詩「人生悪役ⅩⅩⅩⅠ」

2021-01-27

「それで…」男はメモを止め
「あなたと彼は 兄丸組のトップになったと」
タヌキは モジモジしながら
「はい そうですよ しっかりちゃんと覚えてます」と答えた

「大変だったでしょう? そんなに簡単にいくわけがない」
男はメモを再開した
「ええ まあ でも僕には ヒグマがいましたから」タヌキは落ち着きがない
男は聞いた「ヒグマ?」「ええ 僕のことです」タヌキが答えた

「頭の中から生まれた 怪物のことを
 彼はヒグマみてえだなあ と言っていました
 なので 僕らはそう呼ぶことにしたんです
 今はもう 眠りでしばらく眠ってしまっていますが」

男はため息を吐いた
「そうですね 我々の薬で眠らせている
 タヌキさん あなたは徐々に良くなって来ている
 最近 どんな夢を見ますか?」

「ああ この前 中学生になった夢を見ました
 僕は 漫画を書いていました
 それを友人に見せにカフェに行った
 彼が 見せてみろって言ってくれたんです

 その漫画は あまり面白くなかったらしく
 友人はそこまで良い反応をしなかった
 だから帰って 彼にそれを伝えると
 笑ってくれたんです それで勇気を貰った

 僕は続きを描きました
 とても面白いものが描き上がりました
 そう思った瞬間に
 目が覚めてしまいました」

男はメモを取りながら
「目覚めた時 あなたはどう感じましたか?」と聞いた
タヌキは 少し考え込んでから答えた
「現実が もしこうだったら良かったのにって」

男は「なるほど」と言って
メモを取るのをやめた
そして タヌキの目を真っ直ぐ見つめながら
「大丈夫 あなたは徐々に良くなっている」と 先ほどと同じ言葉を言った

男が扉を開けて 外で何かを話している間
タヌキはボーッと ペンを見つめる
揺れる 揺れる 脳が水に揺られる
彼の顔を思い描く (会いたいなあ)と思う

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