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サイボウズIRオープン面談の舞台裏

はじめに

先日、サイボウズさんとのIR面談の機会をいただきました。サイボウズさんは先進的なIR活動をされていて、その中で「IRややオープン面談」という、面談の議事録がログミーファイナンスで公開される形式があります。
個人的に、上場企業と機関投資家のコミュニケーションはもっとオープンにすることで双方にメリットがある(かも)と感じていることもあり、今回はややオープン面談をお願いしました。

折角なので、投資家側の舞台裏もややオープンにしてみたいと思い、noteを書きます。

経緯

今回面談を依頼したのは、今年に入って改めて「すべての人が投資を味わえるエコシステムを共に創り、豊かな社会に貢献する」というミッションを立てて活動を始めていることが要因となっています(このミッションについてはまた別のnoteで書きたいと思います)。
私は2020年10月にサイボウズさんの株主Meetupという企画に参加した時以来、とても個性的な企業だと感じていました。

「新たなミッションの下、自分が魅力を味わってみたい会社はどこだろう」と考えた時に、ぱっと頭に浮かんだのがサイボウズさんでした。そこでサイボウズ式の記事や、社員の方のポッドキャスト、経営陣の著書に触れてみると、直接お話を聞いてみたいという気持ちがむくむくと沸き上がりました。
そう思ったのは、情報をつなぎ合わせると、「想い(わがまま)とパーパス、基本法則を核に、カルチャー、手法、制度、オペレーションが、整合性高く形作られ、都度ブラッシュアップされている」ように感じたからです。下の図が私なりの整理です。

面談内容

今回の面談での主な質問事項は、こんな感じです(具体的な内容は、よろしければログミーファイナンスを見てください)。

  • パーパスの背後にある青野さんの想い

  • 経営の基本法則(人は理想に向かって行動する)の意味、効用

  • 想い、基本法則を踏まえた、事業領域における理想像、事業展開方針、競合比較

  • 想い、基本法則、事業領域特性を踏まえた、ステークホルダー(社員、パートナー、株主)との関係性のあり方

全体としては、私が個性的だと感じた会社のあり方が、どういう構造でできていて、個性的であることが事業目的を達成する上でどう整合的なのか/でないのかについて、理解を深めたい(味わいたい)ということです。

今回は下の氷山モデルでいうと、ミッション・バリューと、事業領域(ドメイン)、組織・人のところに絞って質問をしています。

(onyxprj/PIXTA)

そうなっている理由の一つは、投資家の常識に一見反するような行動・発言によって、サイボウズが株式市場で適正に評価されにくくなっているように私は感じていて、その背後にある構造とその合理性・効用を理解することが、投資判断をする上で欠かせないと感じたからです。
(それ以外に、自分が一番知りたいのがそこであり、時間の制約を考えるとそれ以外は聞けない、という個人の欲求(わがまま)も大きいです)

面談後の感想

ポエムみたいになってしまいますが、面談後に投資という観点で感じたことを書きます。
一点目は、お話を伺って経営の重要な要素について解像度が上がった上で、これだけ整合性がとれていると感じることは、企業規模を考えるとかなり稀で、相当な試行錯誤/ご苦労があるのだろうと思いました(青野さんも面倒なんです、とコメントされていました)。
そして、それが構造的な健全さや優位性(という表現がいいかどうかはわかりませんが)になっていると思いました。世の中の慣習や一般的なあり方に囚われず、一つ一つ理想に照らしたあり方を探す実験を続けてきたことで、形成されているのだと思います。
そう考えると、売上・利益を最優先にしないと公言する、取締役を社内公募する、といった投資家の常識からすると変わった行為に見えるものは、こうした構造を生む営みの一部分なのだと感じました。ひずみや無理の少ない健全な組織を作る上で表出するものとして、必ずしも目くじらを立てたり、簡単に投資検討対象からはじく理由にはならないのかなと思います。

二点目として、実際の事業運営上、業績をどういう時間軸や観点で取り扱われているかを伺ってみたいと思いました。2021年の株主会議の動画を見ると(3時間08分30秒~3時間14分40秒あたりです)、事業面と管理面の責任者の方が、業績責任のある立場としてちゃんと見ているから安心してください、という趣旨のことをおっしゃっているように思うので、その背景や具体的な考え方について伺えたら、投資家が感じる不安も軽減されかもしれないと思いました。

三点目として、これはサイボウズさんというよりは一つ抽象化した話ですが、「株主価値の最大化や業績拡大を最優先しない企業は投資対象にならないのか」というのは重要な論点だと思いました。過度な単純化にはなりますが、「株主価値・業績を最優先にするorしない」×「実際に価値・業績が伸びるor伸びない」、という4象限で考えてみます。
まず、「株主価値や業績を最優先にする」側の企業です。多くの投資家が望むのは、最優先にする×伸びるだと思います。一方で現実には、最優先にする×伸びないという企業も当然有意に存在します。最優先にすると公言していれば、ガバナンスに関するある種の不確実性は低減すると思いますが、投資のリスク全体で見た時にそれがフィルターとしてどこまで重要なのかという問いが立ちます。
次に、「最優先にしない」側の企業について考えます。こちら側の企業に投資をすることは、最優先にしない×伸びるという可能性を信じることになります。これは一見非合理的に見えると思います。ただ、最優先にしないことがその企業の個性の表出であり、その個性が生み出す価値が社会に求められ、結果として業績が伸びるということは、「合理的にあり得ないこと」ではないと思います。実際に業績が伸び、(ここは重要なポイントですが)最優先ではないにせよフェアな分配を株主が受け取ることが出来れば、経済的にも満足できるリターンが得られることになります。

(文章で触れていない、最優先にしない×伸びない、の企業は、最優先にしていないから伸びていないのか、それ以外の要因が大きいのか、という観点で検証価値がある)

ここからは完全に個人的な見解ですが、社会のあり様が変わっていく中で、「最優先にしない」側の企業が増えていくことはあり得る未来だと思います。もっと言うと、社会のあり方の変化を機会にできる企業には、「最優先にしない」側の企業がかなり含まれてもおかしくないと思っています。
もし仮にそうなるとすると、今から「最優先にしない」側の企業について考えを深めておくのは、投資家にとって無意味ではないと感じます。その時には、やや性悪説的な今のガバナンスに関する考え方を再考し、それに基づく小さな安心を少しずつ手放してみるというのも一つの選択肢になり得ると思っています。

最後に

今回お忙しい中、快く面談を受けてくださった青野さん、田中さん、山見さん、本当にありがとうございました!。サイボウズさんの作ろうとする未来には個人的に共感する部分が多いと感じています。ぜひ今後ともよろしくお願い致します。

また、もしオープンIRを検討されているIRご担当者の方がいらっしゃったら、お気軽にお声がけいただけたら嬉しいです。ご連絡はこちらにお願いします。
連絡先: contact@rfipte.com

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