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【建築】とにかく斜めなファエノ科学センター(ザハ・ハディッド)

今でも残念に思っていることがある。新国立競技場のことだ。是非ザハ・ハディッド案で実現してほしかった。しかも最初のコンペ案である線路を跨ぐ案で!
まあこの話は長くなるのでやめておくが、日本でもザハやフランク・ゲーリーのような建築を受け入れることができる社会になってほしいと思う。

さて「日本で見られないのであれば海外に行くしかない」とばかりに、この日はハンブルクから電車を乗り継いでヴォルフスブルクに向かっていた。(ザハ建築が目的の旅ではなかったが)

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駅が近づくと、何やら煙突が見えてきた。大きなロゴでそれが何であるのかは直ぐ分かる。フォルクスワーゲン(VW)の工場だ。知らなかったのだが、そもそもヴォルフスブルクはVWを生産するために建設された自動車産業の都市らしい。

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そのVWの工場とは反対側にある駅前広場に出ると、目の前にドーンと広がる巨大な建物がある。ファエノ科学センターだ。

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科学センター、つまり展示や体験を通して自然科学を学ぶ科学館だ。どちらかと言えば子どもや家族向けの施設である。

斜めの窓を多用したデザインは、一昔前の宇宙船をイメージさせる。

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まずはグルっと建物周りを歩いてみる。

建築の構成としては分かりやすい。
地上階をピロティとして、10本の円錐形のコーン(構造体)により建物を持ち上げているのだ。もちろん工事は大変だったであろう。

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建築評論ではこのような建物を「浮いている」などと表現する人もいるが、私に言わせれば「んなこたぁねーだろ! ドッシリ構えてるだろ!」と思ってしまう。(この建築に対する批判ではない)

それはともかく、ピロティは誰でもアクセスできるパブリックスペースとなっており、隣接するアウトシュタット(VWのテーマパーク)への通り道にも使われている。しかし少々殺風景なのが残念だ。

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建物を支える各コーンには、エレベータ、階段、カフェ、イベントスペースといった機能がある。またパブリックスペースなので、例えばセミナールームなどはセンター内を経由せずとも、外から直接アクセスできる。

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それにしてもザハらしさ全開だ。
柱、窓、ドア、照明などほとんど全てが”斜め”なのだ。さすがザハ!

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ドアの建て付けはどうなんだろう? スムーズに開くのだろうか?

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エントランスもコーンの一つにある。
ドアはもちろん斜めだ。反転したサインがガラスに映る。

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受付して展示室のある2階へ上がると、

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展示室は大きなワンルームの空間となっている。イメージはこれまた一昔前の宇宙船かな? しかし子ども達の好奇心を惹く”科学館”らしいデザインとも言える。

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1階から立ち上がる柱が巨大だ。

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この太い柱と開口(窓)の少ない壁で天井を支え、柱の本数を出来るだけ少なくして、広々とした空間を実現している。天井も高い。

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ワンルームといっても、子ども目線で飽きないようにするためか、所々フロアを少し掘り下げたり上げたりして、変化を付けた展示コーナーもある。

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小さく囲われた秘密基地のような展示室も。

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でもそうしたコーナーはパーティションではなく、コンクリートで一体となって仕上げているので、後にもし改修することがあっても工事的には難しい。(多分そういう想定はしていないのだろう)

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中2階にある管理部門の事務室?は司令室のようでカッコいい!

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裏側にある通路からは、VWの工場がよく見える。

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まあそれにしてもとにかく”斜め”だらけだ。
このスライドドアは斜めに加えて、微妙に”歪み”も入れている。

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自分も斜めに傾きながら入ってしまいそうな入口。

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微妙なカーブのドア(車椅子用のトイレ)。ドアメーカー大変そう...。

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建築的には、ザハの中では比較的マイナーな作品であろうが、ヴィトラ消防ステーションに代表される初期の「鋭角」や「斜め」を多用した形状から、後の丸みを帯びた有機体の形状に変化していく過渡期の建築だと思う。実際、その両方の要素を併せ持っていた。

施設的には、大人でも楽しめるとは思うが、基本的には子ども向けの施設である。例えば私が訪問した時は、学校の授業で来ていると思われる子ども達がほとんどで、引率の先生を除けば、大人は異国のオッサンが一人(←私)であった。完全に怪しく浮いていた。
とは言え、そんなこと気にしていたら建築探訪は出来ない。


ハンブルクに戻る途中、ハノーファーで下車して、駅周辺を少し散策した。
旧市街は思いの外良かったが、

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ゲーリーのオフィスビルはイマイチであった。ご覧の通りで、これ以上でもこれ以下でもない。この建築をこのnoteで紹介することはないだろう。

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