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僕ら花束みたいに寄り添って

8月31日で夏は終わらない。
9月に入っても30度越えの日々が続き、入道雲の輪郭もますますハッキリしたように思えるほど。
いつになったら涼しくなるのか、そんなまだまだ夏が続く島に彼女が遊びに来た。

彼女を迎えに行くまでの朝方の海が綺麗だった。

「夏が終わる前に島に来て欲しい」
という僕の要望をのんで、わざわざ会いに来てくれた。車で空港まで迎えに行き、1ヶ月ちょっとぶりに再開した彼女は長かった髪を肩くらいまでバッサリ切っていた。

めちゃめちゃ僕の好みになっていたから、少し戸惑ってしまって、
「なんかよそよそしいなぁ〜」
と言われた。が、これは会う前に髪を切るなんて可愛いことをするからだ。

3泊4日で来た彼女を楽しませようと、ツアーを組んだり、いろんな場所に連れて行ったり、美味しいものをたくさん食べたりした。


彼女と食べるご飯はいつもの2倍美味しくて、映る景色はいつもより鮮明に感じてしまう。
単純な自分に少し呆れて、そしてこの気持ちが持てることに嬉しくなった。


島で1番綺麗だと思っている海にも連れていった。
悠々と泳ぐ魚たちに混じって、僕らも泳ぐ。
吐いた息が水面に向かってキラキラと輝きながら登っていく。
自由そのものだと思った。

最終日の夕方、僕は彼女と夕陽を見ると決めていた。島で暮らしている中で1番好きな時間帯だ。
昼から夜に変わる時の空のグラデーション、肌を通り過ぎる風が少し冷たくなるあの感覚。

この日の海は凪だった。

「僕は、君を凪みたいだって思うんだよね。一緒にいると優しい気持ちになって、穏やかな時間が流れるから。」

彼女は嬉しそうに

「私はお風呂みたいやと思うけどな。近くにいたら心があったかくなって、ほかほかする」
と満足気に返してくれた。

彼女の気持ちが顔に出るところが好きだ。

「じゃあお風呂入んなくていいじゃんね」
「それとこれとは違うやん」
「そうだ、今度温泉行こうよ!」
「えぇ!めっちゃいいやん!天才?」

僕らの遠距離はまだまだ続きそうだから、これからも仲良くやろう。
僕ら、花束みたいに寄り添って。

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