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「キャリアの棚卸し」は難しくて時間がかかる。でも意外なことでやり方が分かってきた。


60歳を目前にすると、定年後のその先どうやって生活していこうかを考える。
何をして働くのか。どう働くのか。
1つの会社に長いこと勤務していると、簡単に決められない人が多いのではないだろうか。
ハローワークに相談に行くと、「キャリアの棚卸しをしてみる」ことを勧められると思う。

この「棚卸し」が意外と難しい。そして時間がかかる。

「キャリアの棚卸し」とは、自分がこれまでどのような仕事をしてきたのか、「全て」書き出すことだ。思い出しながらの作業なので、私の場合「書き起こす」という感覚。

私も、定年後の生活を考え始めた55歳頃に、これまで自分がやってきた仕事を書き出してみたが、2つか3つで終わってしまう。

前の勤務先である証券会社での営業事務。現在の会社での接客業。お客様からのご意見への対応業務。

これでは全く不十分で、おおざっぱすぎる。

もっと細かく見ていかなければならないということが、最近になって分かってきた。

大事なことは、携わってきた仕事において、自分の気持がどうだったのか、ということ。やりがいを感じられた業務、達成感を味わったタスク。自分の気持ちが動いた出来事。これを書き出すことが重要だ。

しかも、細かいところまで思い出して書いた方が良い。業務そのものだけではなく、業務を構成する一つひとつの作業まで書き出してみる。

例えば、「所属部署の1年間の成果をまとめた資料をパワーポイントで作成した」とか、「後輩に、自分が失敗した経験をもとに、アドバイスした」ということだ。

前者は、成果をまとめることが苦にならず、資料作成が得意なことを想像させる。後者は、自分の失敗を他の人のために活かすことができる、と思える。

なぜこのように思うか、というと、キャリアコンサルタントの資格取得のために、勉強したこともあるが、私自身が副業先での仕事を通じて、発見したからだ。

本業は接客が中心であるが、副業先は金融関係である。その副業先で、若手の育成について15分ほど話をさせてもらった。たった15分だったが、どうやって後輩を育成してきたのか、といった話に、畑違いの業種の人たちが興味を持ってくれ、質問も複数いただいた。

この15分が私に気づきをくれた。

本業ではチームで仕事をしてきたので、若手の育成は必須であり、無意識のうちに必要性を刷り込まれている。
後輩のミスを指導するとき、私自身が失敗した経験を伝えて注意を促すと、相手の表情に「気づき」が現れることがある。
「ベテランでもミスするんだ」といった、当たり前のような感覚かもしれない。

その後輩が前向きであれば、顔に「気づき」が出る。
こんな経験を何回もしている。そして私にも気づきがある。

若手にアドバイスするシーンは、仕事場の至るところであると思うのだが、人を育成するとき、言葉や表情から相手が納得感を得たことを感じ、それにより自分も気づきを得られたような経験を、成功体験の一つととらえたら、キャリアの棚卸しを考えるうえで幅が広がってきた。

人を育成してきたことに、私自身が達成感を強く感じているということだ。

自分だけで考えていても、なかなか見つからないし、時間がかかる。というよりも、角度を変えて、時間をかけて見つけていくべきだと思う。
誰かに相談するのも大いにある。
人に相談するのは恥ずかしい。
「管理職でもなく、自分で強みを探せていない人」と思われるのではないか、と気後れするが、恥ずかしさは一瞬のこと。
誰かと比較すると劣等感を感じるが、大切なのは、自分自身が、これからのまだ長い人生をどのように色付けしていくか、ということなので、恥ずかしくても話してみるべきだと思う。

今の50代は、キャリア教育を若い頃からきちんと受けてきていないし、「キャリア形成」という言葉自体も後から追いかけてきたものだ。

最近「45歳を定年とする」制度の提案が話題になった。
これを聞いて、終身雇用制度に疑問を持たず、年功序列が当たり前の会社に長いこと勤めてきた私は「ちょっと待ってよ~、急に言われてもまだ先々決められないんだから困るよ~」と思ったが、子供のころからキャリアをきちんととらえる、つまり自分を軸として、仕事をどのようにとらえ、どう生きていくか、何が自分のやりたいことなのか、探りながら生きていくことは、良いことだと思う。

棚卸しが分かりかけてきた私も、まだ探り続けている。

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