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【コラム】カウンセリングのセッションではどのような応答が行われるのか その2

カウンセラーは相談者と同じ痛みを感じながらも、その思考は冷静さを保っているというところに相談者を支援できるということがあります。

これが家族や大親友になると完全に相談者に感情移入してしまい、「そうだ!それはおかしい」と感情を膨張させる言葉を渡したり、「それは大変だな、とにかくお酒を飲もう!」などといった気晴らしの行動誘導が行われることもあります。

さらに悪いケースだと相談者が話を始めて間も無く「それはあなたが良くない」という評価をしたり「〇〇をすれば良いのだよ」といった一方的なアドバイス、指示、ときには命令が渡されて、相談者の心の傷がより深くなることもあります。

カウンセラーは同じように相談者の思考のエラーを見つけたとしても、それに対して、良いか悪いかという評価はしません。それを相談者の個性として、お互いに認識するところから始めます。
すると相談者は「こうに決まっている」「これが間違っている」「これは常識だ」「これがおかしい」といった自分の中での正義について語る場面が出てきます。
そのときカウンセラーから相談者に「あなたが会話していた相手はどう考えていたと思いますか?」といった質問を渡すと一時的に視座転換がおき、少し思考に揺らぎが起きます。

どんな関係性であったかと問うと、親、上司、先生など上下関係を伴う権威との話であったり、パートナ、共同経営者など一心同体とも言えるわかり合っているはずの関係だったりもします。

そうした場面でカウンセラーは相談者の言葉で話を進めます。

相談者が自分自身の力でエラーに気がついていく支援を行うのカウンセラー

すでに相談者とカウンセラーのここまでのやり取りでも、相談者はある程度、自分自身の思考の癖や、ロジックのエラーに気がつき始めていることが多いです。それを認めることは勇気がいるのでなかなかできませんが、それをサポートするのがカウンセラーです。
カウンセラーが「悪いのはあなたの方だ!」などと指摘したら身も蓋もありません。カウンセリングは人間関係なのです。
カウンセラーは丁寧に相談者が発する言葉を使って、相談者の思考の癖を明らかにします。
実際に文字に書き出すこともよくあります。

例えば相談者が「失敗したことで評価が下がり、体がこわばった」と話したとします。この言葉は失敗するということと評価が下がるということが相談者の中で密接に絡み合っていることがわかります。
また権威者と会話する際に、評価が下がるという恐怖心を感じると体が強張るという生理現象が起こることもわかります。

ですが、こうした出来事は相談者の方にとっては当たり前のことであり、通常ご自身お一人の力で気がつき、考えてみることはとても難しいです。

そもそも「失敗とは?」「評価とは?」といった人によって認知の異なることに対して、相談者の方は複雑に絡み合って解釈しており、さらには身体反応にまで連鎖する認知を持っています。

上司の方は失敗ではなく、思い切ったチャレンジをした、よくやったと評価しているかもしれません。実際のところは分かりませんが、少なくとも体が強張るような反応をしてしまうほどの解釈をしているのは他の誰でもなく相談者の方がご自身の認知によるものなのです。

カウンセラーはこのように思考のループが悪循環に陥り、マイナス方向にクリエイティビティを発揮している相談者に対して、認知と感情を区別するように課題の分離を支援していきます。

具体的には、感情・行動・認知・生理という関係性に注目して、それぞれを分離して混乱・興奮状態の思考の悪循環を好循環に整えていく関わりを行います。


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