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最初よりも高い場所に~2023年2月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。2月は、2冊。

1 ラベルのない缶詰をめぐる冒険 A.シアラー作 金原瑞人訳

ファーガルのひそかな趣味は、スーパーで安売りされるラベルのない缶詰を集めること。
ある日、カラコロ音のする缶詰を開けると、そこには金のピアスが入っていた。さらに別の缶詰からはもっと驚く物が出てきた。

同じ趣味のシャーロットの缶詰からも驚く物が。いったい誰が?なぜ?
そんな時、突然ファーガルがいなくなった。

日本では、「ラベルのとれてしまった缶詰」なんか 売ってないよなあ。イギリスでは、売っているのかなあ?と、のんきに読んでいたら・・・


「えっ?」


「何、このお話??」


「ミステリーなの???」


と、思いもよらぬ展開に のんきな気分がふっとんでしまった。

はっきり言って、(最後の最後まで)気味が悪い話。でも、読むのはやめられなかった。

A.シアラーの発想の豊かさ、そして金原瑞人さんの翻訳のうまさを感じた。

絵本以外に、翻訳ものはあまり読まない私なのだが、この本に出会って もうちょっと翻訳ものを借りてこよう と思っているところ。


2 卒業するわたしたち 加藤千恵

突然の母の再婚話に驚く27歳の娘。
「推し」のアイドルが、グループを脱退する。その最後のコンサートに臨む女子高生。
吹奏楽部の後輩に気持ちを伝えられないまま卒業していく中3女子。

「卒業」は、学校からだけじゃない。
13の短歌とともに13の様々な「卒業」をえがいた短編集。

4月になって、大学生になっている自分を、全然想像できない。ほぼ毎日、超混んでいるバスに乗って、学校に来て、つまんない授業を受けて、友だちとしゃべる生活がいきなり終わるなんて、卒業式を迎えても、全然信じられない。

「胸に赤い花」

そう、私も同じようなことを思った。

小学校の卒業式でのことだ。
前日まで「卒業」に対して、さびしさも、感謝も、悲しさも、とにかく、何の感慨も もっていなかった私。
それなのに、卒業式当日になって 突然
「もうこの学校に通わないなんて、信じられない」
と 動揺してしまった自分がいた。

中学、高校、大学の卒業式に、自分が何を思ったか全く思い出せないのに、小学校の卒業式の時 抱いた気持ちを、呼び起こしてくれたお話だった。


初めてできた逆上がりの描写も印象に残る。

一回転じゃないんだな、と思った。逆上がりは 同じ場所に帰ってくるんじゃなくて、最初よりも高い場所にたどり着く。逆さになった世界が また戻り、ここからしか見えない視線を手に入れる。

「引力に逆らって」

最後に逆上がりができたのはいつだったろう?
「最初よりも高い場所にたどり着く」
ほんとにそうだ。高い鉄棒であればあるほど、最初よりぐっと高い視線を手に入れられる。

目の前の世界は鮮やかに変わる わずかに足を踏みだしたのなら

13のお話は、それぞれひとつの短歌から始まっている。お話を読み終わって もう一度短歌に戻ると、受ける情景が広がっていた。


1日の最高気温が 5℃ にもなった。
道路も、主なところは、すっかり雪がなくなり、運転がとっても楽になった。
例年より早い春の訪れで、嬉しいことこのうえない。

今週は、冬の間行けなかった ちょっと遠くの図書館へ行ってみよう。
行けなかった間、ピックアップをしていた借りたい本は、40冊を超えている。
どれから借りてこようか、また嬉しい悩みの日々である。

読んでいただき ありがとうございました。