見出し画像

アスパラはキジを隠す~2023年3月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。3月は、3冊。

1 きじかくしの庭 桜井美奈

ある高校の片隅にある 荒れ果てた花壇。
その花壇に植えられたのは、オランダキジカクシ(アスパラガスの和名)。
傷心の高校生たちと、一人の教師の6年にわたる物語。

悩める高校生・・
付き合ってた彼氏が、同じクラスの女の子と付き合い始めた。
親友と仲違いしてしまった。
学校にも家にも居場所がない。

そして悩める教師・・
長年つきあっていた恋人と別れたが、やっぱり・・

それぞれの悩みは、よくあるものかもしれない。
でも、どんなによくある悩みだとしても、当人にとっては、このうえもなく重大。

辛いとき、悩んでいる時に、居場所があるということがどれだけ助けになるか。悩める高校生たちにとって、大事な居場所になったのが、花壇だったというのは、野菜や花を育てるのが好きな私としては、ちょっと嬉しい。
草取りって大変なんだけど、無心になれる作業でもある。

アスパラは、収穫の時期を過ぎるとふさふさ茂る。観葉植物のようで、以前、栽培していた時は、時々切り取って花瓶にさしていた。
そのふさふさした葉っぱ(のようなもの)で、キジも隠れるから「キジカクシ」なのね。


2 六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成

IT企業「スピラリンクス」の新卒採用。
「6人の中から一人の内定者を決める」というのが、最終選考のディスカッションの課題。
それまで、「仲間」だった6人は一気にライバルとなる。さらに、その議論の最中、それぞれの過去の罪をあばいた6通の封筒が見つかる。犯人は誰か、そしてだれが内定を得るのか。

「おもしろい」と聞いていたが、全くそのとおりで、途中でやめられず一日で読んでしまった。

何度も何度も予想を裏切られた。
まず、語り手が誰だかわからなかった・・というか、予想していた人と違った。
「犯人」にいたっては、全くわからなかった。

5人のチームワークの良さに ほっこりして読み進めていたのに、それが、一気に崩れ去る。
「就活生が 内定者を決める」という、残酷とも思える グループ討議。
どうなるんだろう、どうなるんだろう・・・と、はらはらして読んでいた。

はらはらはしたが、最後に、それぞれの「罪」には、理由があったことが明らかになったことで、穏やかな気持ちで読み終えることができた。


2 明日へつながる5つの物語 あさのあつこ


自分の命と向き合うこととなった雄一。家族の前では決して泣くまい と心に誓っていたが、娘の結婚式で・・。(「この手に抱きしめて」)

幼い頃、桃畑で母に置き去りにされた美枝。そんな美枝に、母はもう長くないと連絡がくる。(「桃の花は」)

時代小説あり、SFもありの5つの物語。

5つの中で一番気に入ったのは、「この手に抱きしめて」

病気をして、今まで煩わしいと感じていたことや、なにげなく行っていたことが どれほど幸せなことだったか、ありがたいことだったか、そして自分は幸せだと、気づく雄一。

生きるとは美しいものに出会えることだ。咲き誇る花に、控えめで清楚な香りに、澄んだ空に、人の思いやりに、かけがえのない日々に気づくということだ。気づいた自分を誇らしく思えることだ。

雄一の この言葉が、とても心に残った。最近、生と死を考えることが多かったからだろう。
いつもの暮らしの何気ないことが、いつものようにできることに感謝したくなるお話だった。



4月から始まったNHKの朝ドラ「らんまん」。
一週目の題名が「バイカオウレン」と表示され、さすが、植物学者・牧野富太郎がモデルのお話だなあと思う。
(この後も、いろいろな植物の名前が題名になるようだ。)

さらに、番組の最後に一瞬うつる画像が、1日目ヤマトグサ、2日目ユキモチソウ、3日目ワカキノサクラと やはり植物。
「ヤマトグサ、見たことないなあ。」
「ユキモチソウは、何か似ているの見たことあるなあ。あ、マムシグサだ」「ワカキノサクラていうサクラもあるんだあ」
などと、 最後の一瞬も楽しめるドラマになりそうだ。
 

読んでいただき ありがとうございました。