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私が売っている商品は、地球温暖化への影響がとてつもなく大きい。だからこそ。

タンザニアでエアコンのサブスクリプションサービスを提供する会社の代表を務めています。

ダイキンのエアコンを初期費用(機器代)を無料で提供し、1日/7日/30日単位でサブスク料金を払って使ってもらうサービスです。(*据付の工事料は有料になります。)

ダイキンのエアコンは省エネ性能が高いため、現地での普及品に対して、平均60%の電気代削減になります。日々の電気代を節約しながら、その節約分で無理なく、サブスク料金を払ってもらうビジネスになります。

地球温暖化への影響

この本の中で、温暖化解決のための対策が80個リストアップされています。
この中で、対策効果の大きい順にランキングが紹介されています。

堂々の1位が"冷媒管理"です。
(エアコンは冷媒を使用することで、室内を暖かくしたり、冷やしたりします。)

図1

<日本語訳>
1. 冷媒管理
2. 陸上風力発電
3. 食品廃棄量の削減
4. 植物性食品中心の食生活
5. 熱帯雨林の保護・再生
6. 女性への教育機会
7. 適切な家族計画
8. ソーラーファーム
9. 林間放牧
10. ルーフトップ太陽光発電

このように環境負荷が非常に大きい商品で我々は商売をしています。

私自身は環境主義者ではないです。環境問題を憂いて不登校になったこともなければ、燃えるゴミも燃えないゴミも全部燃えるやないかと言ってるような人間なので、残念ながら良い人間ではないです。

ですが、非常に大きな環境負荷を与える商品を取り扱う企業のトップとして、社会的な責任を果たすべきという使命感をもって事業をしています。

空調業界における現状

地球温暖化に対して、効果の大きい対策の1位になる理由が今の空調業界の現状にあります。

1. エアコンの需要の大幅アップ
2020年⇒2050年でエアコンの稼働台数が3倍になります。また、その多くは途上国での需要増になります。

2. 進まない途上国の環境規制
当たり前のことですが、途上国にとっての優先順位は経済成長です。

先進国が途上国の環境規制を強めようとしても、これまで環境負荷を与えて、成長してきた先進国が途上国に環境規制を強いることは道理がおかしいです。途上国にとっても、もちろん受け入れられないです。

タンザニアでもエアコンの省エネ性能のラベリングや冷媒規制などはもちろんありませんし、エアコンはリサイクルさせることなく、廃棄されるので、冷媒は100%大気に放出されて終わりです。

3. 環境負荷の大きい商品が人気
2.の理由により、お客さんがエアコンを購入するときにチェックできるものは”価格”と”ブランド”の2つだけになります。消費電力の表示もないので、比較検討もできないのが現状です。

そんな状況の中、400ドルの格安エアコンと800ドルの省エネエアコンが並んでいる場合、400ドルのエアコンが選ばれるということは明らかです。

また、省エネエアコンの電気代が安いと分かっていたとしても、途上国のお客さんの中で、800ドルの初期投資ができる人は非常の少数です。

以上の現状を考えると、政府にとっても、メーカーにとっても、お客さんにとっても、環境負荷の低いエアコンが普及させるインセンティブは働かないのです。

政府:環境規制よりも経済成長を優先して、国民を幸せにしたい。
メーカー:売れ筋の格安機をどんどん販売して儲けたい。
お客さん:1円でも安いエアコンを買いたい。

このままの状況が続けば、
“2050年になっても環境負荷の低いエアコンは普及することはない”
というのが私の推察です。

Baridi Baridiのサブスク事業はこの状況のゲームチェンジを狙っています。

それに成功し、環境負荷の低いエアコンが自然に普及する状況に変われば、地球温暖化を抑制する大きな武器になりうるのです。

環境負荷低減への取組み

エアコンのサブスク事業による環境負荷低減の取組みを具体化していきます。

環境負荷低減に向けての取組みは大きく分けて2つです。
1つ目は"省エネ"。2つ目は"冷媒のコントロール"です。

まず、"省エネ"についてです。

Baridi Baridiのエアコンは、タンザニアの普及品と比較して、電力消費量(環境負荷)を約60%削減します。お客さんは年間500ドルほどエアコンの電気代を払っており、それが200ドルになります。

電気代の高い格安機を購入し、高額な電気代と保守費用を支払うよりも、省エネ性能が高いエアコンのサブスクの方がお客さんの金銭的な負担を軽減できるのです。

また、80ドルの据付工事費さえ払えば、サブスクはスタートできます。購入に比べて、初期費用を圧倒的に抑えて、エアコンを使用開始できるのです。

少し話が横道にそれますが、
どれだけ電気代(ランニングコスト)を減らせるかが普及のカギです。

そのため、途上国では一切販売してなかった省エネ性能が1番高いモデルをサブスク事業向けにチョイスしています。

“1番安いエアコンしか売れない途上国で、1番高いエアコンを普及させよう”というのが、我々のチャレンジです。

次に、肝心要の冷媒のコントロールです。

冷媒の大気放出を減らすアプローチは以下の2つです。
1. 工事が原因の冷媒漏れを防ぐ
2. 廃棄時に冷媒回収をする

今年の4月から、自前での据付チームをもち、工事を自社で開始しました。
それまでは外部の据付業者さんにお願いしていました。

タンザニアの場合、10人業者を呼ぶと、10人中5人が約束した日に来ない、4人がめちゃくちゃな工事をする、1人がまとも。というのが現状です。

来ない理由としては、工具が借りられないというのが1番です。自分で工具を買うお金がなく、誰かにお金を払って借りてくるのです。その際に工具を借りられなかったら、ドタキャンで来ないのです。

そんな状況下なので、工事ミスが多くなるのです。私の経験値として、5台に1台は工事ミスによる冷媒漏れが発生していました。

Baridi Baridiでは、こうした冷媒漏れを防ぐべく、2つの対策を実施しています。

1. 人材教育
自社で職業訓練校を卒業したタンザニア人材を採用し、ダイキンから出向で来てくれている社員が据付技術について指導しています。

また、JICAと共同で、タンザニアの職業訓練校向けの授業カリキュラムを作成しようというプロジェクトを準備しており、空調技術者のレベルの底上げを狙っています。

2. 日本メーカーの工具導入
工事のプロセスの中で、フレアカットという重要なプロセスがあります。銅管をラッパ状に加工し、銅管を接続できるようにするプロセスです。この加工がキレイにできない場合、冷媒漏れの原因になります。

左:日本メーカーの工具で加工した銅管
右:現地で入手可能な工具で加工した銅管

図1

教育ももちろん重要ですが、使う工具も大事です。良い工具をちゃんとした知識をもって使うことができたら、冷媒漏れの可能性はほぼゼロになります。

自分の工具すら買うことができない多くの空調技術者にとって、良い品質の工具を買うという選択肢は現実的ではありません。(ちなみに、空調技術者は冷媒漏れでもう1回呼んでもらうほうが儲かります。)

工事による冷媒漏れを減らしたら、次は廃棄時の冷媒回収です。

タンザニアで廃棄時に冷媒がちゃんと回収されているケースはほぼゼロです。日本ですら冷媒回収率は約40%と回収がちゃんと出来ていないのが、現状です。

冷媒を回収し、リサイクルするには、大きな化学プラントが必要になります。何種類もの冷媒が普及しており、それぞれをちゃんと分離し、回収するには、化学プラントでの蒸留プロセスが必要になるからです。

途上国において、この儲からない化学プラントの建設は現実的な選択肢ではないのです。

ですが、1種類の冷媒に回収を絞れば、どうでしょう?

化学プラントは必要ありません。
簡易式のポータブル冷媒回収機で回収可能です。

Baridi Baridiでは、R32という比較的環境負荷の低い冷媒のみを使用しており、他の冷媒は使用しておりません。また、サブスク事業として運営しているので、顧客はエアコンを所有せず、Baridi Baridiが所有しています。そのため、自社内で冷媒を回収できるのです。

エアコンのサブスクは冷媒回収率を100%にする唯一の手段だと考えています。

“電力消費量削減:60%”
  & 
“冷媒回収率:100%”

を実現できれば、この事業モデルは地球温暖化に対抗する大きな武器になりうるんだと、我々は信じています。


エアコンのサブスクを世界に広げていくために

我々の事業はまだタンザニアでスタートしたばかりです。
我々が単独で事業を進めていくだけでは、地球温暖化を抑制する武器になりえないでしょう。

そのため、Baridi Baridiは以下の3つの取組みを強化していきます。


1. 環境取組の収益化
資本主義の中でこうした取組みを広げていくために、環境取組は儲かるものにしないといけないです。企業負担による努力だけでは、持続的な取組みにはなりません。サブスク事業の収益化はもちろんのこと、環境取組の収益化も実現していきます。

2. 環境投資の呼び込み
エアコンのサブスクは多くの資金が必要になるビジネスです。事業拡大には、常に資金の問題がついて回ります。環境投資の視点から、資金面をサポートいただけるパートナーを能動的に探していきます。

3. 事業運営パートナーの探索
エアコンのサブスク事業にBaridi Baridi以外の会社にもどんどん取り組んで欲しいです。タンザニア以外の国での協業を検討いただける事業パートナーの探索と協業の仕組み構築を進めていきます。

これらの取組みを行っていく上で、我々の思想や取組みに共感してくれる協業パートナーの方を募集しております。また、お声がけさせていただく際には、お話だけでも聞いて頂けたらありがたいです。

“儲け”と”社会的インパクト”を両立する成功例を生み出そうとしています。
我々のような小さい会社でも成功できれば、他の多くの企業にも、その影響は波及していくだろうと信じています。成功例を生み出すべく、一歩一歩地道に事業を前に進めていきます。

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