンバル　シンバル
ああ辛いよな
化けてあんたを救ってやる
人生など切り分けて
鳴らせシンバル　シンバル
目の前に食らいついてクライマックスバババ
今日だけ救ってやるんだ　何度だって
欲はシンバル　シンバル
光れ　うまくいけ　弾けるくらい