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詩「彼」

20240102

最期の瞬間に思い浮かべるものが
誰かの顔であれと望んだ
無数に別れて伸びる道が
次第に減ることを感じながら

ハサミで切り取った写真で
コラージュを作った壁紙が
台無しにされた部屋の中で
一杯のコーヒーが冷えてゆく

ボサボサの頭に走る痒みが
記憶のせいだとしても
彼は気にしないようにした
ひたすらにキーボードを打ちながら

紙飛行機を作ろう
必要なことだけを書き残して
無駄話はデータになった
誰かが見つけるのは時間の問題だろう

久しく会っていない顔たちが
こちらに向かって笑いかけているので
その他に何もする気にならない
季節などは問題ではない

空想したい時には目を閉じれば良い
短い映画のように鮮明に浮かべる
一人きりで戦う主人公には
この世の全てが敵に思えている

気が付くと夕暮れ時になっている
腹が減って仕方がないのでパンを買う
パサパサになった口内と瞳の奥から
何かが溢れてくるのはいつも深夜帯

時間の感覚がなくなる時
生きているかも死んでいるかもわからない時
何も知らずに何もかもわかった顔でいられる
彼はそんな時だけ少しだけ微笑んでいる

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