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Report of AAPM Task Group 155: Megavoltage photon beam dosimetry in small fields and non-equilibrium conditions を読んで


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DOI: 10.1002/mp.15030


読んでみたきっかけ

「MPPG5.bを読んで」の参考文献として、AAPM Task Group 155(TG-155)が挙げられていたので、「非常に重要なことを書いてあるぞ」と思い読んでみました。


論文の要旨

先進治療のSmall field線量測定には課題があり、それは線量測定精度に影響します。これらの問題に対し、IAEAとAAPMがガイドラインを提供し、AAPMのタスクグループ155(TG-155)は最善の実践を提案しています。ビームモデル設計や計算要件、治療計画システムの実装についても概説されており、これらは医学物理学者やビームモデル開発者への指針となっています。


現場でやっている医学物理士の感想

1 INTRODUCTION

私の勤めている病院はもともとサイバーナイフが導入されていて極小照射野、FFF、ノンコプラナー、オフセンター、画像誘導放射線治療、などに抵抗がないというか、それを「そんなもんだ」といってやるしかない環境でした。それから5年後にリニアックが入り、サイバーナイフが如何に特殊であったか理解できました。その後、頭頚部以外の定位放射線治療、前立腺IMRT等を経験し学びました。

表1において、当院でTG-155で対象なのは,(1) リニアックのIMRT、SBRT、(2) サイバーナイフのIMRT、ですね。

「LCPE の損失は、半影領域、狭いフィールドの内部、および異なる密度の媒体を含む領域 (低密度および界面) で発生します。24~27LCPE が失われると、検出器の感知容積、その密度、原子組成が線量測定の精度に大きな影響を与える可能性があります。非常に狭いフィールド(1 cm × 5 cm など)では、中心軸上でも LCPE が確立されません。したがって、非常に小さな感知体積と幅 1 ~ 2 mm の検出器を使用する場合でも、これらのフィールドでは小フィールド条件が存在します。」

私達の極小照射野測定方法の2016年時点の結論は、ダイヤモンド検出器で測定するというものでした。リニアックの更新時はFFFとか測定しなければいけないので、標準的且つ具体的なアドバイスを期待したいと思います。

TRS-483は、10cm×10cmのフィールドサイズ、100cmの線源対表面距離(SSD)または線源対軸距離(SAD)といった従来の基準フィールド条件が適用できない2つの特定の装置群に対する基準線量測定の実施規範を規定している。(a)ガンマナイフ、トモセラピー、サイバーナイフなどの特殊治療装置、(b) 既存の線量測定プロトコルにおいて定義された基準校正条件を満たさない構成の小フィールド付き線形加速器。

また、TRS-483も読んでみたらいいかもですね。 「標準計測法12」と何が異なるかがポイントですね。

小照射野線量測定のための高度なガイダンスが開発される一方で、SRS、SBRT、IMRT、VMATの照射に使用されている最新デザインのCアームやロボットリニアックにフラットニングフィルターフリー(FFF)ビームを備えた装置が増加した

線量率が高いFFFですね。

不適切に選択された検出器で測定された TPS へのデータ入力は、メディアで報道されている患者への危害をもたらす重大な線量測定誤差の根本原因の 1 つです。

線量測定値の変化が大きいこと、解像度・感度・LCPEの問題、等による誤差でしょうか?

2 BRIEF OUTLINE OF IAEA/AAPM FORMALISM

標準的な線量測定と相対的な線量測定の概要について述べられています。

2.1. Reference Dosimetry

当たり前のことかもしれませんが、水吸収線量の測定は電離箱が必須ですね。

形式論によれば、ビーム品質Qmsrのフィールドサイズfmsrにおいて、検出器がない場合の基準深度での水への吸収線量は、次式で与えられる:

いやー、難しいですね。「標準計測法12 付録20」ではAlfonso et al. の論文が参考文献のトップに挙げられていますね。サイバーナイフの場合、「CK_TPR20,10=0.62~0.66の場合、TPR20,10=0.68のときのkQとほぼ同等とみなす」、と書いてあるような気がします(自己責任)。

2.2. Relative Dosimetry

PDD、TMR、OAR、フィールド出力係数などの線量測定量は、定義上、線量の比であり、相対線量測定に該当します。 改めて、「そうだよね」と思います。

ここで記述された数式は、特定の条件を具体的にまとめているので私にはかなり難しいです。

他の多くの研究者が、比較や参考のために公開された文献で利用可能なデータを提供している69, 71, 73, 76, 89, 92-97は、現在も活発な研究分野である。

ダイヤモンド、半導体、シンチレーター、電離箱、などなど、比較のためのデータはあり、今もなお研究の真っただ中ということですね。相対的測定は、自施設の測定の考え方によるんでしょうね。

3. Small fieldS: Definition of Field Size

FIGURE 3、コリメーター設定に対するソースサイズと検出器サイズ。左:フィールドサイズを小さくすると、ソースが遮られ、フォトンフルエンスが制限される。右:フィールドサイズを小さくすると、対向するジョーからのペナンブレーが重なり、フィールドの中心で線量が低下する。その結果、線量プロファイルのFWHMはコリメータ設定と等しくなくなる。(Das et al.51 より引用)。

この図は非常に理解しやすく、なんか分かった気になりました。左の図は、X線発生源/コリメーター/検出器(縦軸は高さ)として模倣した図で、半影の仕組みが分かります。右の図は、線量プロファイルと照射野の関係を表した図で、いくら照射野を狭くセットしても線量プロファイルは狭くならないということを表しています。 サイバーナイフでは5mmの照射野まで使えるようになっているのですが、線量プロファイルのFWHMは5mmがギリギリなのでしょうね。

4. Detectors

小線源線量測定に適し、かつ”k(Qclinのビーム中のフィールドfclinとQmsrのビーム中のフィールドfmsrにおける検出器の応答の差を考慮する検出器固有の補正係数)”がほぼ単一である検出器は数種類(プラスチックシンチレータ、マイクロダイヤモンド、一部のダイオード、ガフクロミック)しかない。

プラスチックシンチレータ、マイクロダイヤモンド、一部のダイオード、ガフクロミックは補正係数が単一なんですね。

4.1. Real time detectors

4.1.3 Diamond detectors

相反するデータがあるため、マイクロダイヤモンド線量計のユーザーは、検出器の性能を評価し、TRS-483のデータとは異なる可能性のある新たに発表されたデータ78、79、86、172、174-177と比較することが推奨される1。また、TRS-483の推奨通り、マイクロダイヤモンド測定値と比較するために少なくとも他の適切なSmall-field検出器を使用することが望ましい。

2016年から5年以上たってTG-155が出版されていますが、なかなか悩ましいですね。「絶対に大丈夫な検出器と測定方法」を示すことは難しいんですね(神様しか本当の測定値はわからない、ですね)。

4.2. Passive Detectors

ラジオクロミックフィルム、熱ルミネッセンス検出器 (TLD)、ラジオフォトルミネッセンス ガラス (RPG)、および光刺激ルミネッセンス検出器 (OSLD)、ポリマーゲル、等があるようですね。

5. Relative dose parameters and measurements

5.1. Percentage Depth Dose (PDD)

Small-fieldのPDDを直接測定するために、最も適した検出器はmicro-ionization cylindrical and parallel-plate chambersで、一般的に感応体積は0.02cm3未満である。

「シールドダイオード、ラジオクロミックフィルムに比べて、micro-ionization cylindrical and parallel-plate chambersは推奨されるが、TRS-483をよく読んでね」、ということでしょうか?

一般に、PDDを補正する必要性を避けるために、補正値k が最も小さい検出器(マイクロダイヤモンド、マイクロスライコン、プラスチックシンチレータ、EBTフィルム)78、85、97、123、156、158、186-188、192、236が好まれる。

マイクロダイヤモンド、マイクロスライコン、プラスチックシンチレータ、EBTフィルムは、(推奨ではないけれど)もっともな測定値を示す、ってことなんでしょうか?

... 定位ダイオードとマイクロダイヤモンド検出器は、水中の PDD を深さ 30 cm まで 2% 以内で再現します。  ...

いろいろな検出器とモンテカルロシュミレーションとの差を示すグラフは見たことがあります。2%ぐらいだったら許容かなと思った記憶があります。

特定の臨床ニーズに対する検出器の選択(項目1)については、AAPM TG-106報告書で議論されている。5 これらのPDD測定には、最小の非シールド定位ダイオードが推奨される129, 179

めちゃくちゃ小さい照射野のPDDは、非シールド定位ダイオードが推奨、ということですね。

5.3. Conversion between PDD and TPR/TMR

Small-fieldのTMRを計算するための様々な具体的方法を述べています。データをフィッティングする方法、PDDをTMRデータに変換する方法があるが、これらの手法は時間がかかり限定的な精度しか提供しないため、使用するメソッドは測定値と照らし合わせて検証すべき、ということですね。

5.4. Profiles

図6は、6MVビームにおいてソースサイズとフィールド径がSmall-fieldフィールドプロファイルにどんな影響を与えるか、ということを示しています。5mmまでの小フィールドに対して良好な一致になっていますが、より小さなフィールドでは偏差が大きくなっています。

図7は、5 mm2のフィールドに対して6 MVのビームを照射した場合の各種検出器によるプロファイル(OAR)データです。perturbation係数が不明な場合は、PSD(W2)、マイクロシリコン、マイクロダイヤモンドなど、perturbationが最小となる検出器を使用する必要がある。

具体的な検出器が提示されて助かります。

5.5. Smoothing and Data Processing

PDD およびプロファイル データが適切な測定機器と慎重な実験設定を使用して取得される場合、取得されたデータに対する拡張後処理は必要ない場合があります。それにもかかわらず、高周波ノイズ成分 (突然のスパイク、小刻みな音など) を除去するには、適度なローパス フィルター技術 (または平滑化) を使用するのが合理的かもしれません。

これも悩みますね。ある人は「生のデータが一番正確」と言うし、「スムージング処理はした方がいい」という人もいるし。「適度なLPF」を見つけないといけないかなぁ。

通常、メディアン フィルターは、元のデータ ポイントが保持されるため、プロファイル データを平滑化するのに適しています。

そうなんですね。

PDD 平滑化に対する制限はそれほど重要ではなく、中央値または最小二乗フィッティング、またはその他のアプローチで十分な場合があります。

そうなんですね。新しい3D水槽の性能を見てみないと、、、ですね。

5.6. Field Output Correction Factors

さまざまな検出器による出力係数のグラフが図9です。照射野が小さくなると、検出器固有の補正係数が1を上or下回ります。

幅広い検出器に対するより包括的な表データは、TRS-483や最近の出版物から入手することができます。

なるべく検出器固有の補正係数を使わなくてよい検出器はないんでしょうか?

したがって、値が小さいプラスチック シンチレーター、マイクロダイヤモンド、microLionなどの検出器のみが適しています。

なるほど。参考になります。

6. Dose modeling in treatment Planning

第6章の要約(ChatGPT GPT-4を使いました)

  1. 治療計画システム(TPS)の線量計算は、患者への線量精度を決定する

  2. Small-fieldの線量計算のガイドラインは未確立

  3. 勾配の原因すべてを正確にモデル化し、異なるフィールドサイズに対応するためのパラメータセットを使用することが必

  4. Small-fieldフィールドのモデリングと検証ツールは、TPS機能にとって重要

と述べられていますね。

6.1. Treatment planning dose calculations

Treatment planning dose calculationsの要約(ChatGPT GPT-4を使いました)

  1. 治療計画の線量計算は要素ベースとモデルベースの2つに分類される

  2. Small-fieldや均一でない媒質での使用にはモデルベースが適している

  3. Small-fieldの線量計算において、ビームソースのサイズと形状、コリメータの形状、マルチリーフコリメータの透過性が重要

  4. これらの近似は多くの場合複雑で、適用範囲の把握や検証は臨床物理学者にとって課題となる

と述べられていますね。

6.3. Collimator Geometry and Fluence Modeling

Collimator Geometry and Fluence Modelingの要約(ChatGPT GPT-4を使いました)
TPSでは、ビーム形成はMLCのリーフ端からの漏れに影響され、これを正確にモデリングすることが重要です。Small-fieldでは非平衡状態が照射野の過大評価を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

ということが記してあります。

6.5. Dose Calculation Considerations

Dose Calculation Considerationsの要約(ChatGPT GPT-4を使いました) Small-fieldの線量計算では近似が重要であり、特定のアルゴリズムが問題を引き起こす可能性があります。そのため、モンテカルロ法がしばしば異なるアルゴリズムの実装の基準として、また線量計算に直接使用されます。

ということが記してあります。

6.6. TPS Configuration and Verification for Small-Field Modeling

データは通常、エネルギー スペクトル、一次エネルギー フルエンス分布の形状、焦点スポットの幅など、特定のビーム モデル パラメーターを設定するための反復プロセスで使用されます。

通常、1エネルギー1種類しかデータセットは入力できないですよね。

ベンダーによっては、小フィールド(通常、1cm×1cm以下にコリメートされたもの)用に別のビームモデル(治療機)をTPSに定義することを推奨しているところもある。最適化エンジンの結果、大小のビームセグメントが混在する場合、この方法はIMRT計画にとって非現実的な回避策となる可能性があります。

小照射野用、コンベンショナル用、IMRT用等に分けてTPS計算を実施する、ということでしょうか?精度は担保できても、臨床運用がちょっと心配ですね。自動化できないでしょうか?(自分自身、うっかり忘れることが怖い)

均質な水媒体の小さなフィールドのモデリングを検証する標準的な実践に加えて、モデルは、特に低密度材料の場合、不均質性においてテストされることが好ましい。269 , 299

「X線治療計画システムに関するQAガイドライン 6.4.3.10」にも不均質補正のやり方が出ていたから、治療システム全体のエンドツーエンドテストは間違いなくやった方がいいんでしょうね。

7. Uncertainty

このセクションでは、フィールド出力とプロファイルの不確実性について説明します。小規模フィールド測定におけるタイプ A および B の不確かさの詳細な分析は、TRS-483 で提供されています。

タイプA、タイプBというのがあるんですね。

補正係数のタイプ A とタイプ B の両方の不確かさを考慮した解析では、この量は MC シミュレー ションによって 0.7%(1 SD)より低い全体的な不確かさで提供できることが示されている72 。タイプ A の不確かさは、統計的手法によって得られる。逆に、タイプ B の不確かさは、基礎となる断面データの誤差や検出器のモデリングに使用される幾何学的近似値などの非統計的な量に関連し、ユーザーによる影響を受けず、他の方法によって得られるものである。

これは重要ですね。なんとなく覚えておこう。

8. Key Recommendations and Summary

Small-fieldの測り方を、検出器の選択、測定条件、TPSコミッショニング、独立チェックに分けて、具体的に述べておられます。

第8章の要約(ChatGPT GPT-4を使いました)
○ 1cm×1cm以下のフィールドでは、相互作用と依存性を考慮し、適切な検出器を選択する必要があります。
○ 測定は高解像度で、複数の検出器と共有が推奨されます。
○ 治療計画システム(TPS)はメーカーの要件に従って設定し、公開データと比較して検証する必要があります。
○ 線量モデリングにはMC法やボルツマン方程式ソルバーが最適です。
○ 線量測定は独立した検証が必要で、エンドツーエンドテストが推奨されます。
○ 検出器の選択や測定セットアップの重要性、小フィールドでのTPS計算への配慮が強調されています。


これからの課題

4日ほどかかりましたが何とか読みました。
これだけのボリュームがあるレポート(論文)を書かれた先生方に感謝の意を表します。

私が理解できた範囲で以下のようにまとめてみました。(ChatGPT GPT-4を使いました)

1. 放射線治療機器の理解
2. 放射線治療における線量測定の重要性とその難易度についての認識。
3. 線量測定に使われる検出器の選択とその影響についての理解。
4. 様々な線量測定データの比較と評価の推奨。
5. 治療計画システム(TPS)の線量計算の精度の理解
6. 不確かさの理解と管理

また、何度か読み直すと思いますが、理解できないことは第8章の推奨要件を見てSmall-field dosimetryに対応していきたいと思います。


Jun 3, 2023

#学問への愛を語ろう #医学物理がすき

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