無料の3Dデジタル生物標本データを3Dプリント(ちゃんと作る編)
さて、前回は九州大学が無料で公開しているデジタル化された生物標本の3Dモデルを3Dプリントして小さなカニのフィギュアを作りました。
今回は同じデータでもう少し大きなフィギュアを作ろうと試みました。なにも考えずに造形するとサポート部材が外せなかったり上手く行かず、最終的に各部をバラバラのモデルに分割して造形しました。無料の生物標本データを利用できるのは素晴しいのですが、ちゃんと作ろうとすると3Dモデルを加工したり結構手間がかかります。
3Dモデルを分割せずに作って失敗
まずは失敗から。ダウンロードしたデータを何も考えずに大きくして造形してみました。
スターウォーズのハンソロが冷凍された状態と一緒です。救い出せない…。
3Dモデルの形状は正しく造形されているのですが下記の問題があります
複雑な形状(たくさんの足)にサポート部材ががちがちに絡みついていて取り除けない
生物の関節などは細いため強度が弱く、サポート部材を取り除くときに壊れてしまう
全部を一体で造形すると3Dプリントの積層の方向を各部分ごとに最適な方向を選べないため、ある部分は積層の方向が強度が弱い方向になってしまう
モデルを分割して再度トライ
今度はダウンロードした3DデータをBlenderで手直しして手足をそれぞれ個別のデータに分割して造形してみます
関節など細い部分を補強する
カニや昆虫などは関節部分が非常に細くそのまま造形すると簡単に折れてしまいます。まずはBlender上で細い部分に肉を盛って補強します。スカルプトモードでインフレートブラシ(選択した部分のメッシュを膨らませる)などを使って編集すると良いと思います。
モデルを分割してバラバラにする
やはりサポート部材を最小限にしたり強度を考えて積層の方向を細かく検討するためには手足をそれぞれ別のデータにして個別に造形したほうがよさそうです。(3Dプリンタの基本かもしれませんが…)。
今回は体、はさみ左右、足8本それぞれに分割するのでまずはカニの3Dモデルを11個コピーします。
ここからはそれぞれのモデルを手足いずれか1本だけのモデルに分割していきます。
上記の作業を残りのコピーしたモデルに繰り返してそれぞれを手足1本ずつのデータにします。
はめ合いの凹凸形状を作る
バラバラに切断したはさみと足は凹凸形状をつけてはめ込みできるように加工していきます。
再度トライ
データが出来たので再度3Dプリンタで造形してみます。サイズが大きく造形に時間がかかるため①体とはさみ②足×8に分けて2回造形しました。それでも①、②それぞれ約3時間くらいかかりました(造形する際のパラメータで多少変わります)。
まとめ
無料で公開されている生物標本の3Dデータは非常にリアルでそのままBlenderで読み込んで3Dプリントできるため非常に便利ですが、カニのように複雑な形状のモデルのフィギュアを作ろうとした場合、積層の方向やサポート部材を取り除くことなどを考えて、Blenderで3Dモデルを手直ししたほうがよさそうです。今回はカニのはさみと足をバラバラのデータに分割したことで強度的に問題がなく、サポート部材も簡単に取り除けて綺麗なフィギュアを作ることができました。
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