第3回:ビートルズとインド・ヒンドゥー音楽
Spotify Podcastの新番組「Happy Sad Song」。
サウンドクリエイターの草野とトリリンガル・シンガーのジナが世界中の様々な音楽を紹介してゆきます。
第3回目の特集は「ビートルズとインド・ヒンドゥー音楽」。
イギリスのロックとインド音楽の結びつき、融合を感じさせるサウンドをご紹介致します。
[今回ご紹介する楽曲]
1.Govinda / Kula Shaker
インド・ヒンドゥー音楽や60年代のサイケデリックロック・サウンドに傾倒するバンド、Kula Shakerを代表する一曲です。この曲を含む1996年リリースのデビューアルバム「K」はUKチャート1位を取り、日本でも数十万枚のヒット作品となりました。
Kula Shakerは1999年に一度活動を休止した後、2005年に再結成し復活を遂げ現在に至るまでコンスタントにアルバムをリリースしています。
(2002年にはリーダーであるクリスピアン・ミルズが結成した3ピースバンドのThe Jeevasが活動をスタートさせ、2004年に解散。音を重ね過ぎずドライブ感のあるギター、ベース、ドラムの3ピースサウンドはKula Shakerと異なる魅力があり、サイケデリックから少し距離を置いてベーシックなロックサウンドとカントリーミュージックやアメリカ文化に接近した内容となっています。)
Govindaに出てくるメロディの源流と考えられるのは、1970年代にビートルズのメンバー:ジョージ・ハリソンがプロデュースしたThe Radha Krsna Templeが歌う「Govinda jai jai」で、同様のメロディを聴くことができます。
2.Govinda jai jai / The Radha Krsna Temple
ヒンドゥー教の僧侶達が集うグループであるThe Radha Krsna Templeのアルバム「The Radha Krsna Temple」は1971年にリリースされ、ビートルズのジョージ・ハリソンによってプロデュースされました。
歌の内容はヒンドゥー教の神様であるクリシュナ神を称えるものとなっています。この楽曲とKula Shakerが引用している「Govinda」を聴き比べると、どの様にバンド・アレンジで原曲のサウンドを置き換えているかが興味深く感じられます。
3.Radhe Radhe / Kula Shaker
Kula Shakerの2ndアルバム「Peasants, Pigs & Astronauts」からの一曲です。
このアルバムは多額の予算を投入したにも関わらず、イギリスで前作ほどの売り上げをあげられなかったために、バンドは一旦この2ndアルバムリリース後に活動を休止することになります。
しかしながら、アルバム全体のサウンドを聴いて個人的に思うのはトータルとしてアレンジや世界観が洗練されていて、曲間に使われるSE(効果音)の細部に至るまでクオリティの高い素晴らしいコンセプトアルバムだという事です。日本では十万枚を超えるヒット作になっており、日本のリスナーが純粋に音に耳を傾けて良い評価を下していた作品ではないかと感じます。
1stアルバムよりもスケールが大きくなった音像は、サウンドデザインという面で、バンドが表現しようとしている世界観を緻密に構築しているように思います。なかなか、こういうアルバム作品は簡単に作れるものではないのではないでしょうか。
4.Love you to / The Beatles
1966年リリースのBeatlesによるアルバム「Revolver」からの一曲で、
シタールやタブラ等のインド楽器が多用されているジョージ・ハリソン作の楽曲です。
ジョージ・ハリソン自身もインドの高名なシタール奏者であるラヴィ・シャンカールから楽器の手ほどきを受け、インド文化や思想に影響を受けた一人でした。(ジョージはビートルズの楽曲内でもインド楽器を用いた作品を残しており、ビートルズ楽曲の多様性の一つとして貢献しています)
同アルバム「Revolver」収録の楽曲「Tommorrow never knows」でもインド楽器のタンブーラと思われるサウンドが曲全体で使用されており、サイケデリックな効果を増しています。
[Happy Sad / 草野洋秋 プロフィール]
Happy Sad ホームページ:
- HAPPY SAD / Sound designer Hiroaki Kusano (happysadsong.com)
作曲作詞、歌、楽器演奏、録音、ミックスまで一人で行うというスタイルで活動する サウンドデザイナー/シンガーソングライター。2013年、表参道ヒルズにて開催されたMTVとLenovo 主催のクリエイターコンテスト「CO:LAB」にて、自作曲 「Everyday」が国内DJ部門優勝/ファイナリストに選出される。
並行してゲーム作品のサウンドクリエイター職として多数の作品でサウンドディレクションとサウンド制作に参加している。
(Netease Games, Funplus, NHN Playart株式会社, 株式会社スタジオキング,
株式会社ノイジークローク等のゲームパブリッシャーやサウンド制作会社においてサウンドディレクター/サウンドデザイナーとして数多くのコンテンツ制作に関わる)
近年では、CM広告音楽やTV番組BGM、海外アーティストの楽曲リミックス制作等にも参加。BGMや効果音の制作、映像に対して音を付けるMA作業、そして作品全体のサウンドイメージを提案 / 映像側や企画側の要望をヒアリングして音に落とし込むサウンドディレクション業務まで包括的に対応。