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詩「声」

聞いている
聞こえている
自分の中だけで
外側には聞こえない
誰にもわからない
それが安心する
だからこそ内側で育つ
汚れてゆく
彼が増殖する
俺はどこにいる
聞こえている
確かに聞こえている
声が重なってゆく
耳を塞いでも届いている
心が分離しそうになる
寂しさが雪のように降り積もる
それでも誰かに頼ることはなく
ただ声に振り回されている
聞こえている
嘘すらもよく聞こえている
返事が出来ない
する暇がないほどに聞こえている
気付いて欲しい
この声を聞いて欲しい
それでも外側に聞こえることはない
安心だけが並んでいる
そんなものは必要ない
全てを叩き割って欲しい
粉々に砕いて鼻から啜っても良い
俺で気持ち良くなれるならそれでも
聞こえている
たくさん聞こえている
無限に増えて無限に広がる
深く深く落ちてゆく
最高の瞬間を記憶しておく
最低な瞬間と混ぜてゆく
声が聞こえている
声だけが聞こえている

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