【第8話】 裸足のグアバ売り🇮🇳
ジョージタウンに漂着した時、「ここで取材撮影ができなかったらどこ行ってもできないな」と思った。あらゆる種の卸問屋と商店があり、何百軒でも聞いて回ることができそうだったからだ。「仕事しているところ撮ってもいいですか?」と。
しかしここは観光地ではない。商売人のための商売を営む人がほとんどだ。なんのために彼らがこちらの撮影に協力してくれるのか。特に深く考えずお願いをして、これもまたなんとなく了承をもらえてしまう。確かなことはわからなかった。
彼は裸足だった。もちろん、この街のみんなが裸足で歩いているわけではない。チェンナイは大都市で、世界中のどの地域と比較しても引けを取らずみんながスマホをいじっている。
だが、なぜ彼が裸足なのかは聞けなかった。憚られたのではなく、そんな余裕がなかっただけのことである。
一日に何個売るだとか、いくら稼いで、何に使っているかなんて聞かない。そうではなくて、「仕事満足してますか?」が聞ければいいのだ。深掘りしてインタビューするのは後々のことで、今はただ聞いて、撮れればいい。
現場で撮っている時、「すげえな、すげえな」と頭の中で連発している。何がすごいのだろう。多分、「俺にはできないな、この仕事。この人すげえな」なんだと思う。
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