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「博士の愛した数式」小川洋子さん(読書感想文)(*ネタばれ注意)

典型的な小川文学。

特徴は、まず、登場人物の少なさ。
博士、私、息子のルートの三人。

私は、狭く深くの人間だから、
この世界がとっても落ち着く。
そして、言ってはなんだが、世間的には
棒にも箸にもひっかからない
(あるいはひっかからなくなった)
人物の、秘められた心の奥や、
思わぬ見つけものを、温かい審美眼で
描いていく。

私も輝いている人を掘り下げるより、
細々とではあっても、自給自足できている
ような人間を掘り下げて、
友達になりたいと思う。
そういう人ほど、意外と奥が深い。

小川洋子の世界の人物は、
まず、変わった人、
取るに足りない人など。

そこに小宇宙が広がり、
温かいサークルを作り出す。
そのエネルギーは穏やかで温かい。
そして常に架空チックな世界。

数学博士と家政婦の私と、
息子のルート。
誰一人、名前はないけれど、
素晴らしい光のサークル。


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