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詩「チーズを探して」

20240117

いとも容易くブルータスになれる
彼は裏切りを着飾って歩く
煙草の煙は鎧のように彼を包む
強い風を受けても飛ばされない

「大切な人がいた気がする
 もう二度と会わないだろう
 それで良かったと安心する
 大切なものなど必要ない」

彼を信じる者は救われない
彼を通り過ぎる者は歩き出す
情など何の足しにもならない
裏切りは時に優しさでもある

本当に裏切ったのだろうか?
彼がそう思っているだけかも知れない
仕方なかったことかも知れない
そうしなければ死んでいたかも知れない

いや そんなことはない
裏切る必要はどこを探しても見つからない
ただ彼が望んでいる場所が
他の人々とは違っていただけ

彼が本当の居場所を見つけた時に
初めて裏切られることになるだろう
その時にはせめて最後の言葉を書き留めず
ひっそりと彼を眠らせてやってくれ

煙草の煙が鎧になることをやめ
剣が突き刺さる胸を押さえて
今にも雨が降り出しそうな灰色の空を
眺めながら微笑んでいる

そんな夢を見てまた探し始める
寂しさを鼻歌で誤魔化しながら
馬鹿な男の歩く長い道の後ろに
裏切った人々の数を数えながら

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