入門三島由紀夫 「文武両道」の哲学
記事に興味を持っていただき、ありがとうございます。
今も尚、日本だけでなく世界の人々を魅了し続ける作品をたくさん世に残した三島由紀夫。
私は大槻ケンヂさんの影響で高校三年生の時から日本文学に興味を持ち、江戸川乱歩や太宰治、中島らも、町田康、坂口安吾などを読むようになり、たしか19歳の時にはじめて三島作品の一つである『仮面の告白』を手にとったおぼえがあります。
他にも『潮騒』を買ってはみたものの、2冊とも最後まで読むことなく、引越しのタイミングで処分をしました。
また、私が以前に抱いていた三島の印象は、最後の最後で気がおかしくなってしまった天才作家というイメージで、何だか近寄りがたい存在。
それでも、1970年11月25日に三島が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地でした演説は、チンプンカンプンで理解ができなかったものの、命懸けで何かを訴えかけている三島の気迫はひしひしと伝わってくるものがあり、私の深い魂のある部分を揺さぶらせ魅きつけるものがあると感じていました。
だから、ときどき思い出しては演説の映像を観てみる。だけど共感も理解もできない。されどもモヤモヤとした何かが残るということを繰り返していました。
そんなこんなで時は流れ、新コロ騒動で色々と世界のことや日本のことについて考える時間が多かったのがキッカケだったのでしょうか。
2021年11月3日に三島が日本に抱いていた憂いの感覚がはたと共感できるようになり、長年のモヤモヤとしていた感覚が晴れた心地になったのでした。
入門三島由紀夫 「文武両道」の哲学
そんなことがあり、三島に関する情報をあれこれ調べていると、大学教授で文芸評論家の富岡幸一郎著『入門三島由紀夫 「文武両道」の哲学』(ビジネス社)を発見。
ちょうど私は10月から杖道という全日本剣道連盟に加盟している武道の稽古をスタートした時期でもあったので、Kindleで購入して読みはじめました。(三島は剣道をしていた)
本書は三島の作品や行動の根底に流れている「哲学と思想」について分かりやすく理解できる1冊。
そして読了後は、三島が予見し、憂いていた日本の姿は没後51年の現在、悲しいかな見事に的中しており、今も尚、私たちに強く訴えかける力があると感じました。
このまま行ったら「日本」はなくなってしまうのではないか・・・
本書には三島の著作から文章を引用している箇所があり、51年前から現代の日本の姿を予測していた三島の先見の明にハッとさせられる表現が多々あります。
さらに著者の富岡先生も以下の文章のように、鋭く本質を捉えた内容をお書きになっています。
他にも大塩平八郎のことが中心に描かれている三島の「革命哲学としての陽明学」を引用している文章も興味深い。
皮肉なことに、日本は生命至上主義と謳いながらも令和2年の自殺者数は21,081人。
この数字は厚生労働省が発表している新コロのおよそ2年分の死亡者数よりも多い数字です。
人生100年時代といわれている昨今ではありますが、いくら寿命が延びたとしても、空虚な魂が宿る肉体の延命は果たして健全なものなのか?そこには人生の充実があるのだろうか?
生きながらにして本当の生命の価値を見失っているという指摘は色々と考えさせられるものがあります。
また、国家という視点でいえば、戦後の日本は外圧にひ弱な国であり自国で考えられない、自国の意志で行動できない国になっています。
国がそんな状態なのだから、そこに生きる大半の大人は自分の頭で考えて行動ができない人が増え、その子供も同じように育っていく。
私はそれらが新コロ騒動で露呈したのを見るにつけ、51年前に三島が世に訴えた日本への憂いを共感するに至ったのでした。
とはいえ、東洋医学では「陰極まって陽に転ずる」という言葉があるように、このような異常な時期というのは大きく変化できるチャンスとも捉えることができます。
私は日本が好きだし、日本のことを心から尊敬している海外の仲間たちをたくさん知っています。
だから、少しでも国や社会が前向きに舵をとっていけるよう願い、それを自身の行動にも反映し、同じような志を持っている方々と繋がっていけるよう努めていきたいです。
さて、他にも本書には文化や天皇についてなど、読みごたえのある内容が満載で、色々と自分の中の見解を見直すキッカケとなる一冊でした。
そして本書の最後にはタイトルにある「文武両道」の哲学について三島のこのような文章を紹介しています。
ご興味のある方はぜひお読みください。
富岡幸一郎著『入門三島由紀夫 「文武両道」の哲学』(ビジネス社)
追伸
本書をTwitterで紹介したら、ご丁寧に版元のビジネス社さまがコメントをくださりました。
ビジネス社さまもnoteをしていて、記事を読んでみると京都大学の藤井聡教授が編集長をしている『表現者クライテリオン』の発売もしていることを知り興味津々です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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