見出し画像

大坂なおみvs「普通の日本人」

大坂なおみ選手が、黒人男性の射殺という事件をきっかけに「試合のボイコット」という手段で自らの意思を表明しました。

これに対し、Twitter上で「普通の日本人」から猛反発。
「スポーツに政治を持ち込むな」
「仕事よりも政治を優先するなんてプロ意識が足りない」
「映像をしっかり全部見たか?男性にも問題がある」
「BLMは胡散臭い」

なぜいわゆる「普通の日本人」と彼女の考えはすれ違ってしまうのか

※私は完全に大坂なおみ選手寄りの主張を展開しますので、不快に思われる方は回れ右してお戻り下さい。

大坂選手の主張

大坂選手の主張は以下です。


自動翻訳だと思うので、砕くとつまり
「私はテニスプレーヤーである前に一人の黒人。テニスをするよりも大事なことがある。白人中心のテニスというスポーツで私が疑問提起をすれば、何か新しい流れになるかも知れない。私は黒人が警察によって虐殺され、性や人種の面で奴隷にされた事を考えると胃が痛くなる。」
ということです。

まず先に1つ答えを言うと、大坂選手は
「人種差別撤廃運動は人類共通の解決すべき課題であり、政治ではない」と思っているのです。

この主張を見て「うわぁ賛成できない。胡散臭い」と思った人は、いかに彼女の考えの背景の詳細を考察していくので御覧ください。

スポーツと政治

日本では「スポーツに政治を持ち込むな」と言われますが、例えばアメリカでは普通にスポーツ×政治ということは起こり得ます。


そして、「〜に政治を持ち込むな」という発言自体が大きな危険を孕んでいるのです。


「〜は政治に口を出すな」という発言自体が非常に政治的であり、権力のチェック機能である民衆の意思表明が不完全になります。どんな理由があろうと、時には日本社会のルールよりも権力のチェック機能を優先しなければ、成熟した民主主義社会とは言えません。

仕事と政治

「仕事で客からお金をもらってるなら、そちらを優先するべき」

これは日本ではよく見られる「サラリーマン的奴隷根性」丸出しの発言であり、世界の潮流が全く見えていません。

実際に大坂選手自体はこのように自らの意見を表明しています。

差別や貧困、戦争といった「人類共通の課題」に対して、誰でも不満を表明する権利があり、その不満や行動に対して「お金を払っているからと仕事を常に要求する行為自体が恥知らず」なのです。プロ側がボイコットを望む際に意見を聞かなければ、社会課題への意識が高い国では投資が引き上げられ、非難され、もはや誰も味方しなくなります。

「お金さえ払えば、不満を言わずに仕事をするのがプロ」?
そんな常識は、日本でしか通用しません。
世界の課題・人類全体の課題を学び、もっと広い世界に目を向けましょう。

問題の事件

米ウィスコンシン州ケノーシャで23日夕、警官が黒人男性を背後から複数回銃撃する事件があり、市民数百人による抗議デモが続いている。州知事は24日、「治安」維持のために州兵を動員した。警官に撃たれたのは、ジェイコブ・ブレイク氏(29)


黒人男性が警察を振り切り、車に乗ろうとした瞬間に7発以上の弾丸を打たれ、一時重体になったという事件がありました(現在は容態安定らしい)。

この事件に関して、私はどちらも支持しません。故に大坂選手寄りの主張を展開する私ですが、事件の詳細が不明な以上は一切の判断ができません。

大坂選手は「黒人が権威主義的な警官の手によってまた1人殺害された。痛ましい事件だ」とおそらく考えているのだと思います。

しかし7発という弾丸の数は過剰に感じますし、現地の警察の返答も非常に遅いです。一方で詳細を知る前から「黒人が撃たれた」という情報だけで憤るのはやや早計に感じます。

BLMの胡散臭さ

BLM(Black Lives Matter)は、ジョージ=フロイド氏が白人警官に膝で押さえつけられて窒息死した事件をきっかけに「黒人の命も大事だ」ということで始まった活動です。

なのでよく言われる「BLMやAntifaはテロ集団!」は根底から間違っています。BLMは活動であり、ファシズム(全体主義)排斥運動のAntifaもまた活動なのです。活動名をTシャツに付けてるので混同される事が多いようですが、彼/彼女らは厳密には特定の組織によって組織化された集団ではないのです。
※表向きの話なので、裏では中国共産党が個別に活動をサポートしているという噂もあるが

BLMを掲げる活動家たちは、ALM(All Lives Matter)つまり「すべての命が大事だ」という理念を掲げる黒人を殺害し、民間の私有地に未許可で上がり込み、公共施設の破壊などを行っており、その活動の過激さや負の側面が非常に色濃く表に出ています。

それはそれ、これはこれ

BLMを掲げる活動家が破壊行為を行っていることは周知の事実です。
しかし、それは活動そのものの否定と直接関係性を持ちません。

「イスラム教は破壊行為を行うから信じない」と言うでしょうか?
もしかしたら「普通の日本人」はそう思うでしょうが、理念と負の側面は切り分けて考えるべきです。

例えば人を殺した集団の意見が全て悪ならば、既存の社会常識やルールは大半が悪によって構成されることになります。全ては切り分けて考えるべき問題なのです。

そして冒頭で述べた
「人種差別撤廃運動は人類共通の解決すべき課題であり、政治ではない」
これこそが一番の価値観の違いでしょう。
多民族国家では「人類共通の課題は政治ではない」のです。
なぜならば、それは解決されなければ国の崩壊に直結するため、全員が課題として意識するので対立軸が鮮明になりにくいからです。

では、「普通の日本人」とは?

上記でたくさん出てきたいわゆる「普通の日本人」とは
・政治に口を出すのは面倒くさい、胡散臭い、恥ずかしい
・多民族国家の課題が分からない
・仕事第一。人権は仕事に優先しない
・少しでも胡散臭い活動には全て協力しない
・政治に暴力は何があってもNO
・黒人は日本人じゃないと思う
・日本語を話さないと日本人じゃないと思う
・日本人の誇りも魂も伝統もない人が政治に口を出すな

というような価値観を持っている人の事です。
自分が観測した限りでは、いわゆる「保守」的な思想の人が多いです。

実際には政治に口を出さなければ政治は暴走しますし、多民族国家において差別は致命的な問題です。仕事は人権などの問題より優先させてはいけないですし、活動の問題点は理念と分けて考えるべきです。

政治が腐敗していれば暴力で政府を打倒する革命は人民の権利です(今回のBLMは当てはまらないと思うが)し、黒人だろうが英語しか話さなかろうが国籍があれば日本人です。そして黒人と日本人はどちらも両立できるアイデンティティです。当然誇りも魂も伝統も、新しいあり方に合わせてアップデートしていくべきものです。

いわゆる「保守」の人が思い描く「美しい日本」の像は、大体が明治時代以降に作られた幻想です。世界は常に変化し続けているのであり、あらゆる価値観は拘りを捨てて流動的にする方が良い。今回の件で言えば、「普通の日本人」の負の側面がBLMの負の側面に対して色濃く出過ぎた出来事だなと思います。

「自分たちの常識やルールに従えないなら出ていけ」という保守主義/排他主義は多様性を奪い、柔軟性を奪い、緩やかに国を衰退させていきます。ローマ帝国のように異民族によって滅ぼされるケースを心配する前に、まずは内省が必要です。今後は移民も益々増えていくことが確実視されているので、「日本」の概念を今一度アップデートする時が来ています。

最後に、大坂なおみ選手の益々のご活躍をお祈りしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?