古庄宏臣/知財務株式会社

1989年 大阪ガスに入社 2006年同社を退社し知財務株式会社設立 企業が有する技術…

古庄宏臣/知財務株式会社

1989年 大阪ガスに入社 2006年同社を退社し知財務株式会社設立 企業が有する技術を転用することで新規事業を開発する支援を数多く手がける。 現在:関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科 兼任講師 著書:「巨大企業に勝つ5つの法則」日本経済新聞出版社 2010年(共著)

最近の記事

日の当たらない時こそ成長のチャンス ~ 奥田碩(トヨタ自動車元会長)~

 幕末に江戸城無血開城を成し遂げた勝海舟は、以下の言葉を残しました。   その人がどれだけの人かは、   人生に日が当たってない時に   どのように過ごしているかで図れる。   日が当たっている時は、何をやってもうまくいく。  我々は、人の価値を、その人の成功実績を羅列して図る癖があります。しかし、本当の人の価値とは、その人に日が当たっていない時の過ごし方で図るべきではないでしょうか。  実は、勝海舟だけでなく、名経営者といわれる人や、多くの功績を残した偉人といわれる人でも

    • 学びあうオープンイノベーション(1)~三菱スペースジェットとホンダジェットを分けた要因の本質は何か~

       2024年3月に日本経済新聞出版より「学びあうオープンイノベーション ~新しいビジネスを導く“テクノロジー・コラボ術”~」を上梓しました。  このnoteでは、この本で書かれた内容について、本文中には書かれなかった背景にあるものや、本題から外れるため書かなかった考察結果について解説します。本書と一緒に読むことで楽しんで頂ければと思います。  まず初めに、本書の冒頭で登場するのは、2003年にアメリカの経営学者であるヘンリー・チェスブロウ氏が提唱したオープンイノベーション(

      • 乱世の生き方(2)―全員が敵になる覚悟を持った勝海舟の大局観―

        ■何を信じて生きるべきか  インターネットの世界では話題となるもテレビでは一切報じられることのなかったジャニーズ事務所の性犯罪問題が顕在化し、エンタメ業界を大きく揺るがしているようです。既に広告費では2019年にインターネットがテレビを抜き(※1)、2022年にはインターネット広告費がテレビ広告費の1.7倍になる(※1)など、長い間メディアの中心にあったテレビの存在が大きく変わろうとしています。社会に大きな影響を与えるメディアの姿が変わることは歴史上の大変化といえます。  メ

        • 配膳ロボットは飲食店の救世主となりうるか

          ■テクノロジーがサービス業を変える?  コロナ禍が収束し、飲食店に賑やかさが戻ってきたのですが、一方で飲食業界の人手不足は深刻です。帝国データバンクの調べ(※1)によると、図1の通り、飲食店では特に非正社員の人手不足を感じる企業が80%を超えています。これは2019年以前の水準(※2)に戻っており、今後これが改善されるかどうか不透明です。  そのような中、飲食店における人手不足の救世主として注目を集めているテクノロジーが配膳ロボットです。2021年現在、配膳ロボットの市場規

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          内部留保増加から見えるモノづくり産業における問題の本質

           2022年9月1日に財務省が発表した法人企業統計で、企業の内部留保が10年連続で過去最高を更新したということでした。近年、こうした企業の内部留保増加ニュースをよく目にします(※1)。  ところで、こうした内部留保増加の話題に合わせてよく話題となるのが「内部留保が過去最高であるにも関わらず、従業員の給料は増えない」という“誤解の意見”です。  この内部留保が増えているのに給料が増えないという指摘は本質を踏み外しています。内部留保とはストックであり、人件費(給料)はフローの話で

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          乱世の生き方(1)~敗北を受け入れた後の榎本武揚という生き方~

           2022年2月24日、ロシアがウクライナとの国境を越えて軍事侵攻を行いました。国連常任理事国による領土拡大を目的とした(※1)軍事侵攻は、第二次世界大戦終結以降に人類が築き上げてきた国際秩序を一瞬にして破壊したといわれています。  ロシアのウクライナ侵攻の影響により、原油、天然ガスといった資源は無秩序に価格が高騰し、日本国内ではこうした資源高に円安と電力不足も加わり、経済成長政策の実現に不透明感を抱く混沌とした社会になったと考えられます。  更に遡ることロシアのウクライナ侵

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          ロシアによるウクライナ侵攻の可能性 -クウェート侵攻の歴史から学ぶ-

           ロシアによるウクライナ侵攻の危機が高まっています(※1)。既にロシア軍は医療部隊をウクライナ国境に派遣したといわれてます(※2)。  ロシアがウクライナに侵攻した場合、台湾有事の可能性も高まるといわれており(※3)、そうなると日本にとっても遠い場所での出来事とはいえなくなります。  戦争の可能性を予測することは専門家でも不可能といわれていますが、ここで可能性の仮説を立てることで、後に仮説検証を行い、現代のような不確実性の高い時代におけるリスクマネジメント力の糧にしたいと考え

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          経済安全保障とは何か

           最近、「経済安全保障」という聞き慣れない言葉をよく目にするようになりました。国防を意味する「安全保障」という言葉の前に「経済」という言葉が入っているのです。  この「経済安全保障」と「安全保障」との大きな違いは、「安全保障」が国防に関わる限られた人のテーマであったのに対し、「経済安全保障」は民間企業のビジネスに直結し、多くの人が関わるテーマだというところです。  つまり、防衛技術を国産化するといった国防に限定された世界ではなく、半導体やコンピュータ技術といった民間で普通に使

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          人はなぜ定義の曖昧な言葉を使用するか

           「定義の曖昧な言葉」とは最近に限ったことではなく、昔からよく使用されていた訳ですが、最近は多くの人が頻繁に使用する“定義の曖昧な言葉”があります。この定義の曖昧な言葉がフラッグシップのようになっているケースがあります。  そうした人によって解釈が異なる危うい基盤の上に成立しているコミュニケーションのもとで組織を動かすと、時間の経過とともに、その組織は雲散霧消となるケースが散見されます。  具体例を見ながら、人はなぜ定義の曖昧な言葉を使用するかを考察してみました。 ■コロナ

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          兵庫開港の意義(国際社会との約束とは)

           1868年、横浜開港から9年後に兵庫開港が実現し、神戸が世界に対する西の玄関となった訳です。しかし、この兵庫開港実現には乗り越えなくてはいけない大きな課題がありました。  当時の天皇であった孝明天皇が大の異人嫌いであったため、それにより「尊王攘夷」という言葉が大流行したのですが、この天皇がいる京都に近い神戸を開港することに朝廷が猛反対していたのです。京都から遠く離れた横浜とは事情が全く違ったのです。  当時「兵庫開港はありえない」と考えられていたそうです。  しかし、15

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          カリスマリーダーのいる組織は最強か -承久の乱から学ぶリーダーの役割-

           中公新書から出版されている「承久の乱」(坂井孝一 著)は良書ですので読むことをオススメします。今回はこの本をベースに、歴史から何を学ぶかを解説します。  承久の乱とは、圧倒的なカリスマリーダーがいる組織と、リーダーの役割が分担されている組織が対決した場合、後者が勝ることを示した事例といえます。つまり、知識が豊富で才能に長けた人物が勝つとは限らないことを示す象徴的な事件だったのです。  筆者は、3つ視点を重ね合わせながら、この本を読みました。  1つめは、新規事業開発にも

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          人の行動を支配するのは“科学”ではなく“空気”

           2021年4月25日から三度目の緊急事態宣言が4都府県(東京都、大阪府、兵庫県、京都府)に出されることとなりました。  今回は短期集中型で前回よりも強力な制限をかけるということで、大型商業施設や飲食店に対し、ケースによっては休業も要請するとのことです。  注目すべきはイベントです。特にプロ野球やJリーグ(サッカー)については、この4都府県で開催される試合は無観客開催になる方向とのこと(2021年4月24日午前現在の情報)です。  プロ野球については昨年のレギュラーシーズンで

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          優良企業の本質(3)-ピンチの中からチャンスを創り出す企業-

           コロナ禍になり、多くの企業がピンチを迎えました。企業はどのようにしてピンチから脱するべきなのでしょうか。  実は、どんなピンチの中であってもチャンスを見出すことは可能なのです。ただし、そのためには厳しい現実を受け入れる覚悟が必要であり、現実と向き合ってこそチャンスを見出すことができます。  ピンチの中から市場機会を創り出すためには、次のことが必要です。 (1)現実を受け入れる  短期間で元の世界には戻らないという現実を受け入れる必要があります。 (2)自社が顧客に提供して

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          いかにして「潜在的ニーズ」を捉えるか

           多くの人が「ビジネスチャンスがある」といわれるところに飛び込めば、当然のことながらレッドオーシャンとなります。  他社が気づいていない潜在的なニーズを捉える方が高い収益を得られる可能性が高いです。それは誰もが認めるところであり、それではどうすれば次のビジネスチャンスである「潜在的ニーズ」を捉えることができるのでしょうか。  それは「変化あるところにチャンスあり」です。変化があるから新たなニーズが生まれます。  例えば、女性の社会進出によって従来男性がしていた仕事を女性がす

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          情報の時代(3)-コロナ禍から何を学んだか-

          今回、多くの人がパンデミックの中で膨大な数の情報に振り回され、「いったい何が正しいのか分からない」という状況を経験したはずです。 またSNSなどを通じて、不確かな情報が拡散されることを「インフォデミック」というそうですが、このインフォデミックによってパニックが引き起こされる場合もあります。昨年のトイレットペーパー買占め騒動はまさにインフォデミックによるものと考えられます。 結局のところパンデミックがいつ収束するか、この先どうなるかは誰も分からないのです。 一方で、人類にとっ

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          優良企業の本質(2) -ダルビッシュ選手が語るオープンイノベーションの可能性-

           メジャーリーグのサンディエゴ・パドレスに所属(2021年現在)するダルビッシュ有選手(以下、「ダルビッシュ選手」と書きます。)がセ・リーグとパ・リーグの実力差がついた要因をYouTubeで語っています(※1)。  ダルビッシュ選手が語った内容は、日本のものづくり産業においても大いに参考とすべきオープンイノベーションの可能性を示す内容だと考えました。これは実際に選手としてプロ野球の現場でプレーした人でないと知りえない貴重な情報であると考えます。  ダルビッシュ選手が語るセパ両

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