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【第8話】 裸足のグアバ売り🇮🇳

ジョージタウンに漂着した時、「ここで取材撮影ができなかったらどこ行ってもできないな」と思った。あらゆる種の卸問屋と商店があり、何百軒でも聞いて回ることができそうだったからだ。「仕事しているところ撮ってもいいですか?」と。

しかしここは観光地ではない。商売人のための商売を営む人がほとんどだ。なんのために彼らがこちらの撮影に協力してくれるのか。特に深く考えずお願いをして、これもまたなんとなく了承をもらえてしまう。確かなことはわからなかった。

グアバ屋台 日本にはないだろう
彼は裸足だ
コンクリート未舗装の道
いつもの場所へ向かう
何百個のグアバだろう
彼はいつもここで売る
常連というものもあるらしい
その場で味を確かめる客もいる
額に何か付けている
こう見るとオシャレだ
おしゃべりが始まる
この顔は「またな」かな

彼は裸足だった。もちろん、この街のみんなが裸足で歩いているわけではない。チェンナイは大都市で、世界中のどの地域と比較しても引けを取らずみんながスマホをいじっている。

だが、なぜ彼が裸足なのかは聞けなかった。憚られたのではなく、そんな余裕がなかっただけのことである。

一日に何個売るだとか、いくら稼いで、何に使っているかなんて聞かない。そうではなくて、「仕事満足してますか?」が聞ければいいのだ。深掘りしてインタビューするのは後々のことで、今はただ聞いて、撮れればいい。

現場で撮っている時、「すげえな、すげえな」と頭の中で連発している。何がすごいのだろう。多分、「俺にはできないな、この仕事。この人すげえな」なんだと思う。

仕事が何かって? 見りゃわかるだろ
グアバの販売だよ
朝から晩までグアバを売るんだよ
セールスだよ 販売だ

朝10時から そうだな
売れなきゃ夜遅くまでやることだってある

なんでこの仕事を選んだかって?
そうだなぁ 子どもの頃からずっとやってきたことだからな

どうしてこの仕事を選んだかなんて考えたことなかったよ
まったくな

この仕事で大切にしていること?
集中力だな
そう 集中することだな
この街のみんなと知り合いなんだ

誰と何を話していたかいつでも思い出せるようにしておかないと
おしゃべりがしたくてわざわざ買いに来てくれる人もたくさんいるんだ
彼らをがっかりさせるわけにはいかないだろう

深い充実感を得る時はそうだな
そもそも 幸せを自ら手に入れられるとは考えていないけど神の愛を感じられる時がある
そんな時だな

この仕事で生かされているのは事実だ
もしグアバが売れなかったらその日は食いっぱぐれることになる
だからどんな人にも親切にしてるよ

Guava Seller in south INDIA summer 2018
www.monologue365.jp

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