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「生」の距離。

未だに関わりの薄い人が急にマスク外すと、ぬ〜べ〜の口裂け女か、プレデターの本当の口を見たときくらいビクッってなります。きっと今年生まれた子や小さい子供たちは素顔の感覚が違いそうですよね。

確か幼稚園の時、地元の公民館になんかの女性歌手が来て家族で見に行って、最前列にいたもんだから、「お子さんも来てくださっています」みたいな感じで前においで〜と促されたが、シャイだった自分はモジモジしていると、代わりに兄が前に出てくれて、しっかり握手して戻ってきて、その兄から、香水か化粧品かのとんでもない派手な香りがして、あのおばさんはこんな匂いなんだと、遠く感じたステージと客席の距離をなくした。兄貴はその距離を横断したんだなと感じてリスペクトだった。

小学2年の夏だったか、家族で北海道に旅行に行った。深夜に岩手からフェリーで北海道に渡るやつで、安いプランだったから広間に数組のご家族が居て雑魚寝するタイプでの移動だった。
どうせならフェリーを探検しようと家族で船内をぐるぐるした。最後、デッキに出れることに気づいた父親がデッキに連れてってくれて、甲板に出た。
夏だけど風は寒くて強くて、海の近くで育ったけど、夜の海を横断して360度漆黒がうねり続けるのは無限を感じるようで、ドキドキした。海を覗くと甲板から海までの高さが思った以上にあって、こんな大きな乗り物があるんだって腰が引けた。

そんな北海道、目的地をほぼほぼ行き尽くして、何をしようかという時、母親がお笑いを見よう!と札幌の吉本のライブに連れてってくれた。
テレビッ子だったし、オンバトとかボキャブラとか見てる家族だったけど、その日に出演してる方は皆知らない方だった。お名前も忘れちゃったけど、客に子供が多かったらしくて、「お子さん多いみたいなんで童謡のネタします!」って宣言して漫才を始めた方がいた。めちゃめちゃ面白かった。多分目があった気もした。ライブあるあるを小2で体験した。レスくれた!って思った。学校ではそのネタバージョンで歌いまくった。今でもそのネタは覚えていて、その童謡を聞く度に思い出す。でもコンビ名を忘れてしまった、、、。

初めて自分で映画館で映画見ようって決めて観た映画は「グリーンマイル」。確か小6。大人っぽい映画知ってるとイケてるみたいなノリで男友達と4人で行った。思ってたより怖い、気まずい描写が多かったけど、暗室で爆音で大画面でみんな沈黙で、拒否することもできなくて、集中せざるを得なくて、しっかり自分に入ってきた。映画館は映画を見るための部屋なんだなってガキなりに思った。

中学1年の時に携帯電話を持つようになった。学年では数人しか持っていないけど持ってるとイケてるみたいな理由で親にねだって買ってもらった。
家にいるのに四六時中携帯をいじって友達だったり意中の子とメールをしてアジカンよろしく、「Re:Re:」がタイトル欄を埋めてた。でも学校では手紙が流行ってて、好きな子から貰った長方形の角が折れる形のやつとか、イチゴに折られてるカラフルな丸文字で書かれた手書きの手紙は大事に取っといてた。自分も無骨にそうやって折って返事を書いてた。それが当時の中学生の距離感、親交の深め方だった。でも好きな子と電話したくても、携帯で電話すると電話代がかさむから、結局は家電から家電にお互いの両親に見守られながら長電話した。(あー甘酸っぱい。)

高校時代はバスケに打ち込んだ。
走って打って鍛えての繰り返し、汗かいて息切らしてバッシュもジャージもグシャグシャで毎日帰った。弱小校だったけど、3年最後の年、チームプレイでどうにか県大会にいけた。県大会出場が決まった時、自分はベンチにいて晴子さんよろしく号泣した。女バスの後輩の子に慰められた。皆んなで喜んだ。
県大会はザ・ボロくそ、に負けた。自分はベンチスタートで途中で一瞬出たけど、マークマンがボールを持ったら消えた。振り返ったら抜かれてシュートされてた。リバウンドしようとしてもできなかった。「あんた気功でも使ってんの!?」ってくらいビクともしなくてポジションを取れなかった。同い年とは思えなかった。

これらはふと思い出した、「生」の体験で覚えた、感じた思い出たちです。

世代や生きてきた環境でこの「生」の感覚は違うけど、

皆「生」の体験ができなくても、科学の発達すらその一部として新しい「生」の形を作りだそうとしている今。zoomや配信、サブスク、SNS、VRで旅行、擬似美術鑑賞。どれも距離があったり間に何かを挟んでても、今の「生」になりつつあると思いながら、

直に、素肌に、何も介さず、その音を、声を、その場所を、空気を、匂いを、その筆の跡を、

体感したいなと思ってる自分がまだいます。

だけど最近iPadで絵を描いていて、とてもしっくりきています。iPadなりの自分の手法を見つけた感じ。鉛筆やペン、絵の具やスプレーの匂いもしないし、汚れもしないし、筆圧も全然違うし、乗せ方が違うけど、これはこれとして、自分の「生」が出るんだろうなと思いながら、
また画面に向かおうじゃないか。

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