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食の共同体自治を目指し|47キャラバン#6@福岡

食の共同体自治を目指し

 福岡でのキャラバン翌朝、「ふくおか食べる通信」編集長の梶原さんにアテンドしてもらい、まず向かった先が、福岡県うきは市の「うきはのささきくだもん農園」の佐々木裕記さんの畑。前夜のキャラバンにもご夫婦で参加してくれた。

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 農園に到着し、車を降りるや否や、まるで選挙のように、握手を求められた。

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 得意げになって案内を始める佐々木さんの説明が止まらない。

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 待ち受けていたのは、地元の佐々木さんの農家仲間たち。朝から元気で、とても賑やかだ。

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 梨の仕分け中の作業小屋。ポケマルで製作した「生産者の紹介パネル」が壁に貼り付けられてた。なんかこういうのうれしくなる。

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 うちの農園のランボルギーニ(イタリアの高級スポーツカー)に乗せて農園を案内してあげると言うから何のことかと思ったら、こういうことですね。

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 拍手で花道を送り出される。なんだこの人たちの早朝からのテンションの高さは。負けじと両手を上げて応えましたよ、はい。

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 4代目の佐々木さんは、桃・ぶどう・梨・柿・落花生を育てている。異常気象の影響で、作物を育てるのが年々難しくなるのを感じているという。

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 佐々木さんには、自分の農園だけよければいいという考えは毛頭ない。超お節介好きの佐々木さんは、地元の他の農家の苦境にも目を向けている。新型コロナウイルスの影響で、農家の既存の販路が壊滅的な状況になっている。これは、既存の販路に偏り、新規顧客の開拓を通じた販売リスクの分散をしてこなかったことに起因しているのではないか。そう思った佐々木さんは今、新たな挑戦を始めようとしている。

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 うきは市の複数の農家とチームを組み、市内の異業種(飲食店・食品加工業)とも連携し、コロナの影響を受けにくい販路・顧客開拓をする。具体的には、オンラインからの直接の消費者とのつながりを開拓、強化し、そこからリアル農業体験につなげ、さらに市内の観光・宿泊・飲食などに展開していきたいと考えている。リピーターを獲得し、ファンになってもらい、それ以上の親戚のような関係を育むことで、新型コロナウイルス感染拡大のような想定外の影響を受けても、お互いに助け合うことで乗り切れるような関係人口を生み出していきたい。それが収益を最大化し、持続可能な経営にもつながる道だと確信している。

 自分たちでコントロールできないからこそ振り回される「統制と依存」から抜け出し、自分たちがコントロールできる「自治と参加」へと、日本の食の流通システムを地域から変えていく。顔が見える消費者に売るから農家もいいものをつくる。農家の手間が見えるからスーパーの値段より高くても買う。当初、資本主義に備わっていたけれど現在失われてしまった倫理観を、近接性を担保に取り戻そうとする佐々木さんの挑戦は、地域を基盤にしながらも、地域の物理的な壁を飛び越えた「食の共同体自治」づくりとも言える。ポケットマルシェを存分に活用している佐々木さんはいう。「ポケマルができないことを自分たちはやる」。つまり、ポケマルが日本を舞台に緩やかにやっていることを、自分たちは地域を舞台に濃厚にやっていく。そんな宣言をされ、とてもうれしかった。

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60歳からの第2の人生は"ガチ農家"

 次に向かったのは、久留米市で無花果(いちじく)を栽培している「いのうえ農園」。

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 代表の井上正隆さんは今年70歳を迎えたが、農家としてはまだ若手である。大手タイヤメーカーで営業マンをしていたが、会社からの定年延長の打診を断って、60歳で一念発起。会社を辞め、農家に転身した。趣味ではなく、生産から販売まで手掛ける本気の農業に乗り出した。福岡県オリジナル品種の「とよみつひめ」という無花果を農薬も化学肥料も使わずに栽培することにした。まだ誰も成功したことがなかったが、井上さんは1年目でそれを作った。

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 人生100年時代がやってくると言われているが、ここまで全く畑違いの分野に還暦で踏み出すチャレンジ精神がすごい。白髪だけれども無花果栽培にかける思いを情熱的に語る井上さんを見ていて、サミュエル・ウルマンの「青春の詩」の一節を思い出した。

「歳を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる。」

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 井上さんは「本物とは、人をだまさんもの。自然を崩さんもの。自分の良心に訴えて恥ずかしくないもの」という井上さんが栽培している無花果。実際に食べてみたけど、こんなに瑞々しい無花果食べたのは初めてだ。そして絶妙な甘さ。生ハムでくるんで、白ワインと一緒にいただきたい逸品。そんな「いのうえ農園」の無花果も間もなくポケマルに出品されるって。楽しみである。

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人は「あいだ」に生きている

 キャラバン@福岡では、冒頭に、47キャラバンをやることの意味について説明した。
 47キャラバンをやるのは、今回で2回目。1回目は、平成が終わる年に47都道府県を行脚した。そんなことをして何の役に立つのか?と聞いてくる人がいた。正直、何の役にも立たない。でも、「意味」があるからやった。今の世の中、役に立つか立たないかみたいな話があふれかえっている。そんなんだったら、バージョンアップしたら捨てられるスマホと一緒で、もっと役に立つ人間が現れたらお払い箱になる。そんな生き方をしていたらやがて機械に置き換わられてしまうだけだろう。大事なのは、意味だ。人間だけが、自らの行為に意味付けできるのだ。それが、人間が人間たるゆえんである。 

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 今回、オンライン花盛りのコロナ禍で、あえてまたリアルの現場を歩くことにした。なぜか。それは、今だからこそ再びやる意味があると思ったからだ。私には、東日本大震災と新型コロナウイルスが地続きに見える。そのことの意味を問えるのは、自分しかいない。ならばその役割を全うしよう。そう思って、やることにした。

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 人の間(あいだ)と書いて、人間という。私たちが人間として存立するためには、人と人との間、すなわち関係性が必要なのである。例えば、高橋博之という人間が荒野にひとりぽつんと立っていたようしよう。息は吸っている。だから生物学的には生きている。しかし、これでは生きているとは言えない。目の前に相手がいる。その相手に何か働きかけ、働きかけられる。この動き、動かされることの複雑系が、人間が生きるということなのだ。喜びや感動、苦しみや悲しみを分かち合える相手がいてこそ、人間は人間として存立できる。私たちの社会は今、この間を失おうとしている。だから、生きるリアリティ(生存実感)に飢えることになる。

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 もうひとつ失われようとしている間(あいだ)がある。人間と自然の間である。私たちは自然との関わりを忌み嫌い、自然を排除した都市で生きるようになった。人間関係も自然も、自分の思い通りにならないがゆえに、常にリスクと隣り合わせである。だから、自己にこもり、都市にこもり、リスクゼロであろうとしている。しかし、他者や自然との関わりを喪失しつつある私たちは、生きることからも遠ざかろうとはしていないだろうか。私たちの体は、自然が生み出した食べ物でできている。私たちの暮らしは、他者が生産したモノやコトで成り立っている。その関わりを感じられたら、感謝の念が生まれるだろう。それが「生」を際立たせるのである。

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 私たちにそのことを図らずも気づかせてくれたのが、今回の新型コロナウイルスではなかっただろうか。感染拡大防止のために私たちの行動が制限されることによって、世界的に"人との関わりの大切さ"が叫ばれている。そして今、人々は暮らしの中に自然を取り入れ始めている。家で観葉植物やベランダ菜園を楽しむ人や、近場の山や海に出かける人たちが増えている。これから目指すニューノーマルは、デジタル一辺倒のつるつるした社会を目指すのではなく、私たちを「生きるリアリティの再生」に向かわせる方向でなければならない。

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同じ天を仰ぐ同志

 47キャラバン福岡編の舞台は、博多のど真ん中にある警固神社。福岡開催にあたっては、「ふくおか食べる通信」編集長の梶原圭三さんにご尽力いただいた。そしてこの場に、47キャラバン協賛企業のひとつである株式会社ヤマップの春山慶彦社長にも足を運んでもらった。登山アプリサービスを運営する福岡発のスタートアップだ。

 なぜ、食のポケマルに、山のヤマップなのか。それは、登り口が違えど、目指す頂は同じだからだ。人間と自然をつなぐ。それを私たちは食で、彼らは登山で実現しようとしている。春山さんとの出会いは、2014年のグットデザイン賞だった。私のプレゼンを現場でたまたま聞き、感動したと、便せんで5枚の手紙を送ってくれた。それからほどなくして初対面し、春山さんの取り組みについて聞かせてもらい、互いに意気投合。以来、同志として共に歩んでいる。

各種リンク

▼「REIWA47キャラバン」について

▼これまでのキャラバンの様子はこちら


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ポケットマルシェ CEO / 東北食べる通信 編集長 / 日本食べる通信リーグ 代表 / 岩手県議を経て、2011年岩手県知事選に出馬し、討死。事業家に転身。2019年2月カンブリア宮殿出演。著者に『都市と地方をかきまぜる』、『人口減社会の未来学』など。岩手県花巻市出身。44歳。

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