十牛図風エッセイ(5/10)~牧牛
十牛図風エッセイの第5回目。どんなに頑張ってもうまくいかないことはよくあること。悩む自分とどう折り合いをつけるか?ということについて書きます。
≪バックナンバー≫
五、牧牛について
これまで牛(≒ほんとうの自分)を見つけることを決意し(一、尋牛)、牛を見つけるためには正しい教え(跡)をたどることだと知り(二、見跡)、内面を見つめることで牛を見るきっかけを得て(三、見牛)、自分を律して牛を得ること(四、得牛)を牧人は学びました。大分自分というものがわかってきましたが、まだ悩みが残り、牛がいなくなるのを恐れて手綱を握ったままです。この絵は悩みを抱えた牧人の心情を表しています。
ふりかえり(どう自分とおりあいをつけるか)
うまくいかなかったとき、あの時あーしとけばよかったとか、あいつはうまくやってるけどどうして自分は駄目なんだとか、また失敗するんじゃないかとか悩むことはよくあります。なぜ悩むのか、どうすれば悩みを払拭し、自分とおりあいをつけられるのか?ということについてふりかえってみたいと思います。
なぜ悩むのか
自分の心の中で何が起きているかというと、比較が発生しているのです。
あのときこうすればよかった⇒過去の自分と今の自分を比較
あいつと比べて自分は駄目だ⇒他者と今の自分を比較
また失敗するんじゃないか⇒将来の自分と今の自分を比較
悩みの原因は比較にあるといえます。(実際の悩みはそんなに単純じゃない!ってツッコミもあるかと思いますが、冷静に分析するとなにかと比較して心が乱れていることがわかります)
どう悩む自分とおりあいをつけるか
比較が悩みの原因であれば「比較しなければいい」というのがシンプルな答えなのですが、普段言葉を使っているうえですでに比較(分別)は発生しているので、簡単にはできません。
ではどうすればよいのか?3つのヒントを紹介します。
因縁生起を理解すること
原因のない結果は存在しない。よい結果を得るためにはそのための原因を作る必要がありますが、原因と結果の間には縁が作用してくるので、望んだ結果が得られるとは限らない。
因縁生起は仏教哲学の基本ですが、このことを理解しておくと、望ましい結果を得るための原因をつくる努力をしたのか?と問えますし、望まぬ結果となってもそれを受け入れることができるように思います。今ここに集中すること
縁が作用してどういう結果になるかはわかりませんが、原因は作らないと結果は得られない。であればどうするのか?つきつめて考えると、とにかく今この瞬間を大事にして行動を起こし、たゆまぬ努力を続けていくしかないのだということに気づくはずです。「きっと、うまくいく」と心におまじないをかける
私の大好きなインド映画に「きっと、うまくいく」という映画があります。登場人物のランチョーが友人に、「心は臆病だから、マヒさせる必要がある。」といい、困難が発生したときは胸に手をあてて「きっと、うまくいく(Aal izz well)」と唱えます。まじないに全依存するのは問題ですが、最初の一歩をふみだすためのまじないも時には有効かと思います。
「きっと、うまくいく!」とおまじないをかけ、今やるべきことに集中し、結果に執着しないのが、自分とおりあいをつけるコツだと思います。
次回、「六、騎牛帰家」について
次回は、とうとう牛(ほんとうの自分)とつながります。つながるとはどういうことか?ということについてまとめたいと思います。
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