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トヨタ・ブロックチェーン・ラボがテックペーパーを公開

トヨタ・ブロックチェーン・ラボとは


トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループ6社によって構成されたバーチャル組織で、ブロックチェーン技術の有用性検証やグループ各社とのグローバルな連携を通じて、この技術の活用を推進するために設立されました。

トヨタ・ブロックチェーン・ラボは、「Mobility」をPublic Blockchainに導入して価値を創造する方法を研究してきました。2023年に発表されたToyota Mobility Conceptの中で、Mobility3.0は社会システムとの融合を意味し、エネルギーや交通システム、物流、生活スタイルに至るまで、街や社会と一体となったモビリティのエコシステムを構築することを目指しています。トヨタは、Public BlockchainがこのMobility3.0のコンセプトを実現するための強力なツールになると考えています。

テックペーパーの内容

トヨタは、将来的に完全な自動運転社会を見据え、以下のようなPublic Blockchainとの融合のメリットを模索しています。

  • プログラマビリティの向上

  • 様々なサービスへのアクセスの標準化

  • 権利のトークン化による車のサービス主体化

完全な自動運転社会になると、車は所有するものではなくサービス(Mobility as a Service)となり、人々はそれを所有せずに都度利用することが主流になります。車の所有権などの様々な権利がオンチェーンで取引され(権利のトークン化)、スマートコントラクトにより自動的に取引が実行され(プログラマビリティ)、同じPublic Blockchain上に展開されているDAppsへのアクセスも容易になる未来が描かれています。

このテックペーパーでは、Mobilityで使用されるBlockchain上のアカウントを「MOA」(Mobility-Oriented Account)と定義し、ERC-4337を参考にそのデザインを検討しています。

ERC-4337は、Ethereumのアカウント管理をより柔軟にするための提案で、従来の外部所有アカウント(EOA)とコントラクトアカウントの区別を無くし、柔軟なアカウント管理を実現します。これにより、ユーザーはコントラクトウォレットを主なアカウントとして使用できるようになります。

MOAのデザインの特徴は、アカウントの認証プロセスとプライベートキーを切り離している点です。プライベートキーの管理は、多くの人々がPublic Blockchainの利用を躊躇する大きな要因です。プライベートキーを失うと、そのキーに紐づく資産も失われるため、中央集権型のアカウント管理に慣れた人々にとっては受け入れ難い仕様です。アカウントの認証プロセスとプライベートキーを切り離すことで、万が一プライベートキーを失ってもアカウントのコントロール自体は失わない仕組みになっています。

また、このテックペーパーでは、車の鍵や所有権を示す役割を持つ「Key Token」も定義されています。これはNFT標準であるERC-721に準拠しており、車のロックやロック解除に利用されます。ユーザーが車のロックを解除する際に、スマホに入れてあるKey TokenでPublic Blockchainにアクセスし、MOAの状況が確認され、ユーザーがロックを解除する権利を持っていることが確認されると自動的にロックが解除される仕組みです。

まずは基本的なロック解除機能からスタートしますが、他の機能への拡張の可能性もあります。

最後に

このテックペーパーでも言及されているように、現時点ではBlockchainを用いた有用なユースケースはほとんど存在しないと言えますが、トヨタはMobility業界の将来において必ず必要になる技術と信じて、このようなユースケースの開発を進めています。各業界で社会課題を解決するユースケースが生まれることで、Blockchainのマスアダプションが実現されると考えられます。



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