見出し画像

「強みに基づく組織文化を築く」〜『ザ・マネジャー』

ジム・クリフトン氏とジム・ハーター氏の共著『ザ・マネジャー』を読みました。

著者2人の肩書きは、ギャラップ(Gallup)社の会長兼CEO とワークプレイス部門 チーフサイエンティスト。ギャラップ社といえば、グローバルな世論調査会社として有名ですが、自己診断ツール「ストレングス・ファインダー」(現在の正式呼称は「クリフトンストレングス」)の提供元としても、知る人ぞ知る会社です。

本書は、サブタイトルに「人の力を最大化する組織をつくる」と付いており、人の「潜在能力」や「強み」を活かすことのパワフルな効能が語られた一冊でした。

「強みをもとにしたマネジメント」に惹かれるあなたへ

本を開いてすぐの扉ページ。
いきなり登場する次の言葉に、まず心をつかまれます。

人の潜在能力を最大限に発揮させる。 それが、いますべての組織の最大の目的であると 考えている人たちへ。

「企業の目的とは何か?」という問いには様々な答えがありえますが、「人の潜在能力を最大限に発揮させる」ことが一番でそこからスタートすべきだ、という主張には個人的に強く頷けます。

現在、勤め先でストレングス・ファインダーのワークショップを展開しており、企業内での人の見方がいかに「弱み」に引っ張られてきたか、ということを痛感しているためです。

ワークショップでは、ツールで提示された自身の資質(=頻繁に繰り返される思考・感情・行動のパターン)を認識してもらいます。自身の資質の特徴や活かし方を知ることで、次のような明るい意見が出たのが印象的でした。

  • 「なるほど!たしかにそう考えがちだな」

  • 「弱みだと思っていた点が、強みにもなり得るんだ!」

  • 「チームへ貢献するヒントが得られた」

また、上司・同僚の資質を共有した上で対話すると、次のように正直な感想も聞けました。(ずいぶん腹落ちしたみたい)

  • 「めちゃくちゃ思い当たる!」

  • 「だから、ああいう言動だったのか…」

  • 「実は、けっこう補いあえているのかも」

本書は、CEO や CHRO など企業の幹部メンバーや人事部所属社員はもちろん、「強みをもとにしたマネジメント」に心惹かれるすべてのマネジャーに参考になると思います。

キーフレーズ

『ザ・マネジャー』は、序章+52章+終章で構成されています。著者らによれば、各章は「ブレークスルー(問題解決の糸口となる突破口)」という位置づけで書かれている、とのこと。マネジャーにとってアドバイスやヒントとなる記述が多数ある反面、各章のつながりや構成にはやや混沌とした印象も受けました。読む人によって受け取る印象が大きく変わりそうです。

以下では、個人的に最も響いた「組織文化」に絡むフレーズを中心に、いくつかピックアップしてみます。

すばらしい仕事とは

序章では、働き方の変化にともなって「ひどい仕事」「よい仕事」「すばらしい仕事」に対する人々の考えが変わってきたと書かれています。なかでも「すばらしい仕事」については以下の記述がありました。

すばらしい仕事とは、「よい仕事」にもうひとつ大きな要素が加わったものです。それは、意味のある充実した仕事に熱意と当事者意識を持って取り組んでいること、つまり、仕事にエンゲージし、職場で個人として成長し、能力を発揮していると実感していることです。

序章 いま世界中の人々が望んでいること

「仕事にエンゲージしている人は全世界で20%、日本では6%しかいない」というギャラップの調査結果、目にしたことがありませんか。(よく新聞や雑誌でも引用されています)

この数字を聞かされると、ついエンゲージできていない人にフォーカスをあてがちです。ただ、エンゲージできている人に注目すると「意味のある充実した仕事」「熱意」「当事者意識」「成長」「能力発揮の実感」あたりがポイントになっていそうです。

ボスからコーチへ

では、これらを実現するにはどうするか。
本書では「第I部 戦略を立てる」でその鍵が組織文化にあると指摘し、続く「第II部 組織文化をつくる」でその重要性を次のように説明しています。

優れた組織文化はお金では買えません。マネジャーはあらゆる階層で組織文化に何らかの変化をもたらします。(略) 今日、従業員が求めているのは「ボス」ではなく「コーチ」です。マネジャーが「ボス」から「コーチ」へと変貌を遂げることで、従業員のエンゲージメントを高め、パフォーマンスをあげることが、さらには組織文化を変革することができます。

第8章 組織文化をどう変革するか

CEOやCHROだけでなく、あらゆる階層のマネジャーが組織文化へ影響を与えています。まず、この事実を認めることから始めたいですね。

その上で、マネジャーが自身の役割を「ボスからコーチへ」と変えること。これがメンバのエンゲージメントを高め、パフォーマンスをあげ、ひいては組織文化の変革につながると、本書では説いています。

「強みに基づく組織文化」を築く

とはいえ、組織文化づくりの責務や負担を、現場マネジャーだけに押し付けるわけではありません。

第16章では「強みに基づく組織文化」を築くためのステップとして、以下の5つが挙げられています。

  1. CEOから始める。そうしないと、うまくいきません

  2. すべての従業員に、自分の「才能」に目覚めてもらう

  3. 社内にストレングス・コーチのネットワークをつくる

  4. パフォーマンス・マネジメントに「強み」を組み入れる

  5. 学習プログラムを変革する

なかでも最初のステップは重要で、経営陣から始めるべきということが強調されていました。

強みに基づく文化をつくりたければ、「組織内のひとりひとりの強みを活かすことが、会社の目的や事業目標を達成するためにどう役立つのか」を経営陣がきちんと説明することが大切です。役員自身も、自分の「強み」を皆と共有し、どうそれを活用しているかを伝えましょう。

第16章「強みに基づく組織文化」を築くための5ステップ

※本件については、先日紹介した『未来を共創する 経営チームをつくる』でも類似のことが語られています。

「強みに基づく組織文化」を築くための第2〜5ステップについては、ややギャラップの手法をPUSHしすぎの気もします(笑)。ただ、語られている内容自体は、以下を実現するための方法論の1つとして納得がいきます。

各メンバーの強みを知っているだけでは、変化を起こせません。継続的に会話を行い、振り返り、実践する。それを繰り返すことで、強みを組織の日常業務に組み込んでいきます。

第16章「強みに基づく組織文化」を築くための5ステップ

後半のステップ2〜5については、人材開発を担う自身の役割に直結する話。継続的な会話・振り返り・実践を組織の日常に組み込むべく、仕組みとしてインストールしていくつもりです。

おわりに

本書は、「強みに基づく組織文化を築く」ことがこれからの働き方にとって重要であり、経営陣から現場マネジャーまで全マネジャーが取り組むべきことだ、と説いています。

ここまで読んで、「従業員にはいいとして、企業の成長や数値的成果はどうなんだ?」という疑問が湧くかもしれません。

この点についても、著者らは終章で「ギャラップ・パス(有機的成長のための行動経済学モデル)」を提唱しています。

このギャラップ・パスは、「強みの特定」から「エンゲージした顧客」まで徹底して「人」に注力しています。その結果が、組織の持続的成長や収益増加に繋がるとうたっているところに腹落ち感がありました。かつて話題になったBSC(Balanced Score Card)が 「学習と成長→業務プロセス→顧客満足→財務 」の順に良くなっていくのと同じニオイを感じます。

なお、本書には、上で取りあげた以外にも、「12のエンゲージメント要素(Q12)」「年配社員を成功へ」など興味深い記載があります。「強みを基にしたマネジメント」に心惹かれる方は、ぜひ読んでみていただきたいです。

マインドマップ

本書のマインドマップを描いたので追加しておきます。

『ザ・マネジャー』マインドマップ

関連記事/ツイート

1つ目は、過去に『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』を贈った女性から8年越しにもらった言葉を記録したnoteです。ストレングス・ファインダーの効能を実感した出来事でした。

2つ目は最近書いたブログ記事。
足掛け20年の間にストレングス・ファインダーを3回受診したことについて考察した内容です。「何回やっても大きく変わらないって本当?」「診断結果って信用できるの?」など疑っておられる方はご覧ください。


※本投稿のもとになったTwitterでのスレッド。noteでは紹介しきれなかったフレーズも抜書きしています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます! 感想や意見をSNSやコメント欄でいただけたら、なお嬉しいです。