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「全ての人が幸せに生きられるウェルビーイングな世界とは」インタビュー:前野マドカ history

幸せはいつも自分の身近にある。とは言え、つい特別な“何か”を求めてすぐそばにある幸せに気がつかないことも多いのではないでしょうか。幸福学の研究者でウェルビーイングを広めている株式会社EVOL代表取締役CEOの前野マドカさんに、幸せでいるために大切なことをうかがいました。

前野マドカさんプロフィール


EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属SDM研究所研究員、IPPA(国際ポジティブ心理学協会)会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、研修活動及びフレームワーク研究・事業展開、執筆活動を行なっている。


幸福学研究者・ウェルビーイング伝道師 前野マドカさんインタビュー

アメリカの友人から学んだ自分の人生を生きる大切さ 誰もが幸せに生きられる世界をめざして



―幸福学研究の第一人者である前野隆司教授とご夫婦で幸せとウェルビーイングの研究をされていますが、ウェルビーイングを広めようとされたキッカケを教えてください

夫のアメリカ留学を機に4歳の息子と0歳の娘をつれて渡米したのが35歳のとき。わたしは子育てのため外資系企業での仕事を辞め、専業主婦として家庭を守ることに専念していました。

夫が通うハーバード大学近くの公園で、よく子どもたちを遊ばせていました。そこには夢をもって世界中から学びにくる学生が集まっていました。

「マドカの夢は何なの?」
ある日、公園で仲良くなった女性とお話していたら、唐突にそう聞かれたんです。

「自分の子どもたちを立派に育てることです」
わたしは、夫を支えて育児をがんばろうと考えていたので、自信をもってそう答えました。

しかし、その女性はこう言ったのです。

「マドカ、それではあなたの人生を生きていることにならないよ」

強い衝撃をうけました。わたしなりに使命感をもって一生懸命、子育てに取り組んでいたからです。

母親の夢が育児だけだと、子どもに「こうあってほしい」という親の期待を押しつけてしまう。子どもが反抗期を迎えて自立したら、理想とのギャップに悩んでしまうかもしれない。子どもには子どもの生き方があることを尊重し、母親は自分の夢を叶えようとする姿を見せることがたいせつ。

その女性はこのように考えていたのです。

その日から「自分はどうして生まれてきたのか」「自分には何ができるのか」を考えるようになりました。

日本にいたころ、わたしの周りでは、自分のやりたいことよりも家庭や子育てを優先しているお母さんがほとんどでした。

家庭も子育ても大事だけれど、お母さんが充実感にあふれ笑顔で幸せでいることが、より家族を笑顔にする。

そんな思いから、帰国後に地域のお母さんたちと「子育てのビジョンを考える会」を立ち上げました。ワークショップや対話を通じて、お母さんがイキイキと自分の人生を生きるにはどうすればいいのかを一緒に考えました。

活動は地域にとどまらず、全ての人を笑顔にするにはどうしたらいいのか、と考えるようになり、夫と一緒に幸福学やウェルビーイングの研究をすることになりました。

いまこうしてウェルビーイングの研究をしているのも、アメリカの友人に自分の人生を生きることの大切さを教えてもらったからです。

―マドカさんにとって幸せとは何でしょうか

わたしは、いま現在を含めた毎日が幸せだと思って生きています。

幸せはお誕生日をお祝いしてもらったり、素敵な場所に旅行したり、特別なものだと思いがちですが、わたしはいまここに存在していること自体がとっても幸せだと思うんです。

わたしがいまここにいるのは両親のおかげですし、子どもたちと一緒に暮らせるのも夫と出会えたから。素晴らしい方々とのつながりがあって、大好きなお仕事ができていることの幸せを日々感じています。

インタビューを受けているいまもそうです。「お気に入りの香りに包まれて幸せ」「ピーチティーがすごく美味しい!」と、幸せだなと思った感情は、そのまま素直に言葉に出すようにしています。

幸せは積極的に自分から感じるものではないでしょうか。

感動や感謝を素直に表現されるすがたは、優しく温かな空気を纏っている。


―お話していると陽だまりのなかにいるような優しさに包まれます。いつも幸せな雰囲気に満ちているのはなぜでしょうか

そんなふうにおっしゃっていただけて嬉しいです、ありがとうございます。たぶん、わたしとつながりを持ってくださっている方々が、私を信じて応援してくださっている想いを日々感じているからだと思います。

わたしは、お仕事などでつながりを持った方のことを100%信じているんです。

信じているほうが私の気がラクというのもあります。ただ、お相手を信じるようにすると自分の言動が変わると思うんです。嬉しさを素直に表現できたり、たくさんの感謝の言葉が湧いてきたり。

結果的に、気持ちが伝わってお相手からも信頼していただけるようになると思います。

―幸せになりたいと願う方が大切にするといいことは何でしょうか

小学校4年生のとき、学校のことで悩んでいて父に相談したことがありました。
そのとき「悩んでいて過去が変わるならいいけど、過去は変えられないよね。次はどうしたらいいか将来のことに目を向けたほうがいいよ」とアドバイスしてもらったんです。

過去にとらわれると苦しい。未来のことを考えた方が楽しい。
父からは、ポジティブに考えることの大切さを教えてもらいました。

そのおかげもあって、夫は「マドカはいつもポジティブだね」と言ってくれます。

また、何かに悩んで決断したとき、夫はこうも言ってくれました。

「そうすると決めた自分を信じて、マドカならできるよ」

このひと言で、悩んでいた自分を許せるというか、自分を承認できたんですね。

この言葉のおかげで、自分の人生を生きると決めたわたし自身を信じられるようになったのだと思います。

―自己肯定感を高める素敵なお言葉ですね

ほかには、わたしの祖父は浄土真宗のお坊さんをしていました。家族で食事するときは必ず手を合わせて「御仏様(みほとけさま)に感謝して、いただきます」と言うのを徹底されていたんです。

子どもだったので御仏様の意味は分かりませんでしたが、毎日の習慣として、食事を作ってくれたお母さんや給食スタッフの方に感謝する日々を過ごしていました。

幸せの研究をしている今だから分かりますが、よく感謝するひとは幸せを実感しやすいと思います。

わたしは祖父のおかげで無意識に感謝する習慣が身についていたのですが、「ありがとう」や「嬉しい」といつも言っている子は嫌われないだろうな、と子どもながらに考えていました。

父が転勤族だったのもあって、学校がかわるたびに新しく友達をつくるときに大切なことを本能的に感じとっていたのかもしれません。

―これからマドカさんがやりたいことを教えてください

全ての人が幸せにイキイキと暮らせるウェルビーイングな世界をつくりたいと考えているので、やりたいことはたくさんあります。

学校教育とウェルビーイングを掛け合わせたり、働く親御さんの幸せも伝えていきたい。「ウェルビーイングダイアログカード」という、幸せを育む対話カードを夫の前野隆司と作ったのですが、ウェルビーイングに生きるためのプロダクト開発も進めていきたいです。

楽しみながら幸福度が高まるトランプ型のWell-Being Dialogue Card。52枚それぞれに幸福度が高まる問いが書かれている。

また、これからの時代は人の感性や創造性に訴えかけ、人とのつながりを大切にする「心の成長」の時代です。

日本の素晴らしい自然や工芸品、アートを広める活動や、心やすらぐ時間を過ごしてもらえる空間づくり、人とのつながりや想いを感じられる場づくりをしていきたいと考えています。

―本日は素敵なお話をありがとうございました。最後にメッセージをお願いします

「二十一世紀は心の時代」といわれています。まさにウェルビーイングの時代です。人間はより人間らしく、感性や個性、創造性を磨きつづけて、誰もが自分らしく豊かな生き方を選択できる時代です。

そのための第一歩として、ご自身のいいところや、やりたいことに気づいてもらいたいと思います。

自分にはどんないいところがあるのか、どんなときにリラックスできるのか、何に幸せや満足感を感じるのか、やりたいことは何か。そして、何かをしたいと思ったご自身を心から信じてあげてください。

自分を大切にして、人とつながり、みんなを愛する。全ての人が幸せに生きられるウェルビーイングな世界を一緒につくりましょう。


前野マドカさんのご活動はこちらよりご覧いただけます。


(インタビュー・執筆 高橋宏明)


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