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[旅行記] 酔鯨の蔵元へ

高知のお酒といえば、酔鯨がまず頭に思い浮かぶ。

名前でインパクトがあるからか、はたまた最初に飲んだ酔鯨の、その独特の味が印象深かったからか、高知といえば酔鯨、というような思考回路が出来あがってしまっている。独特の味、というのは、決して良い意味でもなくて、なんだか不思議な苦味のような酸味のような、ちょっとネガティブなニュアンスがあったからなのだけれど、記憶に残る味というのはこういうひっかかりがあるものの方が多い。

最近の酔鯨は造りも味わいも以前とは大きく変わっていて、とても美味しい吟醸酒を安定的にリリースしている。美味しいのだけれど、そこまで個性的な味わいでもないように思うのは、安定度ゆえだろうか。

なんだかディスってしまっているように見えるけど酔鯨は好きなお酒なので、蔵元には是非訪れてみたかった。2018年に高知市の西、土佐氏に新しく作られた土佐蔵はコンクリート造りのエアコン完備。通年で吟醸酒も仕込むことができる最新設備の整った蔵。いったい中はどうなっているのだろう、と気になっていた。

なお、見学中は荷物も預けて写真などは一切禁止。稼働中な部分もあるので、これは仕方のないこと。

入口から受付まではモダンでおしゃれなショップになっていたけれど、いざ製造現場に入ってみると様相は一変して、無機質な灰色の世界に。コンクリートとステンレス、あとは水と米くらいでほとんどの色のない世界。雑菌対策としてもステンレスは効率的で、温度管理、衛生管理が徹底されている。

大きな精米機、秒単位で細かく指示される洗米、効率的な蒸し、最も手のかかる製麹も自動製麹棚で省力化。とにかくすごい。こう見ると、日本酒もひとつの工業製品だ。

なのだけれど、肝心の出来栄えを見定めるのは人間がやっていて、ここは機械に置き換えるわけにはいかない。それだけではなくて、各工程でも対応しているのは人間だし、細かい指示を入力するのも人間。その日の天候や米の状態に合わせて調整しているそう。機械はあくまで道具なのであって、造っているのはやっぱり人間。機械が作っているのではない。

これまで見てきた日本酒の蔵というと、本当に昔ながらというようなものではないにしても、ここまで最新鋭な設備ばかりの蔵は見たことがなかったので、圧倒された。効率的な方法を求めていくとこうなるんだな、と。

途中、ガイドさんにはいろいろと質問をさせていただいて、快く答えて頂けた。ありがとうございました。

ツアーから戻ってきた後は試飲……なのだけれど、自分はドライバーなのでお酒は飲めず。仕込み水が飲めれば良いな、と思っていたので、まさに仕込み水を出していただけたのはありがたかった。それ以外にも、ソフトドリンクに甘酒も付けていただけた。

仕込み水は、さすがにまろやか。でも、まったくひっかかりが無いかと言われるとそうでもない、といったくらいには硬度を感じる。

甘酒が美味しい。米と米麹のみで作られたものだとか。いくつか市販のものも飲んで来ているけれど、こちらはやや甘さ控えめ、代わりにどっしり濃厚。人によっては飲みづらい、と思えてしまうかもしれないくらい。自分はこういうの好き。

500円で試飲とおちょこのお土産付き、という見学。かなり細かい説明があって、いろいろと話を聞きながら酒造りについて理解を深められる。しかも設備は最新鋭。大人の工場見学として、これ以上のものはそうそう無いのでは。

今度また、地元の酒屋で酔鯨を買おう。

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