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【エッセイ】「そんなことないよ」待ち?


 最近、耳にする言葉がある。
『「そんなことないよ」待ち』とか『「そんなことないよ」カツアゲ』。
「自分〇〇だから…」
に対して
「そんなことないよ。」
と意図的に言わせることだそう。
私は言わせてしまったことも、言わされたこともあり、耳が痛い言葉だ。
身に覚えが全くない人はいるだろうか。


私が以前、キックボクシングのジムに通っていたときの話だ。
そのジムで、会うと挨拶したりレッスン開始までの時間に世間話をする程度だったが、一人少し仲良くなれた女性がいた。
彼女は出会ったときからモデルのような体型でずっとその体型をキープしていた。
あるとき、レッスン前に彼女と話していると
「痩せたいんですよね。」
しっかりとした声音が聞こえた。
私は思わず「もう十分細いから痩せなくていいですよ!」と言いそうになった。
でもそこで、ふと彼女が【いつでもジムに来ていいコース】に入っていて、時間が取れればいつもジムに来ていると前に話してくれたことを思い出した。
そしてやりたいことがあると。

「もう十分細いと思いますが、なりたい体型とかあるんですか?」
問いかけると、
「ガリガリになりたいんです。人形くらいの!」
しっかりとした声音が返ってきた。
運動不足だしなー、キックのフォームきれいになったらいいなー、痩せたら万々歳!なんて思っていた私と比べるのが烏滸がましいくらいよっぽどビジョンがハッキリしている。
幸い、私のようなゆるゆるのビジョンでも歓迎してくれたジムだったので、私のゆるゆるビジョンでも間違いではないし、彼女のビジョンも間違いではない。
もし、健康面であったりジムの規則で間違いがあればトレーナーさんたちが正してくれるだろう。
彼女とはその日レッスンが始まるまでお互いの理想の体型について話し合った。


最近、耳にする言葉。
『「そんなことないよ」待ち』とか『「そんなことないよ」カツアゲ』。

でも、会話の流れだけで「これ『「そんなことないよ」待ち』だ」と決めつけて、私がキックボクシングで知り合った彼女のように、自分のなかにしっかりとしたビジョンがあって発した言葉に対して「そんなことないよ。」だけで片付けてしまっては勿体ない。
意図的に言わせたいと思っている人には意地悪になってしまうかもしれないが、「どうしてそう思うのか」、「その人はその先に何が見えているのか」、楽しみながら会話をしていきたい。
そして自分自身が「『「そんなことないよ。」待ち』だ」と片付けられないように、ゆるゆるビジョンを引き締めていかねば。


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