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高く飛ぶために身軽になる(全集中と権限移譲)

 開発組織1人目として入社から1.5年。組織は大きくなり、正社員、業務委託含めて今や17人になりました。

 本業のPMとしての仕事に加えて組織づくり、アジャイルな開発プロセスの導入、採用、DevRelなどデザインと実装以外すべてをやってきたのですが、いよいよ持って一人でマネジメントする時間的な限界に来たと感じています。

ぶっちゃけ、スキルや心のキャパシティ的にはまだまだできそうなきはしています。

ただ、この意志決定の背景は一番価値を出せる分野に費やせる時間が減っていること。
私の場合は、プロダクトマネジメント。特に中長期を見据えたビジョンとロードマップという妄想をを体現できるような現実に落とし込むこと。
その仕事でお金をもらっているという自負があるので、この時間が減るということは、価値が減っているのかもしれないなと。

実際に弊社の戦略会議で、これが課題です。と年明けに出したグラフがこちら。

戦略会議資料より

「組織を作ることだし、大事だし、成果出してるでしょ?」という声はいただくものの、ぶっちゃけ、自分よりうまくデキる人が世の中にいっぱいいる中で、それを任せることができていないのは、自分の巻き込み力がまだまだ足りないからだと思うわけです。

そこから半年、かなりアグレッシブな権限委譲を行った例を一つ、今回は自分の教訓としてまとめてみようと思います。

教訓1:「全部手放す」気持ちがちょうどいい

 まず、今回の課題は、私の時間を空けることです。このゴールが覆るとアプローチが変わってくるので、これが大事。

このゴールに向き合うと、失敗例が思い浮かびます。

[失敗例]

  • 引き継ぎに多分な時間がかかる

  • 中途半端に引き継ぎ、時間が空いてない

そこで意識したのが、最小の労力で全部渡すこと。そしてフォーカスしたのは、多くの時間を使っているEM業にしました。

1-1. 何を渡すのか

 端的に言うと抱えているEM業の全てです。
一方で、除外したのはエンジニア以外のマネジメント(デザイナー、情シス)、DevHRとDevRelです。

 というのも、最も物理的に時間を取られているのはエンジニアメンバーとのコミュニケーションでした。具体的には、週次の1on1がメンバーが増えるごとに単純に増分となっていました。

これだけ聞くと「エンジニアとのコミュニケーションをないがしろにするのか、けしからん!(怒)」という声も上がると思いますが、そういう話ではまったくないです。

大事だからこそ、止めるのではなく、引き継いで継続するのであり、私より適切で上手い人を育てて、渡すのです。

だって、自分の最も発揮できる価値はそこではないので。

1-2. 誰に渡すのか

 正直、弊社には、歴戦のEMがいるわけではありません。
 採用も試みましたが、いわゆるパラシュート人事よりも内部登用で「カルチャーマッチすればキャリアも創造できる環境である」という理想の組織へ一歩近づくチャレンジをしてみたいと思いました。

その結果、前々からEM志望だったメンバーを新米EMとして抜擢しました。

1-3. いつまでに渡すのか

 これは持論ですが、丁寧に引き継がれるより雑に引き継がれる方が良い結果を生むと思っています。

 丁寧に引き継がれると、前任者のやり方や考えをそのままトレースすることになり、余白がなく、引き継いだことでより良くなる可能性を潰してしまうことになるかなと。

 そのため、大枠やってきたことと大事にしていることのみを引き継ぎ、「あとは努力してより良くしてください。だってこの分野のプロになるのでしょ?」というスタンスだったりします。

 そうすると、すべての項目が開始から1~2週間で完了することも割とできる印象でした。

 後は単純な引き継がれる側のキャパシティの話で、1~2週間のタスクを順番に並べてい気、ムリのないペースにするだけ。

1-4. どのように渡すのか

デリゲーションボードを作りました。

デリゲーションボード

デリゲーションボードについては現カケハシCTOのゆのんさん(@yunon_phys)の資料に任せます。


教訓2:「教育のアウトソース」が時間対効果が高い

 さて、ここまでの引き継ぎで「タスクの引き継ぎ」はできました。
ただ、多くの引き継ぎで起こるのがマインドセットとスキルセットのインストールをどう進めるかかなと思います。

ぶっちゃけ、これがなきゃみんな簡単に引き継ぎができるわけです。

 そして、そこに巻き起こるエゴが「自分がやったほうがうまくいく」という邪念。

そりゃそうでしょ、と思うもののこれは簡単な話で、自分よりうまくなってもらえばいい。であれば、その投資を惜しまないことで回避できるのでは?と思っています。

 その結果として実施したのが、「教育のアウトソース」。
私より上手なプロに教育をお願いするという考え方でした。

実は、PIVOTでは本件以外でも積極的に外部のアドバイザーに支援をお願いして、あらゆる分野でベストプラクティスから踏み外さないように、そしてシニアが成長できる環境をつくることに重きをおいてきました。

  • アーキテクチャ支援:川島さん(@kawasima)

  • データ分析基盤構築支援:田島さん(@ShotaTajima)

  • AI/データサイエンス支援:ばんくしさん(@vaaaaanquish)

そして今回はお友達のあらたまさん(@ar_tama)さんにEM支援をお願いしています。

2-1. どんな支援?

 週1時間、1on1形式のコーチングを軸に、Slackも含めた相談や時にはEM向けの勉強会のお誘いなどもいただきながら、具体の課題を一緒に解きほぐし、経験値を一気に高める支援をしていただいています。

 同じ課題に取り組むにも、ビギナーに見える景色と先輩から見える景色は解像度の差が大きくあり、先輩から見えてる景色を追体験しながら向き合うことで本来得られる経験値を大きく上回って獲得できると感じています。

2-2. ぶっちゃけ成果は?

 5月からの支援いただいて、早くも私自身が当初目標にしていたEM業務は全て渡せています。

 これだけでも100点ですが、そこで生まれた余白がさらなる加点要素を生んでいます。

  • 今まで一人で考えていた「エンジニアの目標設定」のアップデート

  • 1on1においてメンバーのキャリアへ向き合う時間が増えた

  • 期初のチームキックオフのアジェンダをともにつくる

さらにこの先も採用やDevRelといった視点でも多くのことを共に考え、多面的な視点で組織を作れる未来が見えてきました。

まとめ

改めて今回の私自身の学びは以下の3つです。

  • 自分の価値を最大化するためには、価値が出せること以外の"大胆に"手放すことが必要だ

  • 「自分がやったほうがうまくいく」という状況下でも、「自分より上手い人」を作る事が重要だ。

  • そのために外部のアドバイザーにお願いすることは人数が少なく忙しい組織においては有効な打ち手である。

よくある質問 Q&A

質問1: 具体的にどのようにして新任EMを任命したのか?

  • 回答: 「もともとEM志望を公言していたメンバーにお願いしました」

質問2: デリゲーションボードとは何か?どうやって使うのか?

  • 回答: 「権限委譲のレベルを7段階に分け、タスクごとに分けて管理しています。」

質問3: 技術アドバイザーの支援体制はどのように構築したのか?

  • 回答: 「日頃からおせわになっている業界で活躍されている方々ににお願いして、週一で支援してもらっています」

質問4: 外部アドバイザーの導入後、どのくらいの期間で成果が出たのか?

  • 回答: 「1ヶ月目からあきらかな成果がうまれました」

質問5: 外部アドバイザーの費用対効果はどうだったのか?

  • 回答: 「想像以上に効果がありました。特にマインドセットや学習方法は書籍や記事では得られない経験から生まれる知見が多く、対話や課題にともに向き合う中でしか得られない経験値だと思っています」

質問6: チームのカルチャーに外部の支援者がうまく馴染むための工夫は何か?

  • 回答: 「誰もが知っている実績のある方にお願いし、チームメンバーからもポジティブな反応がありました。」

本件のみならず、PIVOTでの実践をもとにしたプロダクトマネジメントや組織開発のお話に関するたくさんのご相談ありがとうございます。
引き続き、いろいろとお話できますので、イベントのご依頼など含め、ぜひDMでいただけたら嬉しいです!
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主にPjM、PO、セールスエンジニア、AWS ソリューションアーキテクトなどを務める。「映像業界の働き方を変える」をモットーにエンジニア組織を超えたスクラムの導入、実践に奔走。DevLOVEなど各種コミュニティーにおいてチームビルディングやワークショップのファシリテーションを行う