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詩「コーヒーと彼」

20240308

とりとめのない話をしよう
いつの間にか時が過ぎてゆくような
笑いどころなんて捨ててしまおう
きっとそれが一番良い

カフェの席は居心地が良いから
彼は一人きりでいることを忘れて
語りかける 嘘も本当も
混ざり合って歪になった体験談

登場人物には着飾ってもらって
それぞれの事情は突拍子もなく
抱えている問題は山積みで
解決することなく突き進んでゆく

撃たれた頬の痛みを忘れようとして
コーヒーがこぼれるのも構わずに
注文して また服を汚す
他の客は迷惑そうに彼を見ている

それでも彼は 不思議なことに
微笑みながら誰かと語り合っている
その相手が頬を撃った相手だとしても
気にしないようにしている

自分を憐れむ余裕もなくて
彼の瞳はくすんで 今にも落ちそうで
それを留めるのはコーヒーの湯気
事情がわからないのに優しいヤツだ

マグカップに入れられるコーヒーが
彼のことを包み込むまでは
厄介者になるかもしれない
そのあとは床のシミになるだろう

彼が居ても居なくても構わない世界が
さようならも言わずにそこにある
それでも彼が居たことを証明したくて
コーヒーは喜んで頬からこぼれる

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