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詩「至るアパート 二階 角部屋」

20240121

時間が止まる 何もない部屋の中
肉体の隅々まで巡らせてみる
感覚だけがある やがて溶けてゆく
それで良い 彼は包まれたような気分になる

歪んだギターの音で目を覚ました少年がいる
いつの頃だったか それは彼にとても似ている
十分に腐ってしまった果実を大事に抱える
頭を振るとカラカラの頭がマラカスになる

全てをかち割りたくなったので目隠しをする
何もない部屋で腕を振る音がする
ちょうど三時間 それを続けてみたら
汗だくになり 何か成し遂げたような顔で目隠しを外す

窓の外から夕陽が差し込む 彼は天井を見る
無数の瞳がこちらを睨みつけている 彼は笑っている
笑えない冗談のような人生を殴りつける時間だけがある
幻の正体を隠すために この部屋は存在する

昨日残しておいた胃の中のピストルを取り出す
頭蓋骨に開けた無数の穴が天井の瞳と同じ形をしている
煙草を吸おう 灰皿はこの部屋自体が役目を果たす
何もない部屋にピストルと彼と煙草の吸い殻と灰だけがある

隣の部屋から叫び声が聞こえるが彼は気に留めない
何かに負けた奴らだけ此処らに住んでいるだけだ
詮索はしない しなくても大体わかっている
何もない部屋が並んでいる 彼だけが気を確かに持つ

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