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良いUXこそ市場シェアを握る鍵


昨今の流感騒動でオンライン会議ニーズが増えた。今Zoomが一番人気である理由は「不安を感じない」からである。イノベーションが世の中に受け入れられるには不安の解消もあわせてデザインする必要がある。

オンライン会議ブーム

昨今の流感騒動により、卒業式を取りやめた学校が多発しオンラインで入社式を開催する企業も出たと聞いた。オンライン会議システムのニーズは急上昇である。もちろん全社員にシスコの高額な会議システムを支給することはできないので、主流はウェブサービスとしてのオンライン会議システムである。

ウェブサービスによるオンライン会議システムの有名どころといえばGoogle Meet, Microsoft Teams, Zoomであるが、今の一番人気はZoomである。今Zoomが一番人気である理由は概ね以下の理由であると考察している。

・会議主催者以外アカウント登録不要
・動作確認手段を目立つ場所に配置
・ウェビナーでZoomを使っていたユーザーの流入
・くちコミによるアーリーマジョリティの流入

これらを一言でいうと「不安を感じない」である。不安の解消というUXデザインを徹底した努力の賜物であるといえる。

不安の解消というUXデザイン

不安の解消はUXデザインにおける大きなテーマの一つであった。

例えば、Amazonの「新規会員登録の際に住所とクレジットカード番号を要求しない」という仕様は有名な事例である。新規会員登録時点では、ユーザーはAmazonに全幅の信頼を置いているわけではない。そのような企業からクレジットカード番号の記入を要求されることは、ユーザーにとっては著しく不安な出来事であり、それだけでユーザーの離反を招く。だからAmazonでは最初の発注までは住所とクレジットカード番号を要求しないのである。

さて、Zoomの仕様を改めて確認しよう。

「会議主催者以外アカウント登録不要」という仕様は、「登録手続きという面倒な作業の省略」の他、「個人情報を他者に公開せずにすむ安心感」に繋がっている。安心の第一歩である。

「動作確認手段を目立つ場所に配置」という仕様は、「機材不良でオンライン会議に参加できない不安感の解消」に繋がっている。もちろん各社とも動作確認手段を用意しているのだが、Zoomでは、それがアプリ画面上の非常に目立つ場所に配置してある。機能の有無ではなく、不安を感じている初心者の目につくところに動作確認手段を配置し、不安を解消してあげることが重要なのである。

「ウェビナーでZoomを使ったユーザーの流入」について、そもそもZoomはウェビナー(オンラインセミナー)に強いツールとして売り出したため、セミナー主催者・セミナー利用者としてのユーザーが多かった。彼らはすでにZoomアプリの操作に慣れていたため、オンライン会議でも不安なくZoomを使うようになった。

これらのユーザーは、くちコミとしてZoomの良い評判を世間に流布するようになる。この良い評判が「くちコミによるアーリーマジョリティの流入」を引き起こし、市場シェア拡大につながるわけである。

イノベーションに必要な不安の解消

オンライン会議システムのような新規性の高い製品には、購入時の不安はつきものである。これまで企業は宣伝広告だけでその不安を解消しようと試みてきた。しかしそれでは不充分なのである。製品やサービス自体に不安を解消する工夫がなければ、高い顧客満足度を得ることはできない。特に基本無料が常識化したウェブサービスの世界においては、ささいな不安がユーザーの離反を招くため、不安を解消する工夫は必須である。

これはイノベーションにも全く同じことが言える。新規性の高いイノベーティブな製品には購入時の不安はつきものであり、ユーザーに受け入れられなければその製品は存在しないも同様である。イノベーションには不安の解消というUXデザインもまた必要であることを忘れないでいただきたい。

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